銀魂連載 | ナノ
第十一訓 血のつながりだけが家族じゃない




「ふぬをををををを!!」

「ふー...(格闘が長いねェ)」


今、小生は煙管をくゆらせつつ銀時と共に定春の散歩をしている。

時間が空いたので久しぶりに万事屋に行ったら、無理やりこうなった。


「おめっダメだって!こんなとこで用たしたら...お前の排泄物はわんぱく坊主の夢よりでかいんだから!!」

「(大声で何言ってるのさ...恥ずかしいねェ)」

「チキショー!だから散歩なんざ嫌だったんだよ!面倒は必ず私が見るアルとか言ってたくせによォ!!」

「まぁまぁ、銀時落ち着きなよ。神楽ちゃんはまだ子供だしさ...」

「お前甘い!パフェ並みに甘いって!!大体、最終的にぜってーお母さんが犬の世話することになるんだよ!アレ?俺お母さん?むしろお前がお母さ...」

「フン、ペットのしつけもできんとは情けない...」

「「!」」


バッと2人で振り返れば笠も被っていない小太郎と、見たことのないオ●Qのような白い生き物がいた。


「動物一匹自由にできんようで、天下国家をどうして動かせようか...貴様、それでも侍か!?」


ものすごく滑稽なペアショットに思わず口があんぐり開く。


「こ、小太郎...?」

「ヅラァ...なんだソレ、気持ちワル!!」

「気持ち悪くない!エリザベスだ」

「単体で見るとそーでもねーが、お前とセットになると気持ちワリーよ、っていうかお前が気持ち悪い!」

「というかソレどうしたんだい?」

「坂本のバカが、この間俺の所に来て勝手においていったんだ。大方、どこぞの星で拾って来たんだろう」

「辰馬が...(そういえば辰馬が宇宙に出て行ってから会ってないな...)」


出てきた昔馴染みの名前に、妙に納得しつつ、そう思う。


「相変わらず宇宙航海などにうつつをぬかしているらしいからな」

「そうなんだ...(ちゃんと自分の思ったとおりにやってるんだね...)」

「というかオメー、地球外生物は嫌いじゃなかったか?」

「こんな思想も何もない者をどう嫌いになれというんだ。それに...」

「それに?」

「結構可愛いだろう?」

「「...」」


小太郎からの似合わぬ言葉に、銀時と思わず二人で絶句する。


「よーし、行くぞエリザベス。今日は河川敷まで行こうか!またな、朔夜」

「あ、あァ...またね...」


それ以上の言葉も出ない驚きを引きずったまま、離れていく小太郎の背中を見送る。


「...変わったねェ...」


***


「へェー、あの桂さんがねェ、意外なところもあるんスね」


そして散歩を終えて万事屋に戻り、あった出来事を話せば新八君からそんな反応が返ってきた。


「まーな、奴も丸くなったってことじゃねーの?」

「そうかもねェ、小太郎もちょっとは落ちついたってことかもね」


定春に頭をかじられている銀時と、酢昆布を食べながら新聞を読む、神楽ちゃんの間に座りながら同意する。


「ウチのももらってくんねーかな、生産性の無い奴はウチにはいらねーよ。コイツが産むのはウンコと痛みだけじゃねーか!」

「それは定春に失礼だよ」

「そうアル。定春!そのまま噛み砕くヨロシ」

「待て待て待て待て、わかったわかった!!ウンコと痛みプラスシッコだ」

「ヨシ、定春離してやれアル」

「ヨシじゃねーよ。ロクなモンプラスされてねーじゃねーか!」

「そうだよ...大体ペットは安らぎや癒しを与えてくれる存在なんだ。それなのに見返りを求めるのは間違ってるよ」

「朔夜さんの言うとおりですよ」


その時、テレビから声が聞こえてきた。


「番組では変なペットを募集しています」

「!」

「鎖国解禁以来、我が国には天人と共に、様々な生物がやってきております。あなたの近所にも変なペットがいませんか?

当番組ではそんな変でかわいいペットを集め、日本一を決定したいと思います。グランプリには豪華商品が...」

「...安らぎと豪華商品、どっちが欲しい?」

「「豪華商品」」

「...はあ...」


そうだろうと思ったよ。




数日後――

小生たちはグランプリ会場へと来ていた。今は、紹介されるの待ちで舞台裏にいる。


「...ちょっと、ほんとにこの役割でいくのかい?」

「当たり前だろ」

「全国放送だよ?知り合い見てたらどうしてくれるのさ。勘違いされるよ」

「あーそれはそれでありだから」

「ありな訳ないんだけど...」

「まぁ、今日だけですから我慢してくださいって朔夜さん」

「そうネ、今日だけヨ」

「...分かったよ。仕方ないねェ...」


そして目の前のセットの扉が開き、ステージに上がる。


「新宿かぶき町から来ていただきました宇宙生物 定春君と、飼い主の坂田さんファミリーです」

「(はぁ...馬鹿らしい...)」


内心溜息をついて、心あらずになっていると、司会が話を降ってきた。


「えっと、貴女は坂田さんの奥様でよろしいんですよね?」

「え、あ、はい。妻の坂田朔夜です。今日はよろしくお願いしますね〜」


そう、今日は銀時の妻で通すことになっている。

なぜ?坂田さんファミリーだかららしい。

馬鹿だと思う。でもこの三文芝居に付き合ってやってる小生も正直馬鹿なのだ。

だからもう、誰も突っ込まないでほしい。


「旦那様にもったいないくらい美人の奥様ですね〜」

「おい、どういう意味だ司会」

「ありがとうございます〜」

「ちょっ、朔夜!?酷くない!スルー!?」

「もう...冗談だよ、アナタ(面倒だねェ...また銀時、頭食われてるし)」

「!(アナタって響きやべえな!いっそほんとにこのまま結婚したい...!!)」

「じゃぁそろそろペットの紹介に移りますが...えーと、こちらの坂田さんに食いついて離れないのが定春くん?っていうか大丈夫ですか?」


司会者が、銀時の頭をかじる定春を見て問いかける。


「大丈夫ッスよ。定春は賢い子だからちゃんと手加減してますからね〜」

「血ィ出てるんですけど...」

「銀さん、審査員ひいてますよ」

「早く血を止めなよ。結構ダラダラだから」

「というか朔夜さんか神楽ちゃん、定春止めてくださいよ!二人の言うことしか効かないんですから!」

「神楽ちゃん、頼むよ」

「ウン」


カッチコッチと、珍しく酷く緊張した様子で、神楽ちゃんは歩き出し

カンペを持ってる人に「メッ!!ご飯抜きにするアルヨ!!」とか言っていた。

ダメだね、コレ。失策もいいところだよ。

小生が思わず息を深く吐き出すと、番組はCMに入った。


「ちょっとォ、ちゃんとやってくださいよ。こんなんじゃ決勝まで勝ち残れるわけないでしょ!?」

「そーか?審査員の奴ら俺にくぎづけになってたぞ」

「そりゃ今の卿ならだれだってくぎづけになるさ」

「マジか。じゃあお前もくぎづけになる?」

「違うから!絶対アンタが思ってる意味じゃねーから!!鏡で自分の顔見てこい!」

「3人とも動きがかたいネ。舞台をフルにつかっていこう!身体もっと動かそ!!」

「おめーが一番ガチガチじゃねーか!!」

「そうだよ。どんな場でも自分のペースを崩さずに余裕を持って生きないとね。あ、今仮眠取ってきていい?」

「アンタはマイペースで余裕持ちすぎですよ!!CM中に寝ますか普通!!」


相変わらず彼は激しい突っ込みをしてくる子だねェ。


「ハーイ、じゃあ次の方どーぞ」

「!!」


少ししてCMが終わり、対決相手が呼ばれ、舞台へ出てきた。


「続いての変てこペットは宇宙生物エリザベスちゃん。

そして、飼い主の宇宙キャプテンカツーラさんです」

「...なにやってんのアイツ?」

「指名手配されてるはずの男が、一発ネタだと思ってた変装までしてテレビに出てきちゃったよ」

「よほどペットが気に入ってるよーですね...」

「ペットもそーだけどあの衣装も気に入ってるアル」


昔からバカだバカだとは思ってたけど...!

本当に捕まりたいのだろうか?あの電波バカの申し子は。

司会と何でもなさそうな風に話している小太郎を見てると、頭が痛くなってくる。

もういっそ一度捕まれ!

トシ達に捕まらないか、卿がいつもハラハラしてる小生がバカみたいだよ!

やり切れない気持ちを抱いていると、司会がこっちを見て、勝つ自信を聞いていた。


「えーあちらの定春ちゃんと対戦し、勝ち残ったほうが決勝へと進めるわけですが、どーですか自信の程は?」

「あんなのタダのデカい犬じゃないですか!ウチの実家の太郎もアレぐらいありますよ。

そして朔夜はあの男ではなく俺の妻です」

「は?」


思わぬ発言にきょとんとなっていると片腕を掴んで引っ張られ、バランスを崩した。


「ふわっ?!」

「!朔夜」


しかしすぐ腹部に、銀時が手を回してきたため倒れるのは避けられた。

だが、なんなんだいこの状況・・・しかもこの体制腰が辛い。

しかも小太郎若干不機嫌だし・・・


「何すんだコラァ、ヅラァ!朔夜は(今日だけだが)俺の妻なんだよ。

それに、てめーのそのペンギンオバケみてーな奴もな、ウチの実家じゃ水道の蛇口ひねったら普通に出てきてたぞ」

「ばれるよ!ばれるウソは止めて!!(つーかホントあの人ら朔夜さん依存症じゃね!?)」

「どうでもいいけど離しておくれよ...(腰に来る!でも力抜いたら腹部が圧迫される!)」


体勢の辛さに、そう告げるが――


「ほら、朔夜が苦しがっているではないか。手を離せ」

「てめーこそ手を離せ。朔夜は俺の嫁だ」

「お前みたいな適当な男に朔夜を娶らせるわけにはいかんな。朔夜は俺とファミリーになるべきだ」

「(どっちともファミリーじゃねーよ!いいから辛いんだよこっちは!!)」

「あ、あの...坂田さん、カツーラさん...朔夜さんとのご関係は一体...(なんだよこの昼ドラ的展開!!)」

「だから俺の花嫁だ」

「いいや俺のファミリーだ」

「(この馬鹿二人ィィ!!そろそろ怒るよこのやろォォ!!)」


完全に司会者勘違いしてるってこれ!!


「え、いや...その一妻多夫的な...?」

「「ちg「そうです!そんな感じです!!それができる星まで行って結婚してきたんです〜(んなわけないだろう!?死にたいか!?)」


だが、この状況の打破のためにはそう言うしかない!!


「そ、そうなんですか〜おモテになるのも大変ですね...(可愛らしい顔してそういう感じなんだ...ギャップすげー...)」

「えぇ、しかも仲が悪くて...だから二人ともそろそろ喧嘩は止めて?」

「「...分かった」」

「良かった...(絶対後で着信履歴見たらすごいことになってるってコレ。最悪だ)」


なんで旨い具合に鉢合わせするかな!?

はぁぁ〜、と今日一番深いため息を吐きだした。

そしてとりあえず場が落ち着き、勝負を始めることになった。

勝負は、司会者が投げたフライドチキンの骨を先に持って帰ってくるというものであった。

因みに小生はさっきの一妻多夫という汚名のショックからまだちょっと抜け切れていない。


「(なんだよ一妻多夫って...どんなだよ...小生がこのバカ男二人たらしこんだみたいだろ...そんな覚えないのに)」

「えーと、ぼちぼちゲームに行きたいんですがよろしいですか」

「「あ、どーぞ」」

「もういいよ...」


あきらめを含みつつ、進行を促す。


「それじゃ行きますよォオ!位置についてェェ...よ〜〜〜い、ど〜〜〜ん!!」


ばっ!!

二匹が飛び出した...が、定春は銀時に喰いついてきた。

...あぁ、負けたかねェこれは。

面倒事残しただけだよ。

そう思いつつエリザベスの方を見やると、ものすごいスピードで骨に向かって走っていた。


「(よくあの体型で...)」


感心していると、ちらっと眼に何か映った気がした。


「?(今何か...)」

「アレ?気のせいか!?一瞬オッサンの足のよーなものが...アッ、また見えた!!」


...ますますもってあのエリザベス...いや、長いからエリーにしよう。

あのエリーは何なのだろう?さらに謎が深まる...

悶々と考察している小生の隣で、小太郎は司会者にオッサンとか言うな、と文句をつけていた。

そして、負けると思った銀時たちの方はというと...


「ホーレホーレほしいかい、コイツが」

「オイオイ、降ろせクソガキ!」


神楽ちゃんに傘で持ち上げられ定春の餌にされていた。

でも銀時を餌に、定春を動かすのはなかなか良い作戦かもしれない。


「いけェェェ!!」


ブォン!!


「「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!」」


思い切り投げられ、エリザベスの背にぶつかった銀時に、司会者と新八君の絶叫のハモリがおこる。


「これは坂田さん!定春君が自分に食らいついてくるのを利用してエサになった!」

「...(いや、正しくはエサにさせられただと思うのだがね...)」


そう思いつつ傍観していると、びゅっと頬に風が走った。


「!」


横を向けば、いたはずの小太郎が居なくなっていた。


「小太郎?!(どこに...!)」


慌てて辺りを見回せば、前方で、エリーの首?を木刀でしめている銀時の首を更にしめていた。

そしてそのさらに上から、小太郎が定春に頭からかまれていた。

それを見た瞬間、小生の目は銀時に勝るとも劣らずなくらいに死んでいたと思う。


「...(あいっかわらず...真正バカ)」


まぁ――それも含めて、特別な存在たちといえばそれで終わりだがね...

司会者が放送できないと騒ぎ立てる中、小生は

もうバカな馴染みの男たちの面倒をみる気にもなれず、舞台裏へ勝手に引き上げた。

そしてそこでマナーモードにしていた携帯を開けば

一種の恐怖を覚えるほどの量の着信履歴と留守電が、びっっっっしりと入っていた。

......この掛けてきた人間全部に一妻多夫結婚の事実を訂正するのに、どれだけかかるだろうか...

気が遠くなりつつも、諦めて履歴の一番上から電話をかけ始めた小生なのであった。


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