銀魂連載 | ナノ
第百訓 運に身分は関係ない。運は時の気まぐれさ




「(このままこの二人が接客したら...接客どころか...)」


"「あっ!何やってんだてめーら!」

「そういう趣味が合ったのか!」

「ふざけんな俺達はオカマバーに来たわけじゃねーんだよ!」"


「(...となって、二人が大路を歩けなくなってしまう!!)」


銀時、どうやって回避する!?

一瞬で思考し、隣の銀時を見あげれば、銀時はしゃくれていた。


「(しゃくれるって、それで変装してるつもりなのかいッ!?)」


銀時がしゃくれたのを筆頭に、神楽や九兵衛ちゃんもしゃくれだす。

ここはなんだ、なんの店だ?

その姿に、遠い目になっていると新八君がこそこそと話しかけてきた。


「(朔夜さん、大丈夫なんですかこれ!?しゃくれバーみたくなっちゃってますけど!)」

「(今のところばれてないみたいだけどね...とりあえずキャバ嬢じゃないよこの集団)」


そう思いながら皆を見ていると、あやめちゃんが口にギャグボールをつけてフガフガと喋り出した。

そのM嬢のあやめちゃんにドS心が刺激されたのか、総悟君が教育に大変よろしくない事を言い出した。


「オイいいメス豚がいるじゃねーか。ねーちゃん、俺が鼻フックよりもっとスゲーもん鼻にブチ込んでやろーか」

「(コレジャンプ掲載漫画だから!!ギリギリだから!!)」

「フガフゴフガ(ナマ言うんじゃないわよ、ケツの青いクソガキが。下の毛が白髪天パになってから出直して来なさい)」

「言うじゃねーか」

「「(なんで通じてんだよ/るのかな)」」


眺めているとトシが総悟君を止めた。


「オイ総悟、その辺にしとけ。今日は俺達ゃ遊びにきたんじゃねーんだぞ」

「オイなんだよ遠慮すんなって、お前らも飲んでけ」

「いや、そーもいかねェ」

「「!?」」

「(え?どういうこと?)」

「(何?飲みにきたんじゃないのかこの人ら)」


でも...それなら何しに...VIPの護衛とか?そしたら幕府のかなりの高位の人が...

悶々と考えていると、真選組が後ろから現れた人影に頭を下げ、出ていくのが見えた。


「じゃあごゆっくり楽しんでいってくだせェ」

「俺達ゃしっかり外見張っとくんで」

「!(え...あの気品のある姿...まさか...)」

「上様」


段上には上様と呼ばれた、身なりのいい高貴そうな若い男が立っていた。


「「「...」」」

「...銀サン、朔夜サン。今...上様ってきこえませんでした?」

「きこえたな...いや、でもまさか」

「こんな危ないご時世に、こんな危ない街に来るわけ...」


しかしながら不安なので、他の子たちに銀時と共に話しかける。


「「ねェ、今、上様って...」」

「んなわけないでしょ、お朔さんまで。どうして天下の将軍様がこんなキャバクラに来るの。さァどうぞ上様、こちらですぅ」

「いや今お前も上様って言ったろ」

「もうこれ上様...」

「上様なんてよくある名前アル。領収書なんてほとんど上様ネ。マミーまで銀ちゃんに感化されちゃったアルか」

「「いやでも」」

「上杉さんとか、きき間違えたのではないか」

「「......」」

「フガフゴブガ」


全員の勘違いだろうという返答に、小生達も冷静になる。


「...それもそうだな」

「将軍がまさかこんな所に来るわけないものね」

「おーい将ちゃんこっちこっち」

「ホラ、将ちゃんとか呼ばれてるもん」


将軍様をそんなフランクに呼ぶはず...と納得しかかった時、先に席についていたお妙ちゃんが、将ちゃんとやらにお酌しながら話しかけた。


「カワイイあだ名ですわ。将ちゃんて、でも本名の方も教えてくださいな。私しりたいわ」

「征夷大将軍、徳川茂茂。将軍だから将ちゃんでいい」

「(『 征 夷 大 将 軍 』 徳 川 茂 茂 !?)」


同姓同名どころの騒ぎじゃなくない!?

思わず『将ちゃん』のことをガン見する。

すると彼と目がばっちりと合った。


「!(やば...!)」

「...片栗虎、あの女性は...」

「ん?お朔ちゃんが気になんのか?朔夜ちゃーん、将ちゃんが呼んでっからこっち来てくれるか?」

「あ、は、はい...!(は、腹くくるしかないッ...!)」


そして真撰組の様子を見に行った銀時と新八君と別れて向かえば、松平の旦那によって将軍の隣に座らせられた。


「(ちょ、この国のトップが小生の横にィィ!どうすればいいんだ!?あれ?サインもらっといた方が...って違う違う!!)」


にこにこと笑顔を浮かべながら、内心あわあわとしていれば、将軍が話しかけてきた。


「君は・・・お朔さんと言うのか・・・」

「え、あ、はい・・・お朔と気軽にお呼びくださいまし(仕事だコレは!いつも通り普通にやろう!将軍なんか関係あるか!)」


この店に来た以上、誰だろうとお客はお客だ!

腹を決めて仕事モードに入り、微笑みを返す。


「そうか...余の事は、将ちゃんと...」

「あぁ...いえ、小生は茂の旦那とお呼びしてよろしいかな?」

「!...何故だ?」

「将ちゃんは役職名でございましょう?小生はお客様一人一人にある、お名前をお呼びしたいと思っていますので」


小生は、社会的地位など関係なく、それぞれ個々人として接したい。

普段溜まってるストレスや疲れを吐きだせる場所になってあげたい。


「『将軍』としての卿ではなく『茂茂』という卿としてお相手したいのですよ...なので茂の旦那、と」

「!そうか...そんな事を言われたのは初めてだ。そう呼んでくれて構わない(この女人を見ているととても不思議な感じがするな...)」

「ありがとうございます、旦那」


将軍...思ってたのと大分雰囲気違うな...まぁ先代の将軍が親だからって一緒ってわけでもないか...

この人は、今の国のトップになってどんな考えを持ってるんだろうかね...

そんなことを心の片隅で考えながらも、小生はいつものように仕事に専念した。

しばらくして皆に酔いが回り出し、銀時、新八君も戻ってきて席に着いた。


「んーーーこれで人数もいいカンジだな。酔いも回ってきたし、じゃそろそろ、将軍様ゲームぅぅはっじめるよ〜!!」

「......将軍様ゲーム?」

「将軍様ゲームってのはね...」


分からないらしい健全な新八君にゲーム内容とルールを軽く説明する。


「...という感じの大人のゲームだよ」

「もう松平さんったら、またゲームにかこつけてHな事するつもりですね」

「いや俺は今回は進行役でいかせてもらう。まぁ若い奴らで楽しめや」

「おや、小生が進行役しますのに」

「いやいやたまには朔夜ちゃんも参加しなさいよ。さァ将軍様引きあてるのは誰かな〜

(将ちゃんどうやら朔夜ちゃんの事、気になってるみてーだしなぁ〜)」

「「「(いや...っていうか将軍様いるんだけど)」」」


隣にモノホンが...


「よーしじゃあ始めるぞ。ホラ早いもん勝ちでクジを引き抜...」


ドゴッ

言い終わる前に女の子たちが松平の旦那に飛びかかり、将軍棒を取り合いだした。



「「「(マジなんだけど。客を楽しませる気0なんだけど)」」」

「すいませんねェ、茂の旦那」

「気にすることはない」


茂の旦那にフォローをいれていると、新八君が落ちてしまった棒の束を拾い集めた。


「あーあ、待ってください。もうクジがメチャクチャ、しょーがないな。じゃあ松平さんのかわりに私がくじ持つから

みんな『せーの』で来てください...せーのォォォォ!!(将軍引けェェェェ!!)」


新八君がわかりやすく一本だけ飛びださせて茂の旦那に向けたが、目にもとまらぬスピードで棒を抜き取った。


「(えぇぇぇ!?早っ!!)」

「(将軍棒は...どこ...)」

「あー私将軍だわ」

「!パー子さん!!」


将軍棒を引いたのはいち早く皆の気配を察していたらしい銀時だったらしく、命令を告げた。


「えーとじゃあ、4番引いた人下着姿になってもらえますぅ?」

「(なるほど、視覚的に楽しませる作戦で来たか)」


一体4番は...と思っていると、下着姿になったのは茂の旦那だった。


「(やっちゃったよ...)」

「「(将軍かよォォォォォ!!)」」

「ヤベーよ。なんで4番引いてんだよあのバカ殿。ヤベーよ。怒ってるよアレ絶対。勘弁してくれよ、悪気はなかったんだよ」

「(銀時こっちまで聞こえてるから!)」

「しかもよりによってもっさりブリーフの日にあたっちまったよ。恥の上塗りだよ」

「将軍家は代々もっさりブリーフ派だ」

「ヤベーよきこえてたよ。しかも毎日もっさりライフだよ」


そしてその後も、お妙ちゃんの協力もあり、なんとか茂の旦那に戻そうと『3番の人が一番寒そうな人に着物を貸す』と命令をするが

その3番がまた旦那で、ついに全裸になってしまった。


「(なんてことだ...)」

「ヤベーよ、連続モザイクトーンだよ。ネタ切れだと思われるよ。しかも将軍あっちの方は将軍じゃねーよ、足軽だよ」

「(また聞こえてるから!)」

「将軍家は代々あっちの方は足軽だ」

「ヤベーよきこえてたよ。もう確実に打ち首獄門だよ」


だんだん茂の旦那が涙目になっていってる姿が見ていられなくて、慰めるように背中を撫でた。


「お朔...」

「泣かないでおくれ旦那。気を取り直して頑張りましょう」

「...あぁ」

「(皆次こそ頼むよ!まだ死にたくない!!)」


そう期待をかけながら見ていると、今度取ったのはあやめちゃんだった。

一瞬、とんでもない発言をしようとしていたが、妙ちゃんに踵落としされ、言い直した命令は『5番がトランクスを買ってくる』というものだった。


「(あやめちゃん!ちゃんと協力してくれたんだね...!)」


これなら!と思った矢先、買いに歩き出したのは隣に座っていた茂の旦那だった。


「「(やっぱり将軍かよォォ!!)」」

「(偶然にもほどがあるよね!?)」


外に向かって走り出した将軍を慌てて全員で追う。(小生はみんなより足が遅いので、銀時に手を引かれながらだが)

外に出ると、真選組の皆が騒いでいた。


「ヤベェ!!エライ事になってきた!」

「!!貴様らァァ上様に何をしたァ!!」

「ごめん近藤の旦那!今説明できない!!」


そして真選組の横を通り抜け、将軍を追えば、戦車で真選組は後ろから追ってきた。

そんな危機一発状態で追いかけていると、神楽が棒の束を茂の旦那に、引いてと差し出した。

クジを旦那が引くと、それは将軍棒だった。


「将軍様、我らになんなりとご命令を」


その言葉にふっと笑って茂の旦那は、命令を口にした。

――そして


「...上様、お待たせしました」

「下着の方お持ちしましたよ」


真選組を銀時達に任せて、大江戸マートで命令通り九兵衛ちゃんと共に、外のベンチで待たせている旦那に下着を買ってきて、声をかける。


「......あの、色々...失礼な事...」

「いいんだ、楽しかったよ。お朔という今までにいない女性にも会えたしな...」

「!」

「また片栗虎に連れてきてもらうぞ。その時はまた余と遊...」


ピトッ


「うがぁぁぁぁ!!」


どぉぉん

手が触れた瞬間、九兵衛ちゃんがベンチごと川に茂の旦那を投げ落とした。


「旦那ァァァ!九兵衛ちゃん何してるのォォ!?」

「す、すみません...男に触るとつい...!」

「えぇ!?」


夏だからといえど、将軍をこのまま放置などできるわけがないので、着物を脱ぎ捨て

インナー姿になって、水用蛙型小型機械の『ケロ助』をバッグから取り出し起動させて川に飛び込んだ。

小生は泳げないから、泳ぐ時はケロ助を掴んで代わりに泳いでもらう。

大きめのバッグ用のストラップにできる様に小型ではあるが、人を運べるように作ったから、とても便利なんだよ。

そうして、将軍を近くの川の浅瀬まで運び、なんとか事なきを得たのだった。


「(とりあえず将軍良い人っぽそうだったから良かった...)」

「(またお朔に会いたいものだな...)」


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