銀魂連載 | ナノ
第百十二訓 洋楽はみんなうろ覚え。いや全員が全員そうじゃないから




「...こんな事をして、娘さんが甦るとでも本気で信じてるってのかい?科学者のくせに随分ナンセンスだね」

「...――研究を続けるうち、私は知った」


ターミナルを占拠し、江戸のエネルギー源と回線をジャックし、銀時達に種子を持ってくるように小生達を餌に脅した彼は

機械家政婦達に小生達を拘束させたまま、エネルギーを制御する機械をいじりながら

小生の問いかけに答えを返すように、話しだした。


「芙蓉プロジェクトは......娘を甦らせる事は不可能であると」

「!」

「一人の人間の人生の記憶を...さらには人格までを機械にコピーするなど、そんな膨大なデータを完全に機械と結合させるなど不可能だ。

現に最も完成に近いとされたこの林博士の人格データを引き継いだ伍丸弐號もバグを起こし、完全とは程遠い」


自分自身もまた、機械に侵食され人格が崩壊しつつあるらしい。


「...なら、何故続けるんだい?不可能とわかっているのに」

「...研究の中で、一つの可能性が生まれた」

「可能性...?」

「芙蓉プロジェクト最初の娘。全ての芙蓉の器の雛形といわれる、零號の中に」

「(たまか...)」


たまは元々その芙蓉の守役の機械で、芙蓉が死んでからは助手にしていたらしく、金庫がわりに人格データをいれていたらしい。


「後に開発した機械達に比べ遥かに劣る性能のアレに種子の発芽など期待してはいなかった。だが...」

「種子は零號...いや、たまの中で発芽し...感情が芽生えだしたのだね」

「...お前はどうやら凡人より理解が早いらしい」

「ふっ...これでも天才科学者なもんでね」


だからこそ科学の禁忌を犯す卿を許すわけにはいかない。


「...だがわかるはずだ。お前には、娘をこの手に取り戻したい私の気持ちが」


こちらを無機質な目で見てくる博士を見つめ返す。


「――分からないとはいわないさ。でも小生は、そんなことやったりしない」


そんなことをしたら、大切な人は笑ってくれないよ。


「...お前はそれが可能な知能があるのに、利口じゃないな」

「...何が本当に利口な選択なのかね...(馬鹿な男だね。父親がそんなことして喜ぶ娘がいるかい。それに...)」

「(朔夜さん...?)」

「アレは芙蓉の子だ。いや、生まれ変わりといってもいいのかもしれん。...戻ってくる、ようやく私の下に...もう二度と離しはしない。さびしい思いはさせない。

もうじき世界は、お前の大好きだった機械(ともだち)しかいなくなる。お前のために私がこの国を...」

「そいつは違うだろ」

「!(この声は...!)」


無条件に安心を覚える声に上を見上げれば、そこには思った通り銀時、そして顔こそ違うが雰囲気で分かる、たまがいた。


「娘のためなんかじゃねェ。娘生き返らそうとしたのも、こんなバカ騒ぎ起こしてんのも、全部自分(てめー)のためさ。

さびしかったのは、テメーだろ流山」

「銀時!」「銀さん!」

「芙蓉...待ち侘びたぞ芙蓉。さあ...私の下へ」


しかし、たまは動かない。それを見て林博士が再び呼びかける。


「どうした?私の命令がきけぬというのか零號...」


すると黙っていたたまが、彼を見て人物照合をし始め、林博士を主人ではないと拒絶した。

動揺する林博士にたたみかけるように、二人は飛び降りてきた。


「林博士の命により、今よりあなたを破壊します伍丸弐號!!」


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