第二十四訓 恥ずかしがらずに手を挙げて言ったらあとで変なあだ名をつけられる
今日は、万事屋の仕事で長谷川さんに頼まれてコンビニの仕事を手伝うことになった。
「よい、せっ」
どさっ
商品の入った段ボールをコンビニの商品倉庫に置くと、痛い腰をトントンと叩いた。
「あー...重い...」
しかし、それよりも気になるのは...
「...レジ、銀時と神楽ちゃんにできるかな...?」
心配だ...と思ってレジの方に戻ろうとした時――
「てめェ弁償しろコラァ!!」
という怒鳴り声が聞こえてきた...心配的中だよ...
思わずため息を吐き、場をおさめようとレジに向かった。
***
「高屋八兵衛、十六歳」
「新八君と同じ歳かい。いい年してこんなバカみたいな犯罪犯して...お母さんが悲しむよ?」
レジの方をおさめたら、その後すぐに掃除をしていた新八君が、整髪料をいくつも万引きをしていたらしいリーゼントの青年を連れてきた。
なのでとりあえず、コンビニの従業員室へと連れてきて、話を詳しく聞くことにして、今はここにいる。
「大体オメー、こんなにたくさんの整髪料どーするつもりだったんだ?心配しないでもキマってるよお前、自分に自信をもて!」
「コレ全部俺が使うわけねーだろうが!!」
「じゃあなんだご飯か?ご飯にかけてサラサラいくつもりだったのか?」
「そんなわけないだろう?」
どんな整髪料の利用方法だよ。
すると新八君が高屋君に声をかけた。
「...タカチン、なんでこんなこと...タカチン、こんなことする奴じゃなかったじゃないか」
「うっせーよ。あれから何年たったと思ってんだ?もう俺はオメーの知ってるタカチンじゃねーんだよ!
もういいから奉行所でもどこでもつれてけや!はりつけ獄門上等だコノヤロー!!」
そう言っていきがる彼を見て、とりあえず新八君の知り合いだし、初犯と言うことで解放した。
しかし...あの格好...確かここいらで一番タチが悪い連中のじゃ...でもま、人の人生だしね...
少し気になったが、気にしてたらきりがないと思い、再び職務に戻った。
***
それから少ししてお昼時...妙が差し入れを持ってきた。
「お朔さんと銀サンと神楽チャンも食べてください」
「おや、差し入れなんて有り難いねェ」
「姐御ォォ!!」
「おっ、食いモン?何?」
そして開けられた中身を3人で見る。
そこにはこの前見た卵焼きと同じものが鎮座していた。
「おっ、また卵や...」
「今回は新しい料理に挑戦してみたんです〜。ハイ、だし巻き卵」
え?卵焼きじゃなくて?←まだこの前の花見の物を卵焼きと信じてた。
というかこういうだし巻き卵も...あるのかな?
卵焼きと同じ黒いものに見えるのは小生の目が悪いんだろうか?
じーっとそれを見つめていると、飲み物を買いに走りだそうとしていた銀時と神楽ちゃんが妙ちゃんに捕まった。
そして床で食べることになり、二人が同じように泣きながら、妙ちゃんと床におかれたそのだし巻き卵の前で正座した。
小生もそれを見たまま、とりあえず銀時の横に正座する。
「新ちゃんアナタもこっちに来て食べなさい。女に恥をかかせるものじゃありません」
しかし新八君はこない。不思議に思ったのか妙ちゃんがもう一度名前を呼べば、ようやく振り返った。
だがその様子はいつもと違っていた。
「...姉上、確か『舞流独愚』っていえば、ここらで一番タチの悪い連中ですよね?窃盗だの傷害だの平気でやる連中だって」
「...…新ちゃん、アナタそんなにタカチンポのことが...」
「姉上、タカチンです。段々悪化してますよ」
「...それより、なんでそんなに彼を気にかけるんだい新八君?」
「...タカチンがあんなになったのは僕のせいなんです。彼が一番困ってる時、僕は彼を突き放したんだ」
そして過去の出来事を語り出した。
それを聞けば、寺子屋時代に高屋君が授業中に脱糞してしまったのを
寝たふりをしてしまって救ってあげられなかったという内容だった。
「...あの時、僕は一体どうすればよかったんですかね?どうすればタカチンを救えたんですかね」
「......いや、無理だろ」
「無理無理」
「ちょっと無理だね...」
「無理じゃないわ」
「「!」」
二人の言葉を覆すように妙ちゃんがそう言い、立ち上がった。
「友達が泣いている時は、一緒に泣いてあげればイイ。友達が悩んでる時は、一緒に頭かかえて悩んであげればイイ。
友達が脱糞した時は、あなたも脱糞しなさい新ちゃん」
ええええぇぇぇ妙ちゃん、後半に関しては他の方法考えようよ・・・
「どんな痛みも友達なら分け合うことができるのよ。そしてね新ちゃん、もし友達が間違った道に進んでしまった時は
その時は、友情を壊してでも友達を止めなさい。それが真の侍の友情よ」
「!...」
友情を、壊してでも止める...
途中のくだりはアレだったけど、最後の台詞だけは心に響いた。
祭りの日のことが思い出される。
「...(晋助も、同じかな...)」
「......すみません、店長。用事がありますので、早退させてもらいます」
「!あ、新八君...」
考えにふけっていると、新八君が覚悟を決めたようにコンビニから出ていった。
「...オイオイ、いいのかよ。最近のガキャ、何するかわかったもんじゃねーぜ?どーなってもしらね〜よ俺ァ」
「...小生も痛い事はご免だよ...」
***
そう言ったものの結局小生たちは放っておけず、寺門通親衛隊の羽織を暴走族風に晒しだけの上に羽織って
暴走族『舞流独愚』の溜まり場の河川敷に、銀時の原チャリと自分の発明品の原チャリで向かっていた。
「朔夜って原チャリ乗れたアルか?」
「うん、一応人並にね。まぁ小生の発明のこの『ハシッテーヨ君』は操縦はフルオートになってるけど」
「...朔夜ってネーミングセンス酷いアルな」
「なっ!?神楽ちゃんまで!」
「やっぱお前のネーミングセンスは万星共通でダサイんだよ。発明品のが可哀想で涙が出てくるぜ。
というかお前が原チャリね...ちゃんと免許取ってんのか?」
「そんなことないし、小生の頭脳が先に行きすぎて周りの理解が追いつけないだけだよ。というか流石にちゃんと運転免許はもってるよ」
これで捕まって色々罪状バレて罪合わせて斬首ものだよ。
そんな軽口を叩いていると、ようやく溜まり場が見えてきて、新八君と『舞流独愚』のメンツの姿が見え、怒鳴り声が聞こえてきた。
「オイ、あんまりナメんじゃねーぞクソガキが!!たった一人で何ができるってんだ!?」
「「一人じゃねーぞ!!/ないよ!!」」
「!?なんだ」
バイクを止めて跨ったまま叫べば『舞流独愚』の奴らがこちらを振り返る。
「隊長ォ、やっぱバイトなんてかったるくてやってられませんわ」
「小生たち置いて行くなんて水臭いねェ」
「喧嘩ならあたいらも混ぜなァァ!!寺門通親衛隊特攻部隊『魔流血頭』見参!!」
マスクをつけた妙が銀時の原チャリから下りてそう言い、
グラサンをかけたヤンキー座りの神楽ちゃんがクチャクチャと酢昆布を噛んで牽制する。
「そーゆうことで、次回は血煙乱闘編だぜ」
「『魔流血頭』の暴れっぷりをちゃんと見なよ」
「「そこんとこ夜露死苦ぅ!!」」
やっぱ小生たちはこうでなくっちゃね。
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