2011/09/28 07:38
▽す、き




「すきだよ。」
そんな言葉は弾けて消えた。







目を伏せて言葉を紡ぐ彼女に頭がくらくらする。その揺らぎに思わず体も倒れそうになった。
でもそんなこと目を伏せている彼女は気づかない。表情は未だ先ほど同じままだ。


そっと伸ばした手は彼女の頬を滑り首筋までいって鎖骨をなぞってから離れる。白く細い彼女の体が本当に生きているのかたまに心配になってしまうのは彼女があまりにも綺麗すぎるからで。



「どうしたの?」

「思考が追いつかない」


珍しいこともあるんだ、なんて呟く彼女の唇のそばへ静かに顔を寄せた。はっきりと聞こえる吐息に心臓は過剰反応したけれどそれさえも心地よく感じてしまえる。こんなにも苦しいのに、


ゆっくりと彼女は瞼を開きその奥にあるガラス玉みたいな瞳をのぞかせた。くるり光が反射して、その中心に俺が映る。


「ちか、」

ぱちりぱちり瞬きして体を少し引くがもともと彼女の後ろには背もたれがあり距離なんてものは取れず少し顎を引いた程度で終わった。だが、余計に間合いを詰めてしまった俺の口はあと少しで彼女の唇に触れてしまう。



「すきだよ」


ほんのり頬を染めた彼女から呟かれた言葉に俺は唇を押し付けた。その心地よさに俺の思考は溶け始める。




彼女の言葉は俺の中で弾けて俺と同化した。






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