銀魂連載 | ナノ
第四十二訓 タイトルだけじゃ映画の面白さはわかんない。




ジリリリン ジリリリン


「!」


しばらくすると家に電話の音が鳴り響いた。


「電話かよ...」

「依頼かもしれないでしょ。ほら、いつまでもセンチメンタルでいるのやめて、いい加減ちゃんとシャキッとする」

「...へいへい」


そして銀時がいつもの死んだ魚のような眼で立ち上がり、電話を取った。


***


しばらくして、電話越しに話していた銀時は、話が終わったらしく受話器を置いた。


「誰からだった?」

「長谷川さんだよ。仕事入ったから一緒にやってくれってよ」

「長谷川さんが...」

「受けたら、今すぐ来てくれってよ。だから行くぞー朔夜、定春」

「あ、了解ー」

「ワン!」


そして小生達は映画館に向かったのだった。


***


そしてしばらくして映画館前...


「えいりあん?しらねーな。お菓子屋みたいな名前しやがって、栄利庵か?あん?」


ヤクザに扮した銀時が、エイリアンに扮した定春に因縁をつける。


「いっとくけどよォー、地球はてめーらなんかに渡さねーから。地球はわしらやくざのもんじゃーい!!」

「ワン」

「なんだとう、お前そんな事を...あのアレひどいぞー。お前アレだぞ。そんなことしたらあの...ダメだぞォォ!!」


ダッと銀時が踏み込み、定春も襲いかかろうとした瞬間、どちらもぴたりと一時停止した。

そして小生もマイクをもった。


「かくして、えいりあんとやくざ、地球の存亡を懸けた戦いが今、始まるわけでございます。はたして地球の運命は?続きはぜひ劇場の方で...」

「って、くるかァァァァ!!誰が来るかァァァこんな呼び込みで!!何このグダグダ感!」


小生のナレーションを遮り、長谷川さんがシャウトし、何時までも一時停止する一人と一匹に怒る。


「だから打ち合わせ、ちゃんときけっていったんだよ。ダメだぞォーってなんだ?ダメなのはお前達さ!!

朔夜さんしかヤル気ねーじゃん!っていつまで一時停止してんだ、もういいんだよ!!どーでもいいトコだけマジメだな!!」

「やれやれ...」



グダグダなやりとりに見ていられなくなり、紫華鬘の刻み煙草を煙管に詰め、火を入れた。

そして長谷川さんが二人に旗持って立ってろと行った時、掃除のおばさんに長谷川さんが呼ばれた。


「ちょっとちょっと長谷川さん。社長が呼んでるけど」

「えっ...ウソ、ヤベ...結果出さねーそ即クビって言ってたしな」


そう焦る長谷川さんに無情な言葉を投げかけるおばさん。


「呼び込みなんてやっても今日は無駄だよ。ちょっとこっち来な」


そして促されるまま中に入って、ロビーのテレビのニュースを見せられた。


「わざわざ、つくりもんのえいりあんなんか見に来なくてもさァ...ホラ、本物のえいりあんが大騒ぎ起こしてんだから」

「オイオイなんだこりゃ?」

「どうやらターミナルみたいだけど...」

「なんか船にでっかいえいりあんがとりついて、事故起こしたらしいよ」

「(なるほどねぇ)」


そしてテレビを見ていると、リポーターが現れ、喋りだした。


『えーみなさん見えますでしょうか?謎の生物によって、

現在一隻の船がターミナル内で事故を起こし機体の一部が壁面からつき出た状態です』

「いや〜恐いわァ」

「(確かにこりゃ大事だ)」

『一体中はどうなっているのでしょう。乗客の安否が気づかわれます!

それにしてもあの禍々しい生物は一体何なのでしょう?ん...アレ、ちょっ...人影?』


そしてどんどんカメラがズームされていき、そこに映し出された人影に小生と銀時は目を見開いた。

そこに映っていたのは、一人えいりあんと戦う神楽ちゃんが映っていたからだ。

それを見た瞬間、脇目も振らず外に飛び出し、示し合わせたように二人で着ぐるみを脱いだ定春に飛び乗って

ターミナルへの道を全速で走らせた。

そして小生を支えるようにして、後ろに座る銀時に振り向いて話しかける。


「アレはやばいよ銀時!」

「わかってらァ!チッ...最後まであんなことしやがって...

つーか朔夜、お前もお前であんな化けもんと戦えんのか!?」

「っ戦えるよ!小生だって、神楽ちゃんを助けたい!!」


そう決意を吐き出し、銀時を強く見つめる。


「っわーったよ...でも、俺から離れんじゃねーぞ(こうなった朔夜はテコでも動かねーからな...)」

「分かってる!」

「よし」


そして、ターミナルへと一心不乱に向かうのだった。

待ってな、神楽ちゃん...!!

卿の人生の重要な選択を、えいりあん如きに邪魔させはしないから


***


そして走り続けると、ターミナルと真正面から逃げてくる、一般市民と真選組一同が小さく見えてきた。


「さて銀時、そろそろ準備と行こうか」


そして着物の下の合わせを開き、太ももの黒スパッツが見えるまで開けて

ジャキッと取り出した折り畳み采配を引きのばした。


「そーだな...しかしお前ほんと大胆だな」

「そう?動きやすいだろう、この方が」

「...ま、お前が良いなら良いけどな。くっちゃべってる暇もねーし」


そして銀時も木刀を引き抜いた。


「よし、じゃぁ定春!ラストスパートだよ!」

「ワン!!」


そして猛スピードで逃げ惑う一般市民を横目にえいりあんにむかって走る。

すると向こうも此方に気付いたらしかった。


『あっ、なんだアレは!?逃げ惑う人々を押し切って、何かがこちらへ・・・

アレは...犬?老人と、女の子...?......いや』


その時、定春がその一団を飛び越えるように飛んだ。


『侍と、姫!?』

「朔夜さん!!」

「旦那ァ!?」

「お前ら何...!?」

「(にっ)」


そんな驚く空覇達と真選組一同にいつもどおり笑むと、その間に銀時がカメラを見つけていた。


「あ、これカメラ?これカメラ?おーいあったぞ朔夜」

「あ、了解了解」

「えーと、映画えいりあんVSやくざ絶賛上映中」

「皆さん、劇場に見にきてネ」


軽くウインクして言い終わった瞬間、再び定春を間髪いれず銀時が走らせ出した。


『なんだァァァァァァ!!あの謎の人物達はァァァ!!それにあの女性のウインク、胸キュンでした!!』


...なんか変な台詞も聞こえたけどスルーしよう。

とりあえずえいりあんに集中しないと...


そして迫りくるえいりあんに、能力値を引き上げるため全ての意識を向け、戦闘意識を高める。

そんな小生達の背に、真選組の皆の声が聞こえてくる。


「旦那ァァ!!」

「朔夜さん!!」

「朔夜さんと野郎ォ死ぬつもりか!?」



その声を背で受け止めつつ、小生達はそれぞれ得物を構えた。


「――定春、今からが散歩の時間だよ」

「今日はどこでクソたれようがじゃれようが自由だよ。めいっぱい暴れな」

「「いくぜェェェ/行くよォォォ!!」」


次の瞬間

バグン


「「あり?」」


ゴッキュン

そしてそのまま、真っ暗な体内へと押し流されてしまった。




そのころ外で...


「え゛え゛え゛え゛え゛え゛!!呑みこまれたァァ!!散々カッコつけて呑まれちゃったよ、オイぃぃ!何しに来たんだァァ!?」

「っ朔夜さんを返せェェ!!!」


ドゴォン


「空覇ちゃんまで行っちゃ駄目ェェ!!!」

「戻ってきなってェェ!!」


こんな騒ぎが起こり始めたのもしらずに。


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