銀魂連載 | ナノ
第四十九訓 Mって確かにある意味無敵。だって折れないんだもん




ぐぎゅるるる


「(お腹なりすぎでしょ...食生活が心配すぎるよ)」

「どうした?食べんのか。金の事は気にするな、今日は俺がもつ」


お昼のファミレスに万事屋3人のお腹の虫の音が鳴り響くのを片耳で聞きながら

街中でいきなり、『丁度良かった、一緒に来てくれ』とひっぱってきた小太郎をちらりと見る。

しかし、相変わらずの何か企んでる顔で目の前に座り、好物の誘惑と戦う銀時達3人を見ている。

というか一体なんなんだろう?テロ行為の片棒担いでと言うなら帰るけど。

すると、今まで黙って目の前に置かれたパフェを見つめていた銀時が、相変わらずパフェを見たまま口を開いた。


「...手ェつけるんじゃねーぞ、てめーら。この顔は何か企んでる顔だ。また朔夜巻き込んで、ロクでもねー話持ちかけに来た顔だよ、こりゃ」

「邪推はよすがいい」

「小生もなにする気かはしらないよ...さっきその辺歩いてたら引っ張られたんだから」


すると新八君が強気な笑みを浮かべてきた。


「幾ら腹減ってたってねェ、食べ物で釣られる程僕ら安かないですよ。甘かったですね、桂さん」


だがしかし...


「ホント甘ェーよ。特にこのチョコ、とろけそーだよ」

「すいませーん!!おかわりいいですか!?」


その隣で二人は既に口をつけていたのだった。

その姿に少しだけ頭痛を覚え、ため息を吐くのだった。


***


「俺がうかつだった。エリザベスは、常に俺のそばにいた。役人に目をつけられてもおかしくなかったのだ。しばらく見かけないと思ったらあの様さ」

「なるほど...でも最近の攘夷浪士に対する幕府の姿勢は厳しいし...このままじゃ、エリーの首飛んじゃうかもね」

「そーかい、そいつァよかったな。コレでどっから首で、どっから顔かハッキリすんじゃねーか」

「甘味処一年フリーパス券でどうだ?」

「そんなモンで奉行所乗り込んでたら首が幾つあっても足りねーよ」

「確かに...でもエリーをこのままにしておくのもなあ...」


双眼鏡で堀の向こうの奉行所内覗き込む小生達は、小太郎に連れられ奉行所前の松の上に登っていた。


「首つっこむなって朔夜、つーかてめーの仲間どうした?こういう時こそ、一致団結して助けにいきゃいいだろーが」

「つかまった同志は、見捨てるのが我々の暗黙の掟、ここは俺が動くしかない」

「...嫌な掟だね」

「そう言うな。それに、連中は国の明日を担う未来の星...その命無下には扱えん。その点、貴様らは...あ、朔夜は別だが、明日もクソもないから適役だ」

「よーし、帰るぞてめーら。朔夜も行くぞ」


そして横にいた小生の身体を抱き、松から飛び降りて、下にいた新八君、神楽と歩き出した。


「待たれーい!」


その後、遠山珍太郎というらしいお奉行の悪行を色々言っていたが銀時が離れて行くため最後の方は聞こえなくなった。

しばらく離れたら、後ろから小太郎が走って来て、小生と銀時にものすごいまくし立てるので、

銀時はうるさそうにしつつ、奉行所に忍び込むことを承諾したのだった。

まぁ、小生も捨て置く気はなかったから良かったよ。

そして小生達は、忍び込むために、忍者になることになり、忍者の知り合いであるさっちゃんの所に行くことになった。



***



「え、奉行所へ忍び込むですってござる?」


小生達はくの一カフェへとやってきて、さっちゃんに忍び込みたいと話したらそう返ってきた。


「いやこいつがね、いくってきかねーんだよ。で、お前忍者じゃん。そういうの得意じゃん。頼むわ」

「頼むって何をでござる?」

「いや、簡単に言うと小太郎を忍者にしてあげて欲しいんだ」

「忍者なめてるでござるか?」


だよねーなるよねー


「とりあえず語尾に『ござる』つけるみたいだぜ、ヅラ」

「いやコレは、ウチの店長が」

「ヅラじゃない桂でござる」

「順応早いね相変わらず。これならすぐ忍者になれるよ多分」


お茶を飲みながらそう言えば、さっちゃんに駄目だしされた。


「なれるわけないでしょ朔夜さん。大体、そんな一朝一夕で忍者になりたいって言われてもね」

「アタイらはねェ、血の滲むような特訓を乗りこえて、くノ一になったんだよ、なめんなよでござる!」

「店長、あなたただの主婦でしょ」


渋るさっちゃんに小太郎が頼みだした。


「ならばどうか一緒に来てもらえんだろうか?さっさん」

「ちゃんでいいです」

「仲間がこのままでは処刑されてしまうんだ、さっくん」

「ちゃんでいいですっていってんだろコノヤロー」


...相変わらず、無意識に人の神経を逆なでするね、小太郎は。

そう思いつつやり取りを見ていると、さっちゃんが携帯を取り出した。


「......悪いけど私、昔将軍様にお仕えしてたから、幕府(おかみ)相手に下手なことはできないわ。今日だって幕府関係者から仕事(ころし)の依頼が...ホラ、これ」


画面を見せようした瞬間、銀時がさっちゃんの携帯をたたき壊した。


「てめっ、なめてんのか。仕事中に客の前で、携帯いじくってんじゃねーよ」

「......フン、厳しいのね」

「なんで赤くなるの?なんで赤くなるの?」

「赤くなる要素がわからないんだが...」


そして、これで幕府とのつながりが消えたと、協力を再度小太郎が申し込もうとすると

今度は別の場所の客にお茶を持ってくるようにいわれ、そちらに向かった。

そのさい、銀時がさっちゃんの眼鏡を取ったらしく、さっちゃんはテーブルに着地するわ、ケーキを客の顔面に叩きつけるわで、店長にクビ通告を出されてしまった。


「あーあ...」

「(いつの間にメガネが...)」

「おーいこっちこっち」

「!」

「眼鏡忘れてったぜ」


そして掛けた眼鏡をくいっとあげた。


「ダメだよ〜さっちゃんはホントそそっかしいな〜」

「やれやれ...まさかクビにされちゃうなんてね」

「しかしこれで足枷はなくなったな。いくとするか」


そして小生、銀時、小太郎はすたすたと残りの3人を置いて背を向け歩き出した。

悪いことをした気もするが、背に腹は変えられない。


***


烏が鳴きだす頃、神社で小生達はさっちゃんの話を聞いていた。


「それじゃああまり時間がないみたいだけど、今から忍の極意を即席でアナタ達に叩き込んであげるわ。

いい?忍は誰にもしられず仕事を成し、仕事を成したらこんせきすら残さない完全なる影...だから目立つようなことは、絶対に厳禁」

「さっちゃん、これ絶対隠密じゃないよ!(なんか小生のだけさっきの店の衣装のコスプレみたいな奴だし!)」

「カラフルすぎるだろコレ!ゴレンジャーか!?」

「いや顔の見分けつかないから。私、銀さん以外の人間は、みんな同じ顔に見えるの」

「「道端の石ころ!?」」

「あっ銀さん、マフラーがずれてるわ。もうおっちょこちょいなんだから、私がいないとダメね」


そしてガサガサと木の枝に手をかけていた。


「おっちょこちょいはお前だァァ!!」

「結局誰も見分け付いてねーじゃねーか!眼鏡かけろ!」


そう銀時と新八君が突っ込んでいる横で小太郎が不満げに喋り出した。


「朔夜...」

「なにさ?」

「どうでもいいが何で俺が黄色なんだ」

「うん、ホントに心の底からどうでもいいね。というかそんなこと言ったら小生どうなるの?

これ完全にイメクラな感じだよ。なんか丈絶対短いし、くノ一プレイ中な感じだよコレ」


太股の半分くらいまでしか丈がないから、スパッツちらちら見えるし。網ニーハイだし。


「朔夜は可愛いし似合っているからいいではないか。それにだって、リーダーは普通赤だろう。お母さん、俺は赤がいいです」

「だれがお母さんだよ竹馬の友ッ!」

「でしゃばるなヅラ。赤は私のシンボルカラーネ。リーダーは私ネ。それにマミーは私のマミーヨ」

「納得いかんがそういう割り振りなら仕方あるまい」

「リーダーとして命令するネ、イエロー。お前はカレーが好物だ。常時カレーを持ってろ」


小太郎の好物、そばだけどね。

でもなんか、この二人が打ち解けて行くのは見てて微笑ましい。

この調子で、小太郎の天人嫌いも緩和し続けてくれたら嬉しいな...

そんな思いで二人が話すのを口の端を緩め見ていると、

さっちゃんに声をかけられ、忍者適性とというものを見せることになったのだった。


***


そして『忍者通り』と呼ばれているらしい商店街へと連れて来られた。

ここで修業をして江戸の忍者は巣立っていくらしい。


「なるほどねェ」

「人から身を隠す術は、人の中にあってこそ身につけられるということか」

「そういうことよ...で、なんでカレーもってるの?」

「(小太郎のキャラがどんどん愉快になっていくな)」


横目で小太郎を見ていると、銀時が口を開いた。


「さっちゃんよォ、で...具体的に何をやるわけ?」

「アレを見て」

「?」

「本屋??」

「なるほど、俺は分かったぜ朔夜。店員に気づかれないように本を万引...」


ガン

ナイスチョップ、さっちゃん。

そしてさっちゃんは、本屋で店員にも客にも気づかれることなく、好みのエロ本を買って来いと

とんでもない事を言ってくれた。


「(というか、そもそも好みも何もないんだけど)」


そんなことを考えつつ、さっちゃんが買ってくるのを見ていた。


「完全に己の気配を絶ち、誰に気づかれることなく、素早い判断で好みのエロ本を選び

店員にも気づかれないよう代金をはらい、何事もなかったように本を購入し、去る

どう、できる?」


そして掲げたエロ本のタイトルは『Mっ娘倶楽部』だった。


「「「「(あ、やっぱそういう趣味なんだ)」」」」


共通の思いを感じた後、銀時が異議を唱えた。


「ってこ、こんな派手な格好でできるかよ。エロ本である必然性もよくわからん」

「確かに、しかも小生このイメクラ的恰好でエロ本って...見られたらただの痴女に勘違いされるよコレ...」


あまり着たことのない下半身の布面積の少なさに、もじっ...と内またを思わずこすり合わせる。


「(お前の場合、既にもう見られるも何も、男の視線総集めだけどな...)」


誰も行こうとしない中、小太郎が笑った。


「フッ、おじ気づいたか?貴様ら。これしきでなれるなら、忍者も大したことはないな」

「ヅラァ!」「小太郎っ!」

「見ておけ、こんなもの朝飯前...いや、カレー時前だ」


そしてカレーを片手に持ったまま本屋に歩き出した。


「小太郎!そのキャラ良いから!カレー置いていきなよ!」

「そうだっておいっ、カレーは置いてった方がいいって!絶対邪魔だって!!」

「ダメアルヨ絶対離しちゃ!お前はそれをこぼすと死ぬからなカレーニンジャー!」

「ルージャ!」

「なにその返事!?なんか響き気持ち悪ッ!!」

「ルージャってなんだよラジャーだろ、きいたことねーよそんな了解の仕方!」


小生と銀時のダブルツッコミを無視して、カレー片手にいってしまった。

しかしスピードは変わらず、客に気づかれず『人妻』というエロ本を手に取った。

皆がコレはイケるんじゃないか?と思った瞬間――


ボタッ


「「「「「(!!)」」」」」


ビチャビチャ


「「「「「(カレーこぼしたァァァァァ!!)」」」」」


そして小太郎は震えながらこっちを見た。


「すまんリーダー、朔夜、後は頼...」


ドシャァァァ


「カレーニンジャー!!」

「小太郎ー!!だからカレー置いてけって言ったのに!!」


そして小太郎はスピードは評価できるけど、注意力が無いとB判定をだされた。

そして次に神楽が敵を取ってやるとエロ本はまだ早いのでジャンプを買いに行った。

だが、匍匐前進でいって、調子に乗ったために、服に犬の糞がついてしまい、泣きながら帰ってきた。


「マミ〜!」(えぐえぐ

「泣かないで神楽、帰ったら一緒にお風呂入ろうね」

「うぅ〜」

「リーダー、心配するな。それはおそらくさっき俺がこぼしたカレー...くさっ!!」

「気休めはよせヨォォ!!カレーニンジャー、いや...本当のカレーニンジャーは私さ!!」

「ヤケにならないで、A評価あげるから」

「同情してんじゃねーヨ、チクショーやってられっか、なにがリーダーだ!」


そしてヤケッパチの神楽を見て、今度は銀時がやる気満々でどこかに姿を消した。


「(一体どこに...)」

「...アレ、どこいったんですか銀サン?」

「さぁ...?」


そのまま本屋の方を見ていると、ガタガタとゴミ箱が動いてきた。


「「「「汚なっ!!」」」」

「いえ、汚くなんかないわ。あれは『隠れ身』という立派な忍法の一つ。さすが銀サン、発想が違うわ」

「「なんか甘くねェ!?ひいきだよひいき!」」


銀時に甘いさっちゃんに、小太郎と神楽が喰ってかかり3人が喧嘩をしてる間、

小生はというと、銀時の入っているであろうゴミ箱をみていた。

するとゴミ収集車がやって来て、そのゴミ箱を清掃員が車の中に投げ込んだ。

そしてゴミ箱が、バキゴシャと音を立て潰された。


「!?」

「なしてこんなトコにゴミなんかあったんだべか?」

「しらね」


凍りつく小生達を残し清掃車は走り去った。


「......ねェ...ヤバいんじゃないスかアレ」

「き...気のせいだよ。ホントは誰も入ってなかったんじゃないのかな?」

「そうだよね、あんなん入ってたら死んじゃうもんね」

「じゃぁ次は朔夜さん、貴女が行ってきなさい」

「あ、あぁ...わかったよ」


そして服装の恥ずかしさに耐えながらも、足音を立てずに本屋に向かった。

しかし...


「...(し、視線が...それに、なんだか...)」

「ねぇ...あのくノ一のコスプレの子見てよ」

「綺麗な顔なのに、頭おかしいのかしら...真っ昼間からあんな恰好で、あんな本買いに行くなんて」

「筋金入りの痴女か、彼氏に強制されてるのよ、きっと...」

「っ〜〜〜!!(こんな恥辱耐えられないよッ!)」


ダッとみんなの所に駆けもどり、小太郎に前から抱きついて顔を埋めた。


「!朔夜...!」

「うぅ...!目立ちまくりだったよ小生はァ!色々言われてたし!!」


火照る顔をうりうりと小太郎の身体に押し付ける。


「朔夜さん、貴女は問題外だわ。人の視線を集め過ぎよ。見られるのが好みなの?」

「断じて好みじゃないよ!!集めたくて集めてないしね!?」

「まったく、自分の趣向は押さえなさいよ」

「だから...」

「それじゃ次は新八君の番ね」

「(無視なのかい!?)」

「あ、ハイ。いってきまーす」


小生の訴えを無視して、次に新八君が本屋へと向かった。

そして新八君は、よほど存在感が無いらしく、すんなりとエロ本を買えていた。

そこにボロッボロの銀時が帰ってきた。


「なんだよ〜オイ。忍者もクソもねーじゃねーか。地味だったら誰でもいけるんじゃねーかよ」

「「「(やっぱ入ってたのか!!)」」」


小太郎、さっちゃんと共に見る。


「バカらしい。よかったよ〜こんな茶番参加しなくて」

「銀時、そのかっこ...」

「いやこれはアレだよ。さっき便所にいったらチンピラにからまれて。いやァホントだってマジで」

「「「「「...」」」」」

「いやホントだって、何その目?」


こんなやり取りをかわしていて、小生達は、ジャンプを読みながら本屋から離れて行く青い服の男に気づかなかった。


***


そしてなんやかんや時は過ぎ、真夜中の忍び込み作戦の決行の時となった。

小生達は奉行所の屋根の上から、闇と静寂に包まれた奉行所を見渡した。


「いくか」

「そうだね」

「忍者戦隊ゴレンジャー及び」

「+αレンジャー」

「「参る」」


〜Next〜



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