04
リンは研究所を出てからのことを、俺に色々と話してくれた。
自分を引き取ってくれた灰島の社員の家で暮らしていたことも。
独り立ちを考えて、全寮制の訓練校に入学して来たことも。

「でも、男子制服が間違いで発注されたのはびっくりしましたけど」
「変えてもらわなかったのか?」
「まあ、動きやすいですし…これはこれで女子制服より私には似合うかなって。髪も短くしましたし」
「…リンがいいならいいけどよ」

たしかに男子にも女子にもとれる顔をしてっけど、ゆるっとした顔で笑うリンは、俺にはやっぱり女子にしか見えないと思った。

「でも、シスターじゃなくてよかったのかよ?進学なら教会だって学校持ってたろ?」
「ああ……シスターより、自分の力で直接助けになれる消防官になってみたくなったんです。それだけですよ」
「…そっか。まあ、なんにせよリンがちゃんとした保護者と暮らせてたならよかったぜ。あそこの社員って、あんまいい感じしなかったからさ」
「……そうですね。心配していてくれてありがとうございます、シンラ。けど、良くしてもらっていたので、私は大丈夫ですよ」

体も昔より強くなりましたから、と誇らしげに笑うリンに俺は、また同じ場所で一緒に話したり笑ったりできるのだと胸が熱くなった。

***

「(シンラは座学、別のクラスだったんだなあ…)」

道理で放課後まで見つけられなかったわけです。おかしいな、と思っていたからよかった。
一緒に寮に向かいつつ、隣で色々と話してくれるシンラを見てほっとする。
…道を開けてくる他の子たちの視線が痛いのは、気にしない方がきっといいのだと思う。

「…あ。そういえばシンラ、隣のクラスなら知ってますか?」
「ん?なんだよ?」
「ここを受験した時に会ったんですけど、私のクラスにはいなくて…他のクラスにもしかしたらいるのかと思いまして」
「へえ…名前は?つっても、あんまり俺友達いねぇけど…」

言いにくそうに頬をかいて目をそらすシンラに、苦笑を返して、背中を叩く。

「私もですよ。でも、クラスメイトなら名前くらいひっかかりませんか?火鱗くん、って言う子なんですけど…」
「忘れろそんな奴」
「え?」
「忘れろ」

シンラのこんなに嫌そうな顔、はじめて見た。
というか、絶対同じクラスなんだな。

「…火鱗くんを知ってるんですね?」
「知らねーよあんな嫌な奴」
「知ってるじゃないですか…」

なにか火鱗くんとあったのだろうか?下から覗きこむようにシンラを見るけど、こっちを見てくれないあたり、教えてくれなさそうだ。
まあ、無理強いするのはよくないし、入学しているみたいだから今度1人で会ってみようと心に決めた。

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