第百二十五訓 大切なものは見えにくい。だけど見ないとなくしてしまう
刀、木刀、メス...3人分の得物の交わる音が響く。
「っはぁ...!万斉さっさとそこを通してッ!!」
「てめーはそこどけっつってんのがわかんねーのか!!」
早く早く、列車のところに行かねばならないのに、徐々に近づくも中々万斉を退かせる事が出来ず
徐々に焦りがうまれてくる。
こんなことではいけないのにと首を振って、焦りをけしながら、銀時と二人で隙を作ろうと戦う。
「てめー見てーなタコ助に構ってる暇はねーんだよ!!」
銀時が大きく木刀を薙いだ瞬間、万斉が大きく飛びのいた。
「!」
「朔夜っ!!」
「っ分かってる!!
銀時の声を聞くよりも早く、カーラスに背中を掴ませ、羽根を広げさせて列車に向かい飛ぼうとする。
しかし大地を蹴ろうとした瞬間、隣で走ろうとしていた銀時に横に押された。
ぎりぎりで飛んだために、倒れる事は無かったがふらついた。
「っ銀時!?」
見れば、銀時の身体には細いワイヤーのようなものが絡みついている。
「捕らえそこなったか...」
「これは...」
「弦!?」
「無理はせぬがいい。手足がちぎれるでござるぞ。朔夜も、この男の手足が無事であってほしいなら動くな」
「!っ...」
その言葉に、宙に浮いたままそこにとどまる。
「ぬしらはまだ仲間が生きていると?たとえ、あの爆発の中を生き残っていようと、策は幾重にも弄してあるでござる」
真選組は消える。
その言葉に小生は、万斉に背を向けた。
「!動くなと...」
「万斉、そんな言葉は小生たちには無意味だ――銀時」
「――っあぁ、無茶すんな」
「そっちこそ、すぐきなよ」
カーラスのまっ黒の羽根を羽ばたかせ、大地を跳ね跳び、列車に向かう。
「(まだ大丈夫...!はやく、行かなきゃ!)」
***
ボロボロの列車の入口までたどり着いてカーラスを肩に戻した時、ヘリが列車の横につけてくるのが見えた。
ヘリの扉の所には連発式銃を持つ男がいた。
それを見て、瞬間的に次に起こる出来事がわかり、慌てて中に駆け込む。
「!朔...」
「皆伏せてッ!!」
既に伏せだしていた皆の前に躍り出て、両手を広げ立ち、震える足を無視して、死を覚悟して目を瞑った瞬間
身体を包んだ温もりと、耳をつんざくような連続した射撃音。
しばらくして、その音と衝撃がやむ。
「あ、れ...(死んで、ない...?)」
痛みすらないことに驚きながら、おそるおそる目を開けると、視界は黒。
「え...」
「無事、かい...?」
上からかかった声にゆっくりと視線をあげれば、片腕で小生を庇うように抱きしめて小生に微笑む血まみれの鴨。
「...な、なんで...?」
「先生ェェェェェェ!!」
ゲホォッ、と血を吐いて小生の目の前でがくりと膝から崩れ落ちる鴨を周りが騒ぐ中、理解できず茫然と見つめた。
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