銀魂連載 | ナノ
第五十一訓 お母さんだって忙しいんだから夕飯のメニューに文句つけるのやめなさい。文句言うなら自分で作りなさい




ばさりと、4人が黒マントを取り払い姿を現した。


「韋駄天の剛!!」

「毘沙門天の修輪!!」

「弁財天、薫よん」

「広目天、松尾!!」


そして最後に全蔵が、口を開いた。


「摩利支天、服部全蔵」

「「「「「五人合わせて、フリーター戦隊シノビ5(ファイブ)」」」」」


そして5人がポーズを揃って決めた瞬間、後ろで特撮よろしくの爆発が起きた。


...それ、恥ずかしくないのだろうか?

そんなことを思いつつお互いに睨み合っていると、上から笑い声が聞こえてきた。


「ワーハッハッハッカーツラァァ!!いやゴニンジャーよ、年貢の納め時だな!」

「(お奉行、卿もそれ完全に特撮の悪役の台詞だよ)」

「シノビ5はいずれもお庭番をつとめていた猛者ばかり!貴様らがひっくり返っても勝てる相手ではない!カワイイエリザベスちゃんの目の前でくち果てるがいい」


そういった時、縛られたエリーがお奉行の後ろに現れ、小太郎が名前を叫んだとき、上から格子が降りてきて、

小生達は銀時、さっちゃん、小生の3人と、小太郎、新八君、神楽の二組に別れることとなってしまった。


「!!」

「銀さん!朔夜さん!」


すると小太郎達の前に、剛、修輪、松尾と名乗っていた三人が現れた。

そしてこちらには――


「てめーは俺が相手だ」

「!」

「ジャンプ侍ィィィ!!」

「(この前の根に持ってた!!)」


ガキィィィン

銀時に斬りかかってきた、どうやら初登場時の恨みが残っているらしい全蔵と、

気をつけてと銀時に注意を呼び掛けたさっちゃんにバラの花を飛ばしてきた脇薫という女性がやってきた...

って、あれ?もしかして小生の相手いない!?すること無い感じ!?

ここまで来させといて放置プレイなの!?


「(酷くないかい!?)」

「朔夜、丁度いいからお前は今回見学な!」

「えぇ!?やっぱりそうなるのかい!?」


戦いながら言ってきた銀時に、あんまりだと返せば、なに言ってんだと返ってきた。


「逆に心配しなくて済むから楽だろーが!」

「それは銀時が心配性すぎるんだよっ!」

「ちげーよ!」

「(イラッ)いいからてめーは俺との戦いに集中しやがれ!!」

「うぉっ!?」


そして銀時が全蔵に再び斬りかかられて、会話は終了した。


「(しかし...なんだろうこの煮え切らない感じは...)」


無理やり引っ張られてきて、ここまで来て放置って...


「(蚊帳の外...やだなぁ)」


邪魔にならないように隅っこに行き、諦めて壁に凭れかかって銀時達と小太郎達の戦いを眺めることにした。


「(見てるだけも久しぶりだな...)」


ここのところ、銀時と一緒に戦ってたからなァ...


「(...やっぱり、銀時と再会してからなんか色々事件が増えた...)」


伴って怪我も多くなったけど...


「(色んな刺激的な事が起きて飽きない...)」


何より、はぐれて一人になってしまっていた間より笑っていられるし...


「(毎日が楽しい)」


苦労も、辛いことも増えたけど...


「(それでも、合わせる顔がないと思いながらも...皆の姿を捜していた頃より、ずっと幸せだな...)」


このふざけてて、危険な日常が、とてもかけがえない。

一人、戦いを眺めてそんなことを考えながらそんなことを思っていれば、戦いはあっという間に終わった。

勿論、銀時たちの勝利だ。

だが、痔らしい全蔵の肛門に木刀を突きさしたのは、流石に可哀想すぎる気がしたが。

でもまぁ、とりあえず勝ちは勝ちだと自分に納得させ、納豆をぬぐう銀時に近づく。


「お疲れ、銀時」

「おう...ったく、ねばつくぜ...」

「あはは、それで助かったんだから文句言わないよ」


そして上から信じられないと言ったお奉行の声が聞こえた。


「バ、バカなシノビ5が...そんなバカな...」


その時、お奉行に向かって、戦いの最中下剤入りカレーを食べて色々危ない神楽が投げた鉄の格子が飛んで行った。

悲鳴が聞こえたが、お奉行生きているだろうか?

走ってお手洗いにいく神楽を横目に見つつ、少しだけそう思っていると、小太郎が上を見て叫んだ。


「あ゛あ゛あ゛あ゛!エリ...エリザベスぅぅ!!」

「!」


視線の先には、飛んで行った格子が当たったらしい突きささったエリザベスがいた。


「なんてこったァァ!!エリザベスがァァァ!!ひどい!ひどいぞォォォ!!そんな...アレだ...ひどいぞォォ!!」

「語彙力がとんでもなく低迷してるよ小太郎・・・って、ん?」

「!...なァヅラ、朔夜、アレおかしくねーか?」

「そうだね...なんだか、血も流れてないし綿みたいなのがはみ出て...」


そう二人で疑問を口にすれば、尻を押さえて全蔵が体を起こし、馬鹿にしたように言ってきた。


「最初からエリザベスちゃんなんていねーんだよ」

「え...それはまさか...」

「そうだ。あのオッサンはなァ、桂、お前の首をとるために、わざわざあんな人形をつくってお前をおびき出したんだよ。

お前ら騙されてたんだよ、ププッ」


......

冷たい沈黙が辺りに下りる。


「ヅラ君ヅラ君、どーいうこと?」

「......そういえば、前日に蕎麦のお揚げとりあって喧嘩したの忘れてた」

「...嘘だろう...」

「お前それただケンカして出てっただけじゃねーか!!ふざけんじゃねェェェ今までの苦労を返せェェェェ!!」

「(勘弁してくれよ小太郎)」


小太郎に殴りかかった皆を今回ばかりは止めずに放置し、まだ尻を押さえて横たわっている全蔵に近づく。


「...会うのは2回目だね、全蔵」

「...そうだな(実際、俺は3回目だけどな)」

「まさか忍者だったとは思わなかったよ。痔を患った一般人だと思ってたからさ」

「痔は覚えとくな。忘れとけよそこは」

「いやー、職業柄気になっちゃってね...でも、こう何度も会うなんて何かの縁だし、これからは仲良くしておくれよ」


そして手をさしだせば、変な顔をされた。


「...お前、やっぱり変な女だな...普通さっきまでお前のツレを殺ろうとしてた男に仲良くしてなんていうか...?」

「あぁ、全蔵は悪い人じゃなさそうだしね。それに銀時は銀時、小生は小生としてお互い思うがままに生きてるから、

小生が卿と仲良くしたくない、そして卿が小生と仲良くしたくないと思わない限り、それ以外の因子は、誰かとの付き合いを遮る理由とはならないのだよ」


だから、小生と仲良くしてはくれないかな?

そういってもう一度ふわりと笑いかければ、今度はしっかりと手を握ってくれた。


「ありが...」

「ダメだわ...今ので完全にきた...あー俺、綺麗系駄目だったんだけどな...」

「え?」

「あー...ちょっと耳貸してくれ」


そしてぐいと手をひかれ、耳元で小さく囁かれた。


「俺さー、アンタにやっぱ惚れちまったわ」

「...はい?」


え、今なんかサラッと凄い爆弾投げられた気がする。


「あ、俺のこと全然しらねーだろうし、返事とかまだいらねーから。とりあえず仲良くな」

「え?あ、うん」


色々理解できてない中、軽く握った手を上下に振られ、流された。

ていうか、え?ほれ?え?

いやでもなんか違うよね?そういう恋愛的じゃなくて、心意気に惚れた的な?そういう男の友情みたいなあれだよね?

そうだよ、きっとそうだ。

じゃないとこんな流すわけないよね!

そう結論付けることにして、小生は、新たな面白そうな人と関係を持つことが出来たのだった。


***


因みに後日談だが、皆にぼこぼこにされた小太郎は、家出したエリザベスを数日間探し歩きなんとか見つけることができ、

仲直りもできたらしい。とりあえず、何事もなく終わってよかったよ。

でも、頼むからうっかりでああいう危ない橋を、二度と一緒にわたらせないでほしいよ...


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