銀魂連載 | ナノ
第十五訓 旅行ではしゃぎすぎると怪我をする




ガララ


「おや、お帰り神楽ちゃん」


スーパーから帰ってきた神楽ちゃんが、居間に入るなり紙袋を抱えたまま、得意げな顔をして仁王立ちしている。


「...?」

「何やってんだオメー」

「ムフフ...ひざまずくアル愚民達よ。あ、朔夜は良いアル」

「へ?」

「「あ?」」

「頭が高いって言ってんだヨ。この貧乏侍共が!!工場長とお呼び!」


ピシッと神楽ちゃんがネギでテーブルを叩く。

食べ物をそんな風に粗末に扱わない、とネギを取り上げる。


「女王様のほうがいいんじゃねーのか工場長?」

「女王様なんかより工場長の方が生産的だから偉いアル!やせこけた工場長とお呼び!」

「工場長、トイレットペーパー買ってきてくれた?」

「トイレットペーパーは忘れたアルけど」

「あちゃー...安売り今日までなんだけどねェ、工場長」

「ケツ拭く紙は忘れたけど、もっと素敵な紙は手に入れたヨ」

「!」


そしてゴソッと紙袋から一枚のチケットらしい紙を取り出した。


「(ムフン)」

「宇宙への旅四名様!?」

「こっ...工場長ォォ!!」

「コレ、今大江戸ストアでやってる福引の一等じゃないかい!すごいね、やせこけた工場長!」


そして万事屋三人と小生で行くことになった。

まぁ、たまには旅行もいいかな...バイト先からもたまには休み取れって言われてるしね。


***


そして小生たちは、数日後にターミナルへやってきた。

銀時が金属探知機に反応したりしていたが無事に皆乗り込み、宇宙に出発したが――


「なに?定春がさらわれた?」

「ターミナルでかい?」

「そうアル。私もう旅行なんて楽しめそーにないヨ」


クチャクチャ ガツガツと、フライドチキンと団子を食べる音が合間に聞こえてくる。


「だーからババアに預けとけって言ったんだよ。もう台無しじゃねーか旅行が...」


ちゅるるる ズルルルと、同じくラーメンをすする音も響く。


「台無しなのはお前らの人間性だよ」

「少なくとも今十分旅行楽しんでるよ、卿らは」

「だって定春だけ残していくのかわいそーネ!銀ちゃんは定春かわいくないアルか!!」

「神楽ちゃん、食べながらそんなしゃべったら口から物が飛ぶから」

「旅先でギャーギャー喚くんじゃねーよ。あーあ、興冷めだ。もう帰るか」

「銀時、それはラーメン完食しながら言う台詞じゃないから」


すると


【――皆様、よろしければ左側の窓をご覧になってください】

「!」

【あれが太陽系で最も美しいとされる我等が母なる星、地球です】


そして窓に真っ青な、文献で読んだままの姿の地球の姿があった。


「(まさかこの目で拝める日が来るなんてねェ...ありきたりだが、本当に神秘的な星だ)」

「「わーキレイだ〜」」

「わー、じゃねーよ!キッチリエンジョイしてんじゃねーか!なんだオメーら!」

「あはは...」

「小さな悩みなんてどーでもよくなってくるな〜」

「ホントアル。心洗われるヨ」

「今洗っちゃ駄目だよ!心に遺しておくべき汚れがあるから!」

「そうですって!ちょっと僕探してきますよ。同じ船乗ってるかもしれないし」

「おねが...」


カチャ


「動くな」


「「え?」」


気づけば銃口が向けられている。


「キャァアアア!!ハイジャックよ!ハイジャックだわ!!」

「うるせー騒ぐなァァ!!」


ちらっと通路を見ると、覆面のリーダーっぽい男と、その仲間っぽい男達が銃を片手に占拠していた。


攘夷思想もあんな銀行強盗のパチモンがいるようじゃ堕ちたもんだね。


「これよりこの船は我々革命組織『萌える闘魂』が乗っとった!貴様らの行く先は楽しい観光地から地獄に変わったんだ!」


面倒だから一人で逝ってよね。


「宇宙旅行などという堕落した遊興にうつつを抜かしおって、我等の星が天人が来訪してより腐り始めたのを忘れたかァ!!」


この国が腐ったのは別に天人だけのせいじゃないでしょ。


「この船はこのまま地球へと進路を戻し、我が星を腐敗させた元凶たるターミナルにつっ込む!」


あーあ...何たる愚直な特攻策だろう。やるなら卿らだけでしてくれ。


「我等の血肉は燃え尽きるが、憎き天人に大打撃を加えることができよう。

その礎となれることを誇りに思い死んで行け!」


そんなに憎けりゃ自分らだけで地獄への片道切符を買ってくれ。

市民はもう天人とかそんなことに、そこまでこだわっちゃいないんだよ。


「ヤ、ヤバイよ...銀さん、朔夜さん」

「俺死んだら宇宙葬にしてもらおっかな。星になれる気がするわ」

「ああ、なれるともさ」

「うぉーい!ホントに星になっちまうぞ!!ちょっと朔夜さん!」

「大丈夫だよ新八君。昔からベラベラ自分の作戦や胸中演説する奴に、大事をなせる奴なんていないんだから。

あと、こんな愚策が簡単にまかり通るわけないだろう」

「でも...!」


その時、銃を持った男の一人がこちらを不振がって話しかけてきた。


「オイ、貴様ら何をやっている?我等の話きいてい...」

「ほァたァァァ!」


ガゴ


「ぐぁ!!」


神楽ちゃんの蹴りが男に入った。

その後きた男も銀時に蹴り飛ばされる。

そして最後のリーダーっぽい男は新八君によってラーメン皿を顎に決められ、見事に倒れた。

ほら、やっぱり上手くいきっこないんだって。

そして3人が乗客から賞賛されていると、その真後ろに残っていたらしい敵が現れた。

「ふざけやがって死ねェェ!!」

「っにげ...」


ドン


「ぶっ!!」


やばいと思ったとき、扉が開き、男が吹っ飛ばされて床にしずんだ。


「あ〜気持ち悪いの〜。酔い止めば飲んでくるの忘れたきーアッハッハッハッ。あり?何?なんぞあったがかー?」


そういって入ってきたグラサンの赤いジャケットの男の頭にはさらわれたという定春がいた。

しかし、どこかで見たことあるような気が...


「定春ぅ!!このヤロー定春ば帰すぜよォォ!!」


ガシャ


「あふァ!!」


ドカン!

男が神楽ちゃんの蹴りによって吹っ飛ばされ、扉に頭を打って気絶する。

でも...なんだろうこの懐かしさは...?

銀時と二人で気絶している男の顔をちゃんと見る。


「「!」」


"「朔夜、必ず生きてまた会おうの」"


懐かしい記憶がよみがえる。


「朔夜、こいつァ...」

「あァ、多分...いや、絶対そうだよ...」

「銀さん、朔夜さん、知り合い?」

「あ、そ...」


ドドォン!


「「!!」」


答えようとしたとたん操舵室が爆発したようで、大きく船が傾いた。

聞けば操縦士たちも皆負傷しているらしい。

どうすれば...って、そうだ!


「銀時!」

「あぁ!?...!っそうだったな、分かった!」


ガッ


「!!イタタタタタ!!何じゃー!!」


銀時がグラサン男の髪をひっつかみ走っていくのを追いかける。

やっと会えたってのに、お互い死ぬわけにはいかないよ!


「誰じゃー!!ワシをどこに連れてくがか?」

「テメー確か船好きだったよな?操縦くらいできるだろ!!」

「というかこの状況で操縦できないとか言ったら怒るよ!!」

「なんじゃ?おんしら何でそんなこと知っちょうか?...あり?どっかで見た...」


そして小生たちの顔を髪を銀時につかまれたまま交互に見る。


「おおおお!!朔夜と金時じゃなかか!!おんしらなぜこんな所におるかァ!?朔夜に至っては死んだかもしれんと聞いてから、ずっと探しとったんじゃぞ!?」

「心配掛けてごめんよ、でも今それどころじゃないから!!」

「ん?そうかの?まぁ、とにかく久しぶりじゃのー金時!朔夜!珍しいとこで会うたもんじゃ!こりゃめでたい!酒じゃー!酒を用意せい!」


ダコン!


銀時が思い切り頭を壁に叩きつける。

昔からやっぱりその辺変わらないね。


「銀時だろーがよォ、銀時!お前、もし俺が金時だったらジャンプ回収騒ぎだぞバカヤロー」


そしてあちこちで誘爆を起こし、ボロボロの操舵室へと入る。


「朔夜、ちぃと手伝っちょくれ」

「分かったよ。サポートするね」


操舵室に入り、二人で操作盤をいじる。



「銀さん!朔夜さん!」


すると、新八君と神楽ちゃんがやってきた。


「ヤバイですよ。みんな念仏唱え出してます」

「心配いらねーよ、朔夜とアイツに任しとけば...昔の馴染みでな、頭はカラだが無類の船好き。

銀河を股にかけて飛び回ってる奴だ...坂本辰馬にとっちゃ、船動かすなんざ自分の手足動かすようなモンよ」

「辰馬!こっちOkだよ!!」

「...よーし、準備万端じゃ。行くぜよ!」

「ってソレ違うから馬鹿ァァ!!」


それどう見ても操縦士の足だから!!


「ホントだ。頭カラだ...」


バキッ

そして辰馬に銀時の鉄拳がとんだ。


「おーい、もう一発いくか?」

「アッハッハッハッ!こんなデカイ船動かすん初めてじゃき、勝手がわからんち」

「最初に言おうよソレは!」

「舵はどこにあるぜよ?」

「これじゃねーことだけは確かだよ!」

「銀ちゃん、朔夜、コレは?」


そして操縦士の両腕を掴みあげる神楽ちゃん


「パイロットから頭離せェェェ!!スイマセンパイロットさん!」


そして窓の外を見れば、船はどこぞの辺境の星に落ちかけていた。

その時新八君が舵を見つけるが、相当重いようで動かないらしい。

そこに全員で向かう。


「ボク、でかした。あとはワシに任せ...うェぶ!」

「ギャー!!こっちくんな!アンタ船好きじゃなかったの!?思いっきり船酔いしてんじゃないスか!!」

「イヤ、船は好きじゃけれども船に弱くての〜...うぷっ」

「何その複雑な愛憎模様!?」


辰馬、久しぶりに会っても相変わらずかい!

そう思っていると銀時、神楽ちゃん、新八君たちが舵の取り合いを始めた。


「あーもう3人ともやめなって!」

「そうじゃ。素人がそんなモンさわっちゃいかんぜよ」

「いや、辰馬も駄目な気がする」


これは小生の勘だけど。


「いんや、このパターンは三人でいがみ合ううちに舵がポッキリっちゅ〜パターンじゃ。それだけは阻止せねばいかん!」


その時だった。

ガッ


「!!」

「あ...」


辰馬が足元の破片にひっかかり前に倒れ、舵を掴み、そのまま折ってしまったのだ。


「アッハッハッハッ、そーゆーパターンできたか!どうしようハッハッハッ!!」

「アッハッハッハッじゃねーよ!あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!」

「ほらやっぱり勘あたったじゃん!!」


そして、船はその辺境の星へ落ちた。

...これ、どうするのさ...



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