A
「炊事洗濯に始まり、事務までこなす夢の機械人形」
「あなたのお宅にも一体どうですか?って歌い文句でさ、すごいでしょ?」
「あァ、姑バージョン、ツンデレバージョンとかもあんぞ。なんか風俗みてーだな」
平賀の旦那の工房である、『からくり堂』へとやってきて頭を旦那と共に直している間、
銀時達が機械家政婦『悦子ちゃん』のパンフレットを見ながら会話をしていた。
その会話に口をはさみながら、工具を使って機械をいじる。
「旦那、ペンチ取って」
「おう。朔の字、相変わらず手つきが良いな」
「ふふ、ありがとう旦那」
発明家同士、和気あいあいと進めていると銀時が話しかけてきた。
「オイどうだ、じーさん、朔夜」
「かなり派手にやられてるな」
「そりゃそうだ、首ちょんぱだからな」
「でも肝心な部分に傷はないから多分大丈夫だよ」
そう返しながらいじっていると、銀時はからかうように平賀の旦那に話しかけた。
「しかしじーさんよォ。アンタもおちおちしてられねーな。こんなもんが市場に出回ってるたァ、江戸一番のからくり技師が追い抜かれる日も近いんじゃねーの」
「何言ってやがる。こんな軟弱な機械つくりやがって...相変わらず雑な仕事してらやがらァ」
「?」
「(製作者と知り合いなのかな...?)」
引っかかりを覚えながら手を動かして仕上げをしていたら完成した。
「よし、朔の字がいたから予想より早くできたな」
「ありあわせで作ったからアンバランスな完成だけど...」
「ちょっとォォォ!!ありあわせどころか身体丸々どっかから丸パクリしてきたよ!」
某機動戦士アニメの身体に突っ込みが飛ぶ。
「完成度高くない?」
「いや高いけど!ていうか朔夜お前まで何ボケにまわってんだ!」
「だって旦那が既に某機動戦士アニメチックなの作り出してたから」
「いいじゃねーか。一年戦争でも耐えられる身体だぞ」
「なんで家政婦が一年も戦争すんだよ。なんで家政婦にシールドが必要なんだよ」
「シールドに隠れて色々見れるじゃないか。家庭の事情とか」
「見なくていいんだよ!市原悦子に任せときゃいいんだよ、んなもんは!」
銀時の文句に思わずむっとなる。
「せっかく金になりそうな奴なんだからよォ、もっといい女に、ボンキュッボンのナイスバディにしてくれねーと売れねーだろうが」
銀時を筆頭に他の二人もそれぞれの要求をぶつけてきた。
「んーよくわからんわ」
「もういいからよ、アンタなりにいい女つくってくれ」
そう言って旦那がつくりなおした結果...
「ってケツプリンなっただけだろーがァァァ!!」
「あらま...」
「根本的にダメな所が直ってねーんだよ!!何このケツに対するこだわり!!」
「ケツのでかい女はいいぞ。安産だ。そこが朔の字は苦労するな。細すぎらァ」
「朔夜はこうだからいいんだよ!ていうか、ふりーよ!!古いんだよ!女の選考基準が!」
「なんだ、何が気にくわねーんだ。ココなんて大変だったんだぞ。しょう油出るんだぞコレ」
「卵かけご飯への配慮はいいんだよ!!どんんだけみんな卵かけご飯好きなんだよ!!俺も好きだけどね!!」
「いやでもいらない機能だけど面白い発想だねェ」
「前に朔の字の采配直して、改良した時に、黄色のボタン押したらポン酢でる昨日つけといたぞ」
「え、そうなの!?(しらない間に!!)」
一緒に直したはずなのに...!と思っていると、注文が多い銀時達は旦那に、金を持っているのかときかれ、目を逸らした。
その瞬間、手近なイチゴの入っていたらしいダンボールに、その悦子ちゃんの頭を重ねられ、渡され、追い出された。
そして仕方なく、その状態で万事屋に帰ることになったのだった。
「「「「......」」」」
万事屋に帰ってきて、机に置いた、なんとも切ない悦子ちゃんの姿を見る。
「...どうしようか」
「捨てられてた犬みたいになってるんですけど」
「...仕方ねーだろ、金ねーんだから。これじゃ売れねーな。殺人鬼の気分だ」
「売れるどころか、身体がないんじゃ家政婦としても使えないアル」
なんともむなしい会話を繰り広げていると、新八君が思い出したように口を開いた。
「でも源外さんの話じゃ、この機械(からくり)事務処理能力に特化したものらしいですよ。前の持ち主もメイドとしてより、パソコンみたいなカンジで使ってたんじゃないスか」
「...そうだね。とりあえず起動させてみようか。もしかしたら電脳はあるから頭だけでも使えるかもしれないし」
みんなでスイッチを探しだす。
「起動って、どこにスイッチあんだ?もし乳首だったらオシマイだ。起動できねーぞ」
「「あんた/銀時の頭がオシマイですよ/だよ」」
少しして神楽が焦れて頭をはたいたりしだした時、新八君が彼女の額にある黒子を押した。
瞬間、彼女は閉じていた目をカッと開き、ドゥルルルル、というような音を出した。
「残念ながらあなたの冒険の書1、冒険の書2、冒険の書3は消えました」
「...オイやべーぞ。強く叩いたから冒険の書全部消えちゃったぞ」
「ていうか冒険の書ってなに?」
「冒険してたんだヨ。どこかできっと」
すると今度は新しく冒険の書を作るために自分の名前を入れてくれと言いだしたので、神楽が卵(たま)と名付けた。
しかし、それを無視してマリー・アントワネットとか言い出した。
「(卵、嫌だったんだな...)」
「みんなにはホクロビームと呼ばれている」
「いじめられてるよ!!完全に額のボタンのことでいじめられてるよ!」
「つーかみんなって誰だよ」
「戦士とか武闘家アルヨ。あいつら肉体派のくせに根暗なんだヨ」
その後、何故か懐かしきファミコン時代のドラ●エのような復活の呪文を言ったり、
パラメーターをあげたりして、電源がついたり消えたりした。
その様子を見て、銀時がため息をつく。
「...はァー、ダメだなこりゃ。一銭の金にもならなさそうだ」
「完全に壊れちゃってるかなー...」
「どうですか?街角でストレス溜まってる人に好きなだけ殴らせるとか」
「殴られ屋?いいなそれ、それでいくか」
「卵がかわいそうだよ」
こんな精巧な機械人形になんてことを...
その時、テレビのニュースの声が聞こえてきた。
その画面には、卵を作った研究所が映っていた。
「事件でもあったのかな?」
『えー殺害された林流山博士は、機械の権威としてもしられ、最近人気をはくしていた、「機械家政婦悦子ちゃん」の開発者でもありました』
「え?これ...」
「(どういう...)」
『奉行所では目撃者の情報を参考に、博士の秘書役を務めていた機械人形――』
次に画面に出た顔に目を見開く。
『“芙蓉”伊―零号試作型博士殺害の嫌疑で捜索しています。現在、芙蓉零号機は逃亡中です。
目撃した方は危険ですから近寄らず、すぐに奉行所に御一報ください。くり返します――』
「こ...これって...まさか、卵さ...ん...!?」
画面に出ていた犯人の顔は、卵の顔そのものだった。
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