銀魂連載 | ナノ
第四十七訓 外見だけで人を判断しちゃダメ。だってそれを言ったら小生の周りほとんど悪人




ワイワイ ガヤガヤ


「(やっぱり遊園地のバイトは賑やかで楽しいねェ...)」


そう思いながら、遊園地のバイトで受付嬢をやっていた。

すると――


「殺し屋4枚とノリが悪い奴1枚。頼む」

「わかり...は?」


何、殺し屋4枚とノリ悪い奴1枚って?普通に大人って言えば...

思わず上を見て、客の顔を見れば、そこには・・・


「「「「あ、」」」」

「朔夜さんだー!」

「...なにやってんだい、アンタら...それに空覇まで...」


ライフルを持っている私服の松平の旦那と、これまた私服でライフルを肩にかけたグラサンをかけた近藤の旦那と総悟君、

そして、同じように銃を持つ、皆についてきたのであろう空覇と、一人銃を持たず、疲れたような顔をしつつ此方を驚いたように見る私服のトシがいた。

......また何かやらかそうとしているのかな...

思わず冷めた目になったのは、仕方が無い事だと思う。


***


「(...まさか栗子ちゃんの彼氏を抹殺しに来るとは...この国の警察は大丈夫なのかな...空覇まで巻き込んでるし)」


休憩をもらい、理由を聞けばとんでもない理由だった。

そして、バイトで内部に詳しいとのことで、何故か小生も協力させられることになり、

ただいま、メリーゴーランドの二人乗りの馬車みたいなのにトシと一緒に乗っている。

その前には、ライフルを構えた殺し屋3人と、総...ソウゴ13の隣の馬に空覇が乗っていた。(空覇からはライフルを取り上げた)

その先には楽しそうな栗子ちゃんと、チャラい外見をした彼氏。


「野郎...やりやがるな、コレを選ぶたァ。馬が上下に動くもんだから狙いが定まらねェ、なんか気持ち悪くなってきた」

「オイ、それよりいつになったらコレ奴らに追いつけるんだ。距離が一向に縮まらねーぞ」

「縮まるかァァァ!これメリーゴーランドだぞ!!この土台ごと一緒に回ってんだよ!永遠に回り続けろバーカ!」

「めりーごーらんどってすごいね!ずっと回るんだ!」

「うん、そうだよ〜(まァ、空覇の見聞にはなるからいいか...)」


すると松平の旦那が口をだしてきた。


「メリーとパント?なんだそれ?遊園地なんてきたことねーからよくわかんねーよ。大人の遊園地はいったことあるけどな」

「大人の遊園地ってなぁに?朔夜さん」

「大人になったらわかるからね〜。それより旦那ァ、早まったことしない方が良いって」

「俺も朔夜と同意見だ。要はあの二人の仲を引き裂けばいいんだろ?他に方法はいくらでもあるだろ」

「なんだよお前ら、仲間に入りてーのか?殺し屋同盟に入りたいのか?」

「おめーらが血迷ったことしねーか見張りにきたんだろーが!」

「警察の長官が警察のお世話になるってヤバイでしょうよ」


この国本当に大丈夫!?

小太郎の国への憂いも分からない気がしないでも...いやでも、アレもアレでやってること大概だしね

アホしかいないのかこの国は!

そんなことを思っていつつメリーゴーランドを降りると、次はコーヒーカップに乗ることになったらしく

ノらない気持ちながらもついていった。


***


そしてコーヒーカップ――

小生は同じ突っ込み役のトシと乗っている。

空覇は一人キラキラと目を輝かせ楽しそうに隣のカップで回っている。


「というか別にあの彼氏さん...悪い人にはどーしても見えないんだがねェ」

「!?ちょっとなに言ってんの朔夜ちゃん!!」

「いや、確かに見た目はちょっとアレですがね。心は綺麗そうだと思いますよ」

「俺もあんたらみてーに外見だけで、あの男の人間性まで否定する気にはなれねーよ」

「どー見ても悪い男だろアレ、だって穴だらけだよ!人間って元々穴だらけじゃん!そこに自ら穴を開ける意味がわからん!」

「「お前/旦那が言ってる意味もわかんねーよ/わからないよ」」


すると総悟君が喋りだした。


「ああいう年頃の娘はねェ、ちょいと悪そうなカブキ者にコロッといっちまうもんでさァ。

そいでちょいとヤケドして大人になってくんですよ」

「「総悟/君、お前/卿は年幾つ?」」

「オイ、おじさんはこんなに悪そーな顔してるのにモテた例がねーんだけど、どーしてくれんだ」

「アンタの場合は、ヤケドどころか全身の80%が焼けただれそうだから」


確かに。

すると、回るのが苦手なのか気持ち悪そうなトシが口元を手で押さえながら、なんとも言い難いことを言い出した。


「まァ、良くも悪くも愛だの恋だのは幻想ってことさ」

「!」

「あんたの娘も、あの男にあらぬ幻想を抱いてるようだが、そいつが壊れりゃ夢から覚めるだろ」

「...別に幻想だけではないと思うがね...」

「?なんかいったか」

「...いや、なんでもないよ」


自分の価値観を押し付けるのはよくないか。

そう思い、不思議そうにするトシに笑い返した。


***


小生達は次にジェットコースターに乗ることになった。

ついにトシまで破局に加担し、総悟君を彼氏の所に派遣した。

何を言ったかはわからないが滅茶苦茶おびえていて、可哀想に思いつつ、小生は空覇と乗った。


「楽しみだね!」

「あぁ、そうだね...(純粋だなぁ。こうしてると本当にただの子供なのに)」


アレだけの戦闘能力を有しているから...よく分からない...


そして動き出し、スピードが出た時、前の方から総悟君がとんできた...って、


「えぇぇぇ!?」

「あっ総悟が飛んでるよ!すごい!!」

「「ぶっ!!?」」


そして前に座っている松平の旦那とトシの顔面に当たって、総悟君は二人の座席にしがみついた。

その姿はすごくシュールで、何を話しているのかは聞こえなかったが

そのままジェットコースターを総悟君は、満喫することになったのだった。

...よく生きてるよね...

そう思いながら、止まったジェットコースターから近藤の旦那以外全員降り、栗子ちゃん達を見る。


「へ...へへ、ヤッベー。お前絶対引くだろ、ヤッベー。オレ、ちょっともらしちゃった」

「(可哀想に...そんなことをさせられたのか...)」

「(...すまねェ七兵衛...お前に恨みはねーがここは...)」


そして見ていられず目を閉じたとき――


「よかった〜。実は私もでございまする。私だけだったらどうしようかと思っていたでございまする」


「「「「(え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛)」」」」

「?(何をもらしたんだろう...?)」


思わず絶句していると、二人はお尻を押さえそのまま歩き出した。

そして追いかけようとしたら、近藤の旦那が立ち上がらない。

そしてよく見ると、少し座高が高買うなっている。


「...まさか近藤の旦那...」

「...朔夜さん、トシ、誰にも言うなでございまする」


そう言って一筋の涙を流した近藤の旦那に、再び二人で絶句した。


***


そしてアトラクションを休憩し、ソフトクリームを食べている二人を遠目に見ながら、小生達も現在、ベンチで休憩している。

あぁ...アーモンドで作った刻み煙草の香が美味しい...


「なんてこった。まさかアレで引かねーなんて、我が娘ながらなんて恐ろしい」

「いやホントに恐ろしいよ」

「なんだお前、まだウンコのこと言ってんのか?お前他人に言ったら殺すからな」

「松平の旦那ァ、その点は大丈夫ですよ。栗子ちゃんは、んなことしてないですから。

見てくださいな。七兵衛君の方は着替えたっていうのに、栗子ちゃんはそのままですから」


そうニッと笑って言えば思わぬ答えが返ってきた。


「ケツに挟めたまま歩いてんじゃねーのか?」

「そんな訳ありますか!」

「オメー娘が可愛くないのか!?アンタの娘はなァ、野郎を傷つけないためにあんなウソ言ったんだよ」

「小生もトシと同じ意見ですよ...」

「何?」

「トシ、朔夜さん、それはアレか。栗子ちゃんは脱糞なんかじゃ全然引いてないと...」

「だっぷ「空覇、女の子が口にしたら駄目だよ」はーい」

「お前らはオレが脱糞してどん引きしてたのに、栗子ちゃんはそんな汚い部分もふくめて、奴を包み込んでいると...そーゆーことか?」

「近藤さん、俺も引いてますぜ」

「待ち合わせで一時間待ちぼうけくらっても笑ってたことといい、こいつァ本気で...」


その時、総悟君が栗子ちゃん達が観覧車に向かっていくのを見止めた。

そして観覧車はチューするために作られたとか言う持論を展開し、3人は2人を追いかけて行ってしまった。

残ったのは小生と、隣に座り煙草を吹かすトシ、そしてキョロキョロとしている空覇だった。


「行っちゃったねェ...」


一人煙を吐き出し、ぼやくように呟いて隣のトシを見ても、トシは何かを考えている様で此方を見ず、斜め下に視線を落としていた。


「...」



『土方はん、土方はん』

『土方はんって二枚目やしクールやし、さぞモテはるんでしょ?』


そう言って俺に色目を使っていた女達


『そうでもねーよ』


興味ねーんだよ


『いややわ〜ウソばっかり』

『土方はん土方はん、アレ?それ何食べてはるん?』

『お茶漬け土方スペシャルだ、食うか?』


その瞬間、どの女もいつも掌を返してきた...だが...


「...朔夜」

「ふぁ?急になんだい?」

「お前さ、初めて見た時俺のマヨネーズに引か無かったよな...」

「え?あ、あぁ、まぁね(また急な昔の話だねェ...)」

「...何でだ?」

「はぁ...?何を聞くかと思えばそんなことかい?そんなの、卿がそれを好き好んで食べてるからに決まってるだろう?」

「!」

「食事の好みで一々引いてたら多種多様な人との付き合いなどできないし、世界に百人にいれば百人違う個性を持っているわけだしね」


だから、トシがマヨラーだったくらいじゃ引く要素にはなりえないよ。


「それは寧ろトシの愛すべき個性だとぐらい思っているし...まァ多少コレステロール値は心配だがね」


にこりと笑ってそう言えば、トシは少し呆気にとられていたが、喉の奥で笑った。


「...クク...」

「?トシ、急にそんなこと聞くなんてどうしたんだい?」

「いや...(...愛なんて、幻想だと思っていたがな)」


朔夜を見てると本当の愛ってやつは、あるのかもしれねぇと思えるな...


「...おい、朔夜、空覇。アイツら止めに行くぞ」

「はーい!」

「変なトシ...(なんだったんだろ?)」


そう思いつつ妙に機嫌がよくなったトシの背を追ったのだった。


***


そしてトシは、愛の戦士マヨラ13に扮し観覧車の屋根の上に乗り、松平の旦那が呼んだヘリを、マヨネーズ型のバズーカで撃ちおとした。

ヘリが爆発し、落ちて行く。


「た〜まや〜!」

「二人いつまでも仲良くやりな、じゃあな(フン...惚れたはれたも悪かねーかもな)」

「(トシも会ったころより随分丸くなったなぁ...)」


そう、遠目に見て思っていると、栗子ちゃんがトシに声をかけるのが見えた。


「待ってくださいませマヨラ13様!あのォ、もうこんな脱糞ヤローとは別れるでございますから私と付き合ってもらえないでございまするか!!」


「え...」

「??どういうことなの朔夜さん」


思わぬ言葉に小生は思わず時が止まり、トシと七兵衛は湖へと音を立てて落ちた。


...女心は秋の空、って言うけどね...


思わず横を向いて、アーモンドの煙を静かに吐き出した。


「あぁ...煙管が美味いな...」


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