01
同じ歳の子達が目の前にたくさんいる。
研究所にいた時も勿論いたけど、こんなにもざわついて、明るい空間じゃなかったと思う。
パーン先生…じゃなかった、教官だ。パーン教官に促されて注目を受ける中、背筋を伸ばして名前を名乗った。
ああ、学内に入る前に、やっぱり髪をもう少し整えておけば良かったな。身だしなみが整ってなくてちょっと恥ずかしいけど、第一印象に必要なのはやっぱり、笑顔かな。

「燐 火風です。皆さんとは遅れての入学になりましたが、どうぞよろしくお願いします!」

***

「火風さん、灰島の施設にいたんだ?」
「あ、はい…灰島の社員の方に引き取ってもらうまでは」
「えー!火風さんって女の子なの?どうして男子制服で…」
「あはは…それは発注の人が私の顔写真の印象で間違えてしまったらしくて…」
「私も綺麗な男の子だと思ったのにー」
「え、す、すみません……」

休み時間になる度に、毎回机を囲まれて色んな子から質問攻め。
お昼休みになってから、みんな既にできてるらしい仲良しグループで、それぞれご飯を食べに離れていってくれたけど、少し疲れちゃった。
一週間遅れの新入生って、そんなに珍しいのかな。

「(私もご飯食べに行かないと……えっと、学食が、無料でご飯を食べさせてくれるんだよね?)」

パーン教官からもらった学内の資料を見ようと鞄をガサガサしていると、横から声がかかった。

「よぉ、編入生!ようやく話しかけられたな!」
「えっ」
「ずっと色んなやつに囲まれて大変だったろ」
「あっはい……えっと…」

顔を上げれば、褐色の肌の明るそうな男の子がにっこりと笑っている。…なんだか優しそうだ。
そんなことを考えていると、すっと目の前に手が差し出されたので、おそるおそるその手を白手袋をつけたまま握り返した。

「ああ、ごめん!俺はオグン・モンゴメリだ。オグンって呼んでくれていいぜ」
「よ、よろしくお願いします、オグン。私のことも燐でいいですよ」
「よし、じゃあリン!これからよろしくな」

にっと笑ってくれた顔に、自然とこちらも笑みがこぼれる。うれしい…!
すると長時間の空腹が続いていた私のお腹から、ぐうううう……と、音が。恥ずかしさに、目を点にするオグンくんを見て、恥ずかしさに慌ててお腹を抑えた。頬が熱い。すぐお腹が減ってしまう体質をすごく呪った。

「今のって…」
「あ、い、今のは聞かなかったことにっ!」
「…学食一緒に行こうぜ!まだリンは場所とかも、よく知らないだろ?」
「あ、ありがとうございます……笑わないんですか?」
「だってお前が恥ずかしいんだったら、笑ったりしたら悪いだろ。それに、腹が減るのって普通だろ?」

気を悪くした感じもなく、からかいもしないオグンに、心がじんわりとあたたかくなる。
なんて、いい人なんだろう。

「……おかわりとかしても、笑いません?」
「笑わないって!でもここの学食、結構量あるぜ?」
「大丈夫!結構見た目より食べちゃうタイプなんで!」
「ははっ、そりゃいい!たくさん食べるやつは嫌いじゃないぜ」

…ああ私、本当に外に出てこれて良かった。

next?

(リン……お前ほんとによくそんな食えるな?5皿目だろ)
(食べるの大好きで……前は食費を気にしてたんですが、ここはおかわり自由なのでいくらでも食べれて幸せですね!)


prev next

bkm