銀魂連載 | ナノ
第二訓 バイト先で旧友に会うとたいてい話し込んでクビになる



四方八方敵ばかり、その中に桂と銀時はいた。


「......これまでか。敵の手にかかるより、最後は武士らしく、潔く腹を切ろう」

「バカ言ってんじゃねーよ。立て」

「美しく最後を飾りつける暇があるなら最後まで美しく生きようじゃねーか。

それによぉ、まだ朔夜がいるだろ。

俺たちの代わりにあいつが今も生きるために必死で頭働かせてんだ。

なのに体働かせる俺たちが、諦める訳にはいかねーだろ」


その男、銀色の髪に血を浴び


「行くぜ、ヅラ」

「ヅラじゃない桂だ」


戦場を駆る姿はまさしく夜叉

すると…

ドンッ

一部の天人達が突然倒れた。


「小生の傑作『コローシヤ君』達の餌食にされたくなくば、そこをどきたまえよ天人の諸君。

小生は、卿等に一切の用はないのだからね」


天人達が吹き飛ばされた場所には、数台の小型戦車の群れ。

その一つの上には、一人の冷たい笑みを浮かべたうら若い娘がいた。


「!朔夜、そのからくりは使うなと言っただろう!」

「オイオイ、軍師が簡単に出てきちゃダメだろ」

「やれやれ、御挨拶だ。卿等があまりに遅いから小生も助太刀にきたのだよ。

そしたら潔く腹を切るなんて不甲斐ない言葉が聞こえてつい手をね」

「不甲斐ないだぁ?誰のことを言ってんだよ、あぁヅラか」

「ヅラじゃない桂だ。不甲斐ないのはお前のことだ銀時」

「腹切るっていい出したのお前だろ」

「はあ…小生にしてみれば、どっちも小生の助けがなければだめだと思うのだがね」


皮肉気な笑みを朔夜は遠くで浮かべる。


「そんなことないから。銀さん、ちょっと最近、甘いもの食べれなくて力でなかっただけだから」

「俺だって平気だぞ。ちょっと油断しただけだ」

「じゃぁそれを小生に証明してくれないか?」

「銀さんに任せとけ!ヅラ、てめーは引っ込んでな」

「ヅラじゃない桂だ!朔夜にいいとこを一人で見せようとは笑止!」


負けるかァァ!!!


朔夜は、すごい勢いで二人が敵に斬り込むのを見て、満足げに笑った。

この少女、姫のごとき容貌で、蔓を這わせるが如く智略を巡らせ


「ふむ、やはりあの二人は挑発した方がいい働きをしてくれる。見事に小生の策通りの動きだ」


血の海の中で妖艶に笑む姿は、まさしく孤高の茨。



***



「天人との戦において鬼神の如き働きをやってのけ、敵はおろか味方からも恐れられた武神...坂田銀時」


そして、小太郎は、事態を把握したことで苦い顔をしているだろう小生を見た。


「そして、天才的ともいえる程よく回る頭と器用さで、天人達を見事にせん滅させる

数々の策を練り上げた軍師...吉田朔夜。我等と共に再び天人と戦おうではないか」

「......銀さん、アンタ攘夷戦争に参加してたんですか。それにアナタも...」


眼鏡の少年の視線に、小生はちょっと困ったような笑みを浮かべてから、複雑な思いで小太郎を見た。


「...朔夜は戦の中で行方不明になり、銀時は戦が終わるとともに姿を消したがな。

お前たちのすることと、考えることは昔からよく分からん」


「俺ァ派手な喧嘩は好きだがテロだのなんだの陰気くせーのは嫌いなの。

なぁお前もだろ?朔夜」

「そうだな。小生も、ちまちまとしたことは好かないよ。策を練るなら大きな戦が一番だ。・・・だが小生たちの戦はもう、とうの昔に終わってしまったよ。違うかい?」


静かに吐き出した言葉に銀時も、うんうんと頷く。


「朔夜の言う通りだ。それをいつまでもネチネチネチネチ、京都の女かお前は!」

「バカか貴様は!京女だけなく女子はみんなネチネチしている。そういう全てを含めて、包みこむ度量がないから、貴様はもてないんだ」

「む、それは女として聞き捨てならないな。小生もネチネチしていると?」

「いや、勿論お前は別だぞ#朔夜。しかし、本当にこんな処で会うとは奇遇だな。それに綺麗になった。昔から綺麗だったがな」

「ふふ、流石小太郎。褒めるのがうまいな。銀時と違って、もててただけはある」


小生の言葉にムッとした顔をする銀時。


「バカヤロー。お前...俺がもし天然パーマじゃなかったらモテモテだぞ、多分。

それに、俺には朔夜がいればいいんだよ」

「何でも天然パーマのせいにして自己を保っているのか、哀しい男だ。それに朔夜はお前のものではない。俺のものだ」

「どっちのものでもない。小生を置いて勝手なことを言うでないよ。まぁ、銀時の何でも天パのせいにする癖は、小生も哀しいと思うけれどね」

「哀しくなんかないわ。人はコンプレックスをバネにしてより高みを...」

「アンタら何の話してんの!?」


眼鏡君の鋭い突っ込みが入り、話は軌道修正された。


「俺たちの戦は、まだ終わってなどいない。貴様らの中にとてまだ残っていよう銀時、朔夜...国を憂い、共に戦った同志達の命を奪っていった、幕府と天人に対する怨嗟の念が...」

「「...」」


小太郎の言葉に、小生と銀時はただ黙っていた。


「天人を掃討し、この腐った国を立て直す。我ら生き残った者が死んでいった奴等にしてやれるのはそのぐらいだろう。

我等の次なる攘夷の標的はターミナル。天人を召喚するあの忌まわしき塔を破壊し、奴等を江戸から殲滅する。

だがアレは世界の要...容易にはおちまい。お前達の力と頭脳がいる銀時、朔夜。すでに我等に加担したお前に断る道はないぞ。

もちろんこの話を聞いた朔夜にもだ。テロリストとして処断されたくなくば俺と来い。迷うことはなかろう。もともとお前たちの居場所はここだったはずだ」

「銀さん...」


眼鏡の少年の心配げな声が響く。

瞬間、部屋の扉が蹴破られた。


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