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「名前ー!迎えにきたぞ!」
「へ!?な、何!?」
昼放課になり、クラスまで名前を迎えにいく。
今日は野球部のヤツらに俺の名前を紹介するんだ!
「弁当もって!早く早く!」
「へ…何?どうしたの?」
「いいからいいから!ついてきて!」
よし弁当持ってるな。それいけ!花井たちのいる屋上へ!
早く!早く!名前を紹介したくて、階段を跳ねるように駆け上がった。
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「おまたせー!」
「おー、きたか。」
いきなり田島くんに「弁当持って行くぞ!」と呼び出され連れて行かれた場所は屋上だった。
「俺の彼女!」
「たっ田島くん!?」
訳の分からないまま屋上へ行くとすでに9人の男の子たちがお弁当を広げていた。
そして、ためらうこともなく男の子たちにむかって先ほどの言葉を発したのだ。
「とりあえず座りなよ」
イヤホンを首にかけていたほわほわした男の子が私たちに座るよう促した。
……この人たちは誰…!?田島くんのお友達?だったら何で私呼ばれたんだろう…
「田島くん田島くん…」
私は田島くんの袖を遠慮がちに引っ張りこちらに呼んだ。
「どうして私も呼んだの?」
「お前を野球部のヤツらに紹介するためだよ。俺の彼女だ!ってな」
「え……」
顔を前に向けるとばっと一気に9人の男の子達と目が合った。
うっ…なんか恥ずかしいな…
「けっこーかわいいじゃん」
「だろ!栄口!」
「田島にはもったいねー」
「泉にはやんねーよ」
お弁当を広げてる私の隣で田島くんと田島くんのお友達が私のことについて話していた。
会話に参加していないほかのお友達はなんだかじっと私を見ていた。
た…食べづらいな…
.
それなりに場も溶け込み。私もちょくちょく会話をしながらお昼を食べていた。
そして最後にとっておいた玉子焼き食べようとしたとき…!
「いらねーならもらうぞー?」
「だ、だめ!」
誰もいらないっていってないのにー!
ひょいと横からきた田島くんの箸に玉子焼きを取られてしまった。
「返してー!私の玉子焼き!」
「わりぃ、わりぃ。返すから、ホラ」
周りから「見せつけか田島のヤロー」という声が聞こえた、気がした。
今の状況は言わずとも、お約束?
田島くんの箸に刺さっている玉子焼きをあーんされている状況…
でもでも!食べないわけにはいかないので私は恥ずかしさを跳ね除けて田島くんの箸に刺さっている玉子焼きにかぶりついた。
「んっ!」
しかし手前をかぶりついてしまったため箸を抜かれた今、ものすごく玉子焼きが落ちそうになってしまっているのだった。
「んーんー!」
「なんだ?どした?」
田島くんの箸を貸してもらおうとしたら…
「ああ、そんなにしてほしいのか?しかたねーなー」
「?…っ!?」
田島くんはたまごやきごと私の唇にかぶりついてきたのだった…!!
無邪気にキスして
(んっ…もぐもぐ、うめー)
(たたたたた、田島く…ん!!)
(この玉子焼き甘いな。名前の味がする。)
((っも…恥ずかしーっ))
(((バカップルめ……)))