銀魂連載 | ナノ
第百十五訓 ゲームはほどほどにしないときっと後悔するよ




もくもく


「はふぅ...寒いねェ」

「...あの、焚きとかそういうのはご遠慮願えますか。他のお客様の、ゲホッゴホッ」


明日には来年という中、小生は何故か、万事屋と電気屋の列に並んで...焚火をしていた。


「寒いんス。暖をとるくらい勘弁してもらえないかね」

「いや暖って...」

「焚き火くらい可愛いものじゃないか」

「いやもう、ちょっとしたボヤ騒ぎみたいになってるし、ゲホッ、みんな並んでるわけですから」


えー、と言ってると、隣でオンジのひげをつけた銀時が、焼いていたハイジパンを神楽に渡した。


「よーし焼けたぞ神楽」

「いや焼けたぞじゃなくて、きいてますか人の話...つーか無駄にうまそッ!!ハイジ!?ハイジが食ってた奴!?」


そして列に並ぶ者たちに見せつけるように二人がハイジパンをいかにも美味しそうに食べる。

それを、列の一部の者たちが羨ましそうに食べたそうに見てきた。

気づいた神楽が、ペーターたちにも分けてあげようと言ったが、銀時が止める。


「何かを得るにはそれ相応の代償が必要なんだよ。例えばそうだね、彼らが並ぶ順番を交代してくれるとか。勿論前の人限定だが」


そしてトロォォとさらに美味しそうにチーズを引き延ばす。


「うおおおお腹立つ!!腹立つけど超うまそう!!」


ついに列の前の客たちが空腹に耐えられず、自分と代わってくれと押し寄せてきて、勝手に乱闘が始まった。

それを尻目に、小生達は空いた前の列へ行く。


「ふっ...狙い通りだね」

「ちょろいもんよ」

「これで二十番くらい前に進みましたか。でもまだまだ先は遠いですね」


新八君の台詞を聞いて、銀時がつけ髭をうんざりした顔をする。


「ったく、何が悲しくて大晦日にガキの玩具買いに並ばなきゃならねーんだ」

「みんなそう思ってるからお仕事来たんでしょ...5件も依頼きたんだからゲーム機5台手に入れなきゃ」


まぁ、この状態じゃかなり難しそうだけど、とぼやくと神楽がもう楽しむしかないという。


「神社で並ぶか、ゲームで並ぶかの違いアル」

「世も末だぜ、こんな年越しする奴がこれほどいようとは」

「ほんと世の中どうなってんだか...壊そうとする小太郎の気持ちも少しはわかるよ」

「あの、お侍様申し訳ございません」


ため息をついていると列の前の方から、店員が誰かを注意しているのが聞こえてきた。

見てみると、そこにはまさに噂をすれば影。小太郎がエリーとこたつに入っていた。


「すいません、ちょっと待ってください。エリザベスがまだ食べてるんで」

「それでしたら列を離れてむこうの方で」


店員がガタガタとこたつを動かそうとするのを小太郎が止める。


「ちょっと待ってください。スグ...」

「いやちょっ...」

「いやエリ...」

「いえちょっ...」

「ちょっエリ...エリザベスがまだ食べてるでしょぉーがァ!!」


その瞬間、こたつごと小太郎を万事屋3人が蹴り飛ばした。

しかし、もうなんか、共感したのがアホらしくなったので無視をし、3人に倣い、普通に小太郎の並んでいた場所をとる。


「やりましたね。これでまた十番位前に進みましたよ。まだまだ先は遠いアルナ」


するとこたつの上に乗っていた鍋を被った姿で、小太郎が咎めてきた。


「武士ともあろう者が横入りとは、銀時、貴様もおちたな。朔夜も銀時の側にいるからそのように堕落を...」

「「うるさいよ。光の速さで地上に落下してる奴に言われたくねーよ/ないよ」」

「こっちは昨日の早朝4時から並んでるんだ。邪魔するとあらばお前でも斬るぞ、銀時。それに朔夜も邪魔立てするな」

「国の夜明けはどうしたのさ。革命家が流行に乗ってゲーム買いに並びに来てるってどういうことよ」


国の行く末を見守る側としてはほんと心配だよ。


「世の中の流れがどこに向かっているのか、革命家(オレたち)はしる必要がある。たとえファミコンのことでもだ」

「古いよ!!ゲームをまだファミコン言ってる時点でついていけてないよ!!」

「なんでも今度のファミコンはすごいらしいな。ファミコンとディスクシステムが一体化した、ツインファミコンとかいう...」

「「お前ホントにファミコン買いに来たんかいィィィ!!」」


もう古風とかかっこいいのじゃなく、ただの時代遅れの幼馴染に、銀時とハモリ突っ込みをかます。


「何のために並んでんだオメーは!!そういう列じゃねーよこの列は!!」

「というかないよそんな列!!売ってないよそんなのもう!中古屋にも本体あるかないかだよ!?」

「なんだと、マリオと再び会えると思ったのにその道は閉ざされたか」

「「再びどころか何十回もよみがえってるよあのオッサン/おじさん!」」


どうしてそんな時代において行かれてるの!?同じ年代を生きてきたよね!?


「そうか...あのコンプレックスの塊の弟の方も健在なのか?」

「いやな事いうんじゃねーよ!お前にルイージの何がわかるんだよ!!」

「ルイージに失礼だよ!」


久々に小太郎のボケに思い切りつっこんで落ち着いてから話を戻す。


「大体お前変装もせずノコノコ来やがって、指名手配犯だっつーのを忘れたか」

「いつ捕縛報道が流れるか心配してるこっちの身にもなってくれる?」

「フン、年末にこんな所にいるヒマな警察などおるまい」

「ヒマな革命家はいるんですね」

「(よく考えたら半ニートだわ)」


鋭い新八君の指摘に、幼馴染の行く末が心配になった。

その時――


「申し訳ありませんお客様」


また前列の方から店員が注意する声が聞こえてきた。

今度は誰が...とそちらを見れば、そこにはどこから持ってきたのか

釜風呂に入っている総悟君と、頭を洗っている近藤の旦那がいた。


「なんだコラ、こっちは徹夜で並んでんだ。風呂くらい入りたいだろ」

「やめろ総悟。すいませんスグ終わりますんで。まだあそこ洗ってないんで」

「いやもう警察呼びますよ」


そう言いながら店員が風呂をどかそうとするのを近藤の旦那が立ち上がって止める。


「いや僕ら警察なんで」

「いやちょっ」

「いや警...」

「いやちょっ」

「ちょ...ちょ...ちょ、まだあそこ洗ってないでしょぉーがァァ!!」


瞬間、トシが釜風呂ごと二人を蹴り飛ばした。

この前の事もあり、一瞬トシに目が行くが、すぐにゴロゴロと

二人が無様に横を転がっていくのに視線がいった。


「だからどこの国から?」

「とりあえずこの国はもう終わりだと思う。(小生なんでこの国見守ってるんだろう)」

「チッ...真選組の連中とこんな所で出くわすとは」

「バカ達による奇跡的な競演ですよ」

「間違いないね」


頭痛がしてきた頭を押さえ、新八君の言葉に返しているとトシと、目が合った。

その目に、この前の告白された事が蘇り、胸が軋むような僅かな痛みを感じた。


「っ...(なんだろう...まだ気にしてるなんて...らしくない)」


あれは、トシの気の迷い。

ミツバという長年の大切な存在を失って、トシは動揺していただけ。

告白なんて、聞かなかった事にしたじゃないか。


「(普通に、普通に...今まで通りに接しよう。だってトシは友達よ、仲間なの。それ以上になんて、思えない)」


それでいい。完璧だ。

そう決意を固める。

銀時達が小太郎をこたつの中に押し込み隠し、小生もこたつに入った時、近づいてきたトシが声をかけてきた。


「てめーらこんな所で何してやがる」

「そのセリフそのままバットで打ち返してやるよ」

「そのセリフをさらにバットで打ち返してやるよ」

「そのセリフを......」

「もういいよしつこいよ」


プチコントを繰り広げていると、そこに湯冷めしたらしい近藤の旦那と総悟君が走ってきてこたつに入ってきた。

中の小太郎は大丈夫かな...と考えていると、近藤の旦那が話しかけてきた。


「何何?お前らもひょっとしてゲーム買いにきたわけ?ププ〜〜〜年末なのにヒマな奴ら〜〜」

「近藤さん、そのセリフは全て俺達にも降りかかってくるんでやめてくだせェ」


こっちは仕事だよ、やれやれと思っていたが、近藤の旦那が残念でしたと言い出し、訝しげに耳をかたむければ

この店の機体の在庫は108台らしくトシのいたところくらいで切れるという。


「(あれ、でもトシここに...)」

「残念ながらお前たちの所まで行き届きましぇ〜ん。ブハハハハ悪いな。こっちは今日の朝から並んでるんだ、なァトシ!!」

「......アレ?なんで.........ここにいるんだトシ」

「寒いから」

「寒いからじゃねーよ!!なんで順番確保してくれてねーんだよ!!おいィィィィィ朝から並んでたのパーだろうがァァ!!」


叫びを聞いているとどうやら近藤の旦那は妙ちゃんに恐喝されて買いに来ていたらしかった。

「(妙ちゃん...)」

「近藤さん、心配いらねェ。俺の代わりに山崎が並んでるはず...」

「土方さん、山崎ならあそこでカバディやってますぜ」

「山崎ィィィィィィィ!!」

「(あらあら...)」


バカしかいないんだけど、と思っていると店のシャッターが開く音がし、店員が開店を告げた瞬間、小生以外の万事屋と真選組が

獲物を狩りに行くかの如く店へ特攻をかけ、列に並んでいた者たちも飛び込み、乱闘が始まったのを見て、ため息を吐きだした。


「...はぁ、小太郎も行くなら気をつけなよ?小生は近くのマッ●にでもいってコーヒー飲んでるよ」

「む、わかった。ではな」


あそこまで付き合いきれないと小生はこたつから出て、その場を一度離れる事にした。


〜Next〜

prev next