銀魂連載 | ナノ
第百二十九訓 夏休みは始まる前が一番楽しい。いざ始まると暇だもんね




「(海か...水辺はあんまり好きじゃないんだけど)」

「マミー何してるアルか!一緒に見回りに行くアルヨ!」

「あ、うん。わかったよ」


さんさんと太陽が照りつける真夏の日差しの中

小生は万事屋の皆と、依頼された海の監視員の仕事に来ていた。


「(まぁ水に入らなければいいかな。銀時もいるし...)」


***


「神楽ちゃああああん何やってんのォォォ!!##NAME1##さんも止めてくださいよ!!」


しばらくすると亀の甲羅のようなものをつけた中年の男が、ビデオカメラ片手に女の子たちをつけまわしてるのを見回り中に見つけ

神楽が成敗しようと腿パンをくらわせていると新八君と銀時がやってきた。

亀をいじめたらダメだと焦る新八君に小生達はただ、この男がビデオカメラ片手に女の子を撮っていたから成敗していただけだと伝える。


「...だから小生達は悪くないんだよ」

「撮ってないスよ。ホントいいがかりはやめてくんないスか。迷惑なんスけど」

「(こいつ...)わかった。じゃあカメラの中チェックさせてよ」


小生が詰め寄ると嫌だという男から、銀時が隙を見てカメラを奪い中身を見ると、中には女の子達が映っていた。


「いや違うんですよそれ違うんスよ」


訳の分からない言い訳を言おうとする男を、神楽が顔面に蹴りを入れて沈めたので、男を引きずり、

警備隊のテントへ連れて行って事情を聴く事にした。


***


「あのォ...すいません。家族に言うのだけは勘弁してもらえないスか。もうすぐ嫁さん産卵なんですよ。デリケートな時期なんです」

「「そりゃ泣きながら卵産むことになるね」」


土下座する男に銀時と共に冷たく言い放つ。


「いやホント、マジですいませんって、もうホントやらないんで。ホントッ昆布に誓います!!マジで!!」

「何その誓い方?亀の世界で流行ってんの?」

「こんな事でもしお腹の卵に何かあったら『昆布の川流れ』スわ」

「亀のことわざって全部昆布と絡める感じみたいだね...」


すると新八君が、男の荷物から船舶免許を見つけた。ますます小生の中で、男が亀じゃなくなっていく。


「住所どこなの?」

「えー、竜宮城三丁目2の5の3、メゾンコンブ305号室...」

「...竜宮城?」


引っかかる単語に、思わず繰り返すと、新八君と銀時が食い付いてきた。


「竜宮城って竜宮城に住んでんの!?」

「あ...ハイ。実は俺竜宮城の案内人(ガイド)やってんスけど...」

「マジでかァァァ!!え?あんの?竜宮城マジであんの!?」

「え?ありますけど普通に」


こうして小生達は、警察に言わない代わりに竜宮城へ連れて行ってもらうことにした。

そして、神楽ちゃんが浦島太郎の替え歌を謳う中、亀男の漕ぐお粗末な木のボートで竜宮城に向かう。

小生は海を見たくなくて銀時にくっついていることにしたが。


「...しかし、ほんとうに竜宮城があったなんて...浦島太郎もいたのかい?」

「えぇ、僕はしらないスけど、初代の亀が連れて来た最初のお客さんが浦島さんとかで、

以来、僕らはお客さんのことは皆『浦島さん』と呼ぶんス」

「ふぅん...」


すぐ近くにある水が気になって仕方なく、スゴイと思うのに生返事になる。

すると銀時がそんな小生の心情に気づいたのか、自分の方にさりげなく抱き寄せて、亀男に話しかけた。


「どーでもいいけど、さっきからお客さんお客さんって、まさか金とるつもりじゃねーだろうな」

「滅相もないっス!!」


竜宮城は確かに普段は選ばれたセレブしか入れない場所だが、亀という生き物仁義を通す生き物らしく

恩を受けたらきっちり返すのが海の掟らしいので連れて行ってくれるらしい。


「皆さんには今回は特別...ドリンク飲み放題サービス券を...」

「「タダにしろよ!!」」


銀時と神楽の拳と蹴りが男の顔面に決まる。


「わかりました。今回は特別...ポイントカードにスタンプが2倍つきます」

「「タダにしろよ!!」」


再び二人の拳と蹴りが決まる。


「わかりました、ローションつけます!!」

「「「何の店だよ」」」


最後のセリフには小生まで思わず突っ込んでしまった。


「それはそうと...いつになったらつくんだい?もう水の上は嫌だよ...船舶免許あるならもっと早い船運転できるでしょ?」

「以前イルカと人身事故起こして今裁判中なんスよ」

「アンタ前科何犯!?」

「オイオイ勘弁してくれよ。これじゃあ玉手箱開ける前にじーさんになっちまうぜ」


そんな風に話していると、クルーザーが水上を走って隣にきた。

その船には妙ちゃんと、九兵衛ちゃんが乗っていた。


「なんで海に...」


問いかけようとした時、超黒光りした甲羅を着た男がカジキマグロを片手に船から出てきた。


「(あれもこの亀男と同種なのか?)」

「実は彼の娘が悪い漢にひっかかっている所を偶然助けてな。いいと言っているのに、竜宮城に招待すると言ってきかんのだ」

「そろそろ出るよ。竜宮城この時期混むから、急がないと」

「ああ、ハイ」


そしてクルーザーは行ってしまった。

銀時が、この差はなんだと此方の亀男に掴みかかるが、新八君に混むなら早くいかないとと促され

二人でオールを思い切り漕ぎだした。


「(揺れる...!)」


震えが伝わらないようにしながらぎゅっと銀時にしがみついた時、ボートの真下の海の中から戦艦が出てきた。

酷い揺れに目を細めながら、戦艦を見ると、長谷川さんと艦長のような超強面なゴツイ亀が甲板にいた。


「長谷川さん!?」

「オイなんだよあの亀ェェ!!絶対誰にもいじめられねーよあんな亀!!」


すると長谷川さんが話しかけてきた。話によると、身投げしようとしていた所を

その艦長みたいな亀に助けられて、竜宮城に行くことになったらしい。

すると今度は上空に巨大スッポンが現れた。


「...(全部夢なんだろうか)」


現実とは到底思えないことばかりに、つい遠い目になりながらスッポンをみる

そこには小太郎と、何故か桃太郎とお供の動物たちがいた。


「昔話間違ってんですけど」

「...カオスか...」

「銀時ィ、朔夜、こんな所で会うとは奇遇だな。俺はきび団子をいただいた礼に、これから天竺にむかうところでな」

「どこの国の昔話ィィィィィ!?」

「(もうそのまま帰ってこなくていいよ...)」


頭が痛くなってきてそう思った時、戦艦がスッポンに大砲を撃ち込んだ。

それを皮切りに、すっぽんと戦艦、そして舞い戻ってきたクルーザーが戦いを始めた。

それから逃れるために、小生達はボートを必死に漕ぐ。


「なんで...竜宮城に...来た...のに、こんな目に...」


瞬間ボートを爆撃されて、海へと身を投げ出される。


「あわなきゃいけないんだァァァ!!」

「いやぁぁあ!!!」


冷たい水に身体がのみ込まれる感覚に、悲鳴を上げ、もがいたが、それは無意味に終わった。


〜Next〜

prev next