第百十六訓 人生もゲームもバグだらけ。何事もバグがあってこそ
「あー...コーヒーおいしかった」
マックでブレイクタイムを終えて戻ってきた。
そろそろ終わった頃かなと、店内を覗けば、中は、あちこちに人が倒れていて殺戮の舞台となっていた。
「!?なっ...何してんのォォォォ!!!!!??」
「「「「え?」」」」
***
「...で、ゲームであんなことになっちゃったわけ?」
「「「「「「「「...うん」」」」」」」」
「はぁ...(珈琲飲みに行ってるたったそれだけのあいだに何故...)」
変なグラサンみたいなのをかけた4人を気づかせ、殴られていた他4人をひきずり、なんとか店内をでて、事情を聴いたところ
ゲームを手に入れるために勝負を初めて、白熱して気づいたらあんなことになっていたらしい。
「...どちらにせよOweeeはまた発売延期か中止になりそうだね...やれやれ」
なんだったんだあの並んでた時間...脱力感にみまわれつつ
ここにいてもアレだし、解散しようと、帰ろうとした時、がしりとトシに腕を掴まれた。
「!」
「...朔夜、話がある。ちょっとこい」
「...銀時、先二人連れて帰っといて」
「え、だがよ...」
「いいから。あ、帰ったら年越しそばゆでるから先戻って準備しといてよ」
へらりと笑って銀時にそう言うと銀時は渋々と言った様子ながらも頷いてくれた。
「...それじゃ、ちょっと公園でも行こうか」
「...あぁ」
いつも通りに笑いかけると、短い返事が帰って来たので二人で近くの公園に向かう。
「...で、何かな?」
「それ、やめろ」
「え?」
「...何もなかったみてーな態度、とんな」
軋むような歪な感覚を無視し、にこにこと平常を装って笑って話しかけると、思いつめたような声で言われ、瞠目した。
「...俺は言ったはずだ。俺の気持ちは嘘じゃねーと...全部、本当だってよ...」
「...だったら...」
「あ...?」
「だったら、どうしてほしいっていうんだい?」
こっちはトシを見る度に感じる妙な胸の軋みが辛いから、忘れたくて平静を装って笑ってるのに
「...小生に、気にしてる風に避けて欲しいの?」
「!別にんなこといってねーだろ」
「じゃあどういうこと?」
気づいてはいけないと脳が警告音を発している。
「ただ...俺の言った事をなかったことにするなってことだ...!」
「!...忘れさせてよ...(ミツバに、なんて言えばいいの)」
「朔夜...」
ミツバは一緒だった時間は短くても、大切な小生の数少ない女友達。
彼女の最後の言葉...彼女は最後まで、卿を愛してた...変わらずに。
なのにどうしてその彼女の葬儀の日に、彼女の愛した男(ヒト)の告白を、まともに聞き入れられる?
そこまで小生は、図太い女にはなれやしない。
それに、愛していた女を失ったばかりの悲しみに暮れた男の告白を、まともに受け入れろっていうの?
それに小生は、追いかけ続けてる人がいる...立ち止まれない。
「...無茶ばかり、言わないで...それに小生は、トシと付き合う気なんて...」
「...わかった」
「!」
「だが俺はお前のこと、諦めるつもりなんてねェから...だから、俺の気持ちだけは忘れんじゃねェ」
「っ...わかった...なかったことにはしない...これでいい?」
「あぁ...今はそれでいい」
少しだけ満足そうに笑ったトシに、また胸がずきりとした気がしたが
なんでもないということにし、トシと別れ、家路へと急いだのだった。
...また変わらない日々が始まると思っていた。影では、すでに何かが動き出していた事を知らずに...
〜Next〜
prev next