銀魂連載 | ナノ
第五十九訓 少年はカブト虫を通して命の尊さを知る。カブト相撲での扱いは気をつけよう





「あっつ〜...(今日もほんと暑い...蒸されるよ)」


そう思いながら差し入れのチューペットが入った袋を片手に、カンカンカンと音を立てて階段を上り、万事屋へと入った。


「元気〜?三人と...」

「「森に行くぞォォォ!!」」

「...何事?」

「あ、朔夜さん、こんにちは」

「あ、新八君...二人は一体どうしたんだい?」

「あー...実はですね...」


***


「カブト狩りじゃああああ!!」

「カブト狩りじゃああ!!」

「やれやれ...」


新八君に事の始まりを聞いた小生は、張り切ってる銀時と神楽と、呆れている新八君の三人で森へとやってきて、テントを立てた。


「よし、ここを宿営地にする。おめーら、巨大カブトをつかまえるまで帰れると思うなよ。ビジネスで来てんだからな、ビジネスで。

キャンプ感覚ではしゃぐんじゃねーよ。森は魔物だ。うかれてたら、あっという間に森に飲みこまれるぞ」

「はいはい」

「大丈夫、ぬかりはないネ。食料もしっかり買い込んだし」


ガサガサ


「食料って言うかオヤツだよね。ピクニック気分だよね」

「(神楽、小生は先行き不安だよ)」

「バカヤロー何うかれてんだ。オヤツは三百円以内におさめろって言っただろーが!」

「いや、銀時も十分うかれてるから」


しかし突っ込みをスルーし、銀時と神楽は言い合いをやめない。


「残念でしたァ。酢昆布はオヤツの内に入りません〜」

「入りますぅ。口に入るものは全てオヤツですぅ。ジュース類も認めません〜」

「いいアルか、そんな事言って。私銀ちゃんがこっそり水筒にポカリ入れてきてるのしってるんだからネ」

「あれはポカリじゃありません〜。ちょっとにごった水ですぅ」

「お前ら森に飲みこまれてしまえ」

「(はてさて...どうなるかね...)」


そしてひとコント終えた小生達は、カブト虫を探しに森の中に出かけた。


***


「意外に見あたりませんね」

「スグ見つかると思ったのに...どうすればイイネ?」

「身体中にハチミツ塗りたくって突っ立ってろ。スグ寄ってくるぞ」

「いや、寄ってくるのは変態だけでしょそれ」


バーベナの煙を吐き出して、呆れたように突っ込む。

そして、道のわきの茂みの向こうに変なモノが映り、思わず視線をやれば、

そこには身体中にハチミツを塗りたくった褌一丁の近藤の旦那が片足立ちで微動だせずに立っていた。

全員視線が釘付けになりつつ、そのまま声をかけずに素通りしてその場を離れる。


「銀サン帰りましょう。この森恐いです」

「身体中にハチミツ塗りたくってたネ」

「ほんとにやる人いるんだね」

「気にするな、妖精だ妖精。樹液の妖精だよ。ああして森を守ってるんだよ」

「でもなんか見たことある人だったんですけど...」

「ゴリネ。ゴリだったネ」

「じゃあゴリラの妖精だ。ああしてゴリラを守ってるんだよ」

「もうそれでいいんじゃない?」

「いやゴリラを守ってるって意味が...!」


するとまた別の茂みの向こうに、木にマヨネーズを塗りたくっているトシがいた。

再び全員視線が釘付けになるが、同じように声をかけずその場を素通りする。


「銀サン帰りましょうよ。やっぱりこの森恐いですよ」

「マヨネーズ木に塗りたくってたネ」

「何がしたかったのかなさっきの」

「気にするな。妖怪『魔妖根衛図』だよ。ああして縄張りにマーキングしてんだよ」

「でも明らかに見たことある人だったんですけど」

「ニコ中ネ。ニコチン中毒だったアルネ」

「じゃあ妖怪ニコチンコだ。ああして二個チンコがあるんだよ」

「もうそれでいいんじゃない?」

「いや二個チンコないですから」


そんな淡々とした会話をしていると新八君が、一本の木にへばりついている人間くらいの大きさの巨大カブト虫を見つけた。

そして三人が喜び勇んで木からそのカブト虫をたたき落とした。


「よっしゃあぁ!!これで定春28号の仇が...」


嬉しそうに神楽ちゃんがカブト虫を仰向けにすれば――


「なにしやがんでェ」


それは総悟君だった。

その顔を確認した途端、ドゴォと三人が間髪いれず思い切り蹴りを入れた。


「(関っちゃったよ。万事屋と真選組が合わさるとロクなことがないのに...)」

「お前こんな所で何やってるアルかァァ!!」

「見たらわかるだろィ」

「わかんねーよ。お前がバカということ以外わかんねーよ」

「ちょっ、ゴメン起こして。一人じゃ起きられないんでさァ」

「はぁ、やれやれ...」


そして落ちたのと蹴られた衝撃で血を流している総悟君を立たせてやる。


「フー、全く、仲間のフリして奴らに接触する作戦が台無しだ」

「いや、奴らってカブト虫?だとしたらカブト虫はそんなのじゃ寄ってこないからね?」


その時、がさっと茂みから――


「朔夜さーん!」


たたーっ、ぎゅぅ


「わっ、空覇!」


虫取り網をもった空覇がやってきた。


「朔夜さんも森に来てたんだね!」

「あ、あぁ...しかしなぜ空覇達も...」


ここにいるのか?と問いかけようとすれば、別の方向からトシとハチミツ濡れの近藤の旦那を筆頭に、真選組一同がやってきた。


***


「オイ、何の騒ぎだ?...ん」

「あっお前ら!!こんな所で何やってんだ!?それに朔夜さんまで!」

「いや...何やってるってこっちのセリフだよ旦那」

「それを全身ハチミツまみれの人に言う資格があると思ってんですか?」

「これは職務質問だ。ちゃんと答えなさい」

「職務ってお前、どんな職務についてたらハチミツまみれになるんですか」


その通りである。


「お前に説明するいわれはねー...」

「カブトムシとりだ」

「言っちゃったよ。もうちょっとこうなんか...」

「カブトムシとりぃ!?」

「オイオイ市民の税金しぼりとっておいてバカンスですかお前ら?馬鹿んですか!?」

「こいつは立派な仕事だ。とにかく邪魔だから、この森から出ていけ」


すると神楽が沖田君にやられた自分の定春28号の仇を討つためにカブトムシをとるんだと反論した。

すると――


「何言ってやがんでェ。お前のフンコロガシはアレ。相撲見て興奮したお前が勝手に握りつぶしただけだろーが」

「えっそうなのかい?」

「誰が興奮させたか考えてみろ!誰が一番悪いか考えてみろ!!」

「「お前だろ/神楽だよ」」


銀時と共に思わず突っ込んだ。


「総悟、お前また無茶なカブト狩りをしたらしいな。よせといったはずだ」

「マヨネーズでカブトムシとろうとするのは無茶じゃないんですか?」

「トシ、お前またマヨネーズでとろうとしてたのか。無理だと言っただろう、ハニー大作戦でいこう」

「いや、マヨネーズ決死行でいこう」

「いや、なりきりウォーズエピソードVでいきましょーや」

「いや、傷だらけのハニー湯煙殺人事件でいこう」


いや、どの作戦もカブトムシとれないから。

この場の誰も知らないのに何も調べて来なかったのかと、少し頭が痛くなった時

真選組の一人が遠くの木にカブトムシを見つけ、小生、空覇、新八君、退意外が全員走り出していって

お互いの邪魔をしあい、大喧嘩をしだしてカブト虫は小生達の横を通り抜け飛んで行ってしまった。


「あ、バイバイカブトムシさん!」

「いっちゃったね...」

「いっちゃいましたね...」

「はぁ...見てられないね」


そして小生は、肩から下げていた小さいクーラーボックスから、いくつか作って入れておいたフルーツの入ったネットを一つとりだした。


「?フルーツ...?」

「朔夜さん、なにするの?」

「ん?そりゃ、カブトムシとりだよ」


そして茂みに入り、手近な木の幹に括りつけた。


「それでカブトムシがとれるんですか?」

「さあね...だが皆よりは公式のやり方だよ。こうしておいて一夜待てば、集まってるっていうね...あ、皆には秘密だよ」


ぜったいまた同じ場所にきて喧嘩になってしまうから。

そうすれば3人は、実にいい返事をしてくれた。


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