第百九訓 人生にセーブポイントはない。リセットもない
驚いてニュースを見つめる。
「本当に...この機械(からくり)が殺人を...?」
「ま、間違いないですよ。この殺人の容疑をかけられてる機械って...このタマさんですよ!!首だけになってるけど」
「でもこの殺された林博士はこの機械(からくり)の生みの親なんだよ?それを殺すなんて...」
「なら...自分の生みの親を殺して、ここへ逃げてきた?」
一拍置いて、3人がこのポンコツにそんなミステリアスな事件起こせるかよと吹き出し、一気に緊張感が消えた。
「こいつぁ機械だぜ?同じ型同じ顔の奴だっているだろう。大体首しかねーってのに、どうやって殺人なんてできるってんだ?」
「逃亡中に何者かに破壊され、首だけになった可能性があります」
「「「「!」」」」
今まで電源が切れたままだった話題の本人のが急に口を開いた。
「残念ながら首一つになる前の記憶の大半は消失しましたが、TVで発表された、伊―零號という型番は私のそれと同じです。耳の裏に書いてあるはずですから、確認してください」
「復活の呪文もなしに復活した」
「先程は申し訳ございません。初期不良を起こしていたようです。今回復しました」
あぁ、じゃあやっぱり壊れてたわけじゃなかったのか。良かった。
そう思いつつ、銀時と問いかける。
「んで、色々理屈ごねてたが、要するにオメーは自分が犯人だっていいたいのか?」
「いいえ、肝心の記憶がありませんので、私は私のデータにもとづいた意見を述べたままです」
「てめーの考えはいいんだよ。俺ぁ殺ったのか殺ってねーのかきいてんだ」
「ちょっと残ったデータを探ってみてはどうだい?もしかしたら欠片でも残ってるかもしれないし」
「そうだ。最初からねーと決めつけて探すから見つからねーんだよ。意外と近くにあるもんだよ」
「了解。検索中」
しかし目的の記憶は見つからず、なぜかデータの中から『うまのふん』を見つけて来たらしかった。
やはりまだどこか不調のようだ。
「申し訳ありません。この近隣に機械技師はいらっしゃいますか?」
「あん!?」
「もしもの時のために予備の記憶領域があるのですが厳重にロックされていて...これが開けられれば記憶もよみがえるのですが...」
「...なんだかよくわかんねーな。朔夜、お前じゃ直せねーのか?」
「貴女も機械技師なので?」
「まぁね。でも道具がないから...もう一度平賀の旦那のとこに行くしかないかな」
「.........」
「...新八君?どうかしたかい?」
小生達が話す中、新八君だけは心配そうな顔をしていた。
「......記憶とり戻して、ホントに殺人犯してたらどうするんです」
「!...早々と決めつけないの」
「......そうだよ。まだわかんねー...」
ピンポーン
「「!」」
部屋に響くインターホンの音に、思わず玄関を見る。
「すいませーん。奉行所の者ですが〜」
その言葉に全員で凍りつく。
「ちょっと捜査にご協力願えますか?こちらに不審な機械があると、近所から連絡があったのですが」
きくが早いか銀時がタマの頭を掴み、ベランダから捨てようとする。
それを追いかけ必死で新八君と共に止めに入る。
「銀さんんん!!早い!!決めつけんの早い!!」
「落ち着いて銀時ィィ!まだ限りなく黒に近いグレーだから!!」
「ふざけるなァァ!!このままじゃ俺達まで殺人犯だぞォ!!」
「タマはそんな機械に見えないよ!」
がしっと腕を掴む。
「はなせ、早く捨て...」
「この装備は呪われています。捨てられません」
「捨てられませんじゃねーよ!お前みたいなもん装備した覚えねーんだよ!!」
「最寄りの教会に行くか、ATMで三百万おろして私に振り込んで下さい」
「どんな呪いの解き方!?」「それただの悪徳商法!!」
てんやわんやとしている間も、奉行所の連中らしき者たちが玄関の向こうから声をかけてくる。
新八君がこれ以上は怪しまれると対応しに行こうとしたが、タマが制止する。
「出ない方が安全かと。訪問者三人のうち二人、生体反応が感知できません」
「え、どういう...」
言葉を遮るように、爆音とともに玄関の扉が吹っ飛ばされる。
「彼ら役人どころか、人間じゃありません」
玄関へと視線を向ければ、中年の男と、機械らしき男、そして機械家政婦の1人と2体が煙に紛れ立っていた。
煙の中に影を確認した瞬間、全員でベランダから下に飛び降りた。
銀時は新八君とともにスクーター。小生は神楽ちゃんと共に定春に乗り、早く捲くためにその場を去る。
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