銀魂連載 | ナノ
第百十三訓 誰々のためにとか言う奴は、大抵自分のためだったりする。人は利己的な動物だから



ガシャッ


「無事か朔夜!」

「平気、ありがとね。助かった」


飛び降りてきた二人は、まず飛びかかってきた機械家政婦を片付けた。

そしてたまが林博士を相手取っている間に、銀時が小生と新八君の手枷を外してくれた。

枷が外れると銀時が、鉄の棒を投げ渡してきた。


「!…これ小生の采配!」

「おう、路地にあったの拾っといたぜ」

「!ありがとう銀時!」

「いつもなら、下がれって言うとこだが…機械に関しちゃ、お前の方が遥かに知識あるしな…いけっか朔夜?」

「ふっ…誰にそんなこと聞いてんだい?」


拘束は飽き飽き、丁度暴れたかった所さ。

采配を組み立て、構える。


「へっ、それでこそお前だよ…そんじゃぶっ潰しに行こうぜ」

「ふふっ、喜んで」


片手の拳をコツンと合わせて、林博士にやられそうなたまのもとへ、銀時と一斉に走り出した。

いち早く二人の元にたどり着いた銀時が、たまの頭を掴んでいた林博士の腕を木刀で斬り飛ばす。

それを見つつ気絶したたまを、新八君と共に受け止める。


「よォ、お父さんよォ」

「反抗期じゃないよ、子離れの時期さ」

「いつまでも一緒にお風呂入れると思うなよ!!」


そう言うが早いか、銀時は林博士の頭を吹っ飛ばした。

やったと思ったが、一瞬にして違和感が襲ってきた。


「残念だったな、私の中枢は頭部には無い」

「(中枢がない!?)っやばい!離れて銀時!!」

「遅い」


形態を変えた残った腕の方で、銀時の顎に一撃決めふっ飛ばし、腹部を貫いて、壁へと叩きつけた。


「銀時ッ!!」「銀さんんん!!」

「銀時を離せッ!!」


新八君にたまを任せ、采配のスタンガンのスイッチを押しつつ、懐へと走り込む。


「機械なら電気食らったらショートくらいするでしょ...ッ!!」

「ぐっ...邪魔だ!」


高圧の電気を纏った采配で殴りつけた瞬間、片方の腕が首に巻きついてきた。


「が、っ...!!(やばい死ぬかも...!)」

「!ッ朔夜...!!」「朔夜さァァん!!」


首を掴まれたまま宙ぶらりんにされ、冷静にそんな事を考えいると、博士が語り出した。


「他の機械と一緒にしてもらっては困る。この核が無事であれば、どんなに破壊されても私は修復される」

「!...」

「私は中枢電脳幹によって動いているわけではない。微小なマイクロチップによって制御されている」

「!っ...まぃ、くろ...(盲点だった!)」

「さらに悪い情報を教えてやろうか。私の核は1ミクロンにも満たない、細胞レベルの超精密機器だ」

「(やばい...こんな状況なのに、すごい気になるそれ)」


あぁ、科学者の悪い癖だな。だが、それにしても――


「「1ミクロン。ずいぶんとせこい/ちっぽけな魂だ」」


同じ事を考えていたのか銀時と言葉が重なり、銀時は再び刺し直され、小生は首を更に強く絞められる。


「あ、ぎっ...(息が...!)」


意識が飛びそうになっているところに新八君がモップを手にして助けようと走って来てくれた。

だが、途中でたまに阻まれ、蹴り飛ばされる。

そのために新八君は床の端の方にまで吹き飛ばされ、手を離せば今にも落ちそうな状態になってしまった。


「た...たまさん」

「っ...た、ま...!」

「反抗期をむかえようと、最後に子は親の下へ帰ってくる。零號機がこれだけの感情をもつに至ったのは、お前たちとの接触が大きかったようだが

私に仕えるという存在意義そのものに逆らうような事は、考えられない一時的なバグ。私が手を施せばスグに戻る」


そして、たまに存在意義すらゆるがせる感情を抱かせた小生達を危険因子とし、たまに命令を出した。


「芙蓉、お前自身の手で始末するのだ」

「!...(娘と呼びながら...!)」

「......了解しました」


モップを手にしたたまが、床板にぶら下がっている新八君に近づく。


「し...新八...」

「っし、ぱち...く...」


首を掴まれ、高々とぶら下げられたまま、新八君の名を呼ぶが、むなしくも、たまによって新八君は落とされた。

それを見て新八君の名を銀時が叫ぶが、まったく意に介さず林博士は銀時と小生を見てきた。


「次はお前たちだ。何か言い残す事はあるか」


言葉を聞きながら、周りに集まってきた機械家政婦達に目をやれば、一瞬瞠目して、次に思わず、そういうことかと笑いがこぼれた。


「クククク」「ふふっ...」

「...娘に人殺めさせるたァね。何でも思い通りになる娘。結局アンタがほしかったのはそいつかィ。お父さんよ」

「自分を...一人ぼっちに、しないで...ずっと、一緒にいてくれる娘...そん、なの...娘、じゃない...めい、ど、だっ!」


言う事をきかなくたって、それでも愛して

側にいれなくなっても、思い合って信じあう

我儘や迷惑すらも、なんだか可愛くって

見えなくても深い深い絆がある。

それが――


"「おとーさん、しょーせいがむすめになって...めーわくじゃない...?」

「迷惑なんて一つもありませんよ。親子なんですから...お互い迷惑をかけ合って我儘を言っていいんですよ」

「!っうん...!!」"


ホントの意味で、父娘でしょう――?

思い出した淡い笑顔を頭に浮かべながら、薄れゆく意識をつなぎとめ、目の前の博士に挑発的に笑みを向けてやる。

すると銀時の声が耳に届いた。


「そんなに思い通りの女がほしいなら、くれてやるぜ。ただし、ちとゴツイか」

「「「「「ご主人様ァァ〜」」」」」


背後からの声に林博士が驚いて振り向いた。

そこにいた平賀の旦那のメイド服を着た機械達に、目を見開いた。

そこに機械の乗り物に乗った平賀の旦那が現れた。


「野郎共ォォ!!男の機械って奴を見せてやれェェ!!撃てェェェェ!!」


林博士に機械達が撃ち込んだ。その衝撃で、小生と銀時を殺そうとしてた腕が離れる。

急に広がった器官に空気が入り、思わず咳込む。


「げほっ...」


痛む喉を押さえながら、辺りを見れば銀時は平賀の旦那の機械に乗った新八君に捕まえられていた。


「ほっ...(ってそうだ!林博士の方は...!)」


銃撃に当たらないよう伏せて見れば、たまが林博士を後ろから押さえていた。


「芙蓉ォォォ何故だァァァ!!離せ!離すのだ!何故お前が...」

「残念ながらききいれられません。私のマスターはあなたじゃない。あの方達です」

「!!まさかお前、私に従うフリをし仲間を...バカな!そこまでの感情を奴等に!離せ!離すのだ!この程度の砲撃で私が破壊されると...その前にお前が...」

「護るべきものを護れず生き残っても、死ぬんです」

「!(たま...)」

「一旦護ると決めたものは...何が何でも護り通す。博士、貴方のデータにはありますか?そんな生き方が」

「何を...」


瞬間、遮るような打撃音――銀時が木刀を林博士の頭を貫き、エネルギー体の入っている場所に突き刺した音だった。

それを見て小生も立ち上がり采配を構える。


「無駄だと言ったはずだ!!マイクロチップを破壊しない限り、私は何度でもよみがえ...」


ガンッ


「!!」

「くどいね。二度も口上を聞く気はないよ」

「!朔夜...」


銀時が更に踏み込んでエネルギーを収監しているガラスにひびを入れた瞬間、小生も采配を林博士に突き刺す。


「その身体のマイクロチップ、科学者として称賛をお返しするよ。しかしながら、残しておく訳にはいかないのでね、魂がとりついたお人形には大人しくこの世からご退場願おうか」

「江戸中のエネルギーが集束したこの光の束にブチこまれちゃ、てめーのせこい魂も塵芥だろ」

「「冥土でメイドと乳こねくりあってろエロジジイぃぃぃ!!」」


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