第九十九訓 クーラーはつけっぱなしにしてたら風邪ひくから気をつけて
〜♪
家に帰ろうとした真夜中、今日はバイトが入っていなかったはずのキャバクラ『スマイル』から電話がかかってきた。
『お朔さん!』
「はい?なんでしょうかね」
『明日これる!?夏カゼとかひいてない!?』
「?大丈夫だよ、店長。急にどうしたんだい?」
『いや、店の子が明日お妙ちゃんとお朔さん以外これなくなっちゃってね...』
「おやまぁ...」
『まぁ、確認したかったのはそれだけだから、明日頼むよ』
「はいよ。承りました、と」
ピッ
...大変な事になったなぁ...ま、店長も何か考えるでしょう。
小生はもう家に帰って寝ようっと
***
「ちょっと遅くなりましたー...ってあれ?あれ?どうしたんだいこのおかしな感じ...」
「!お朔さん!」
「朔夜!?(そういやここで働いてたな)」
『スマイル』に来てみれば、店長と妙ちゃんは分かるが、何故か銀時、新八君と、厚化粧をした神楽
それに女の子らしい恰好の九兵衛ちゃんと、ソープ嬢の恰好をし、マットを持った歩がいた。
そのよくわからない状況に?を浮かべていると店長が、今日はVIPなお客がくるらしく銀時たち万事屋に協力してもらって
休んでしまった子たちの代わりに、接待のためにかわいい子を探している最中だったそうだ。
「...話はわかりましたけど...なんで途中からソープ嬢?ていうか歩にいたっては男だし...」
「若を護るためですよ。というか朔夜さん貴女、こんなぬるぬるのマットの上で男の身体にはいまわるようなバイトもしてたんですか」
「したことないけどそんなこと!!(なんの話だい?!)」
なんか勘違いしてるの!?そう思いながら接待大丈夫なのか?と頭を抱えていれば、銀時が店長に話しかけた。
「で、朔夜も来たけど、あと何人位必要なんだ?」
「最低でもあと三人はほしいね」
「私いれたらあと二人アルナ」
「あと三人か、ダリーな」
あ、スルーした。神楽はまぁ、まだ子供だしねェ。
「オイあと二人だって」
「誰かいないの?もう顔だけかわいきゃいいからさ」
「オイきけヨ泣くゾ」
「一人はもう話つけてあるからなんとかなるとして」
「ああ、もう呼んでるの?さすが万事屋」
「...んだよチキショーやってらんねー」
「(おやおや...)こっちに座ろうか神楽」
「マミー!」
ぎゅうと抱きついてきた神楽の頭を撫で、ソファーに二人で座る。
すると不貞腐れたようにして、小生の膝にお腹をのせてうつぶせに寝そべった。
その頭をなだめるように撫でていると、そこに銀時が呼んだらしいキャサリンがきていた...っていうか!
「キャサリンまでなんでソープ嬢!?胸くらいせめて隠しなよォォ!!これ原作少年漫画だから!!天下のジャンプだから!!」
「お朔さんの言うとおりだぞ!乳首を隠せェェェェ!!」
「ア、見タナ。訴エラレタクナカッタラ一千万円ヨコセヨ、コルァ」
「顔だけじゃなく性格も最悪なんだけど!!」
キャサリンは相変わらずかい!と頭を押さえていると、銀時があと二人か、と呟いて腰の木刀を掴んで天井に投げた。
天井から、銀時を相変わらずストーカー中だったらしい、木刀が頭に刺さったあやめちゃんが落ちてきた。
「(頭刺さってるのに大丈夫なんだろうか...)」
「あだだ...」
「オイ、立てコラストーカー。今日からお前もキャバ嬢だ」
「さわらないで!」
「さわってねーよ」
「柳生編だかなんだかしらないけど、散々長いこと放置プレイして久し振りに会えたと思ったら、キャバ嬢になれ!?そんな...」
「(流石に怒るよねー...)」
「そんなのって......興奮するじゃないのォォォ!!どれだけ私のツボを心得ているのよォ!!」
「(えええええ)」
目の前で服を脱ぎ、下に着ていたらしいM嬢の服装になるあやめちゃんに、現代の女の子というのがよく分からなくなった。
そう思いながら、眼前の嬢しか合ってないおかしな集団を見ていると、銀時が口を開いた。
「よし、これで七人揃ったな」
「え?まだ六人、一人足りませんよ」
新八君の言葉に応えず、銀時はこっちに視線をよこした。
その視線の意味に気づき、膝の上でうつ伏せに不貞寝している神楽に視線を落とし、背中を撫でた。
「(機嫌直してくれそうだね)」
「オイ」
「(ムスッ)」
「酒は飲むなよ。オロナミンCまでなら勘弁してやる」
「よかったねェ、神楽」
ガバッと神楽が起きあがった。
「銀ちゃァァァァん」
「ここは化け物屋敷!?」
「神楽、お化粧今すぐ直そうか!(折角可愛いのにこの顔じゃあねェ...)」
泣いていたせいでマスカラが流れたらしく、神楽の可愛い顔がとんでもないことになっていたので
慌てて化粧ポーチを出して、神楽の化粧直しをした。
そして丁度直し終わった時、ボーイがお客が来た事を告げた。
それを聞いてお妙ちゃんを筆頭に女の子たちが階段をかけて扉の方に向かっていく。
それを座ったまま眺めると、店長が心配そうに言う。
「大丈夫かね?」
「やれるさ...奴らなら。それに朔夜もいるなら下手なことにはならねェだろ(あんまやらせたくねーけど)」
「まぁ、何かあれば小生がフォローしますから」
「頼むよ朔夜さん」
そう会話を交わしていると、階段のところでソープ嬢に扮した二人が、己のローションに足を取られて滑り、階段から転げ落ちて頭を強打した。
「うわァァァキャサリンと歩がァァ!!」
「オイぃぃぃぃぃぃぃぃ!!何してんだァァァァァ!!」
「客に会う前にイキナリ殉職しちゃったよォォ!!」
そしてぴくりとも動かない二人に3人で駆け寄り、とりあえず客の目の届かない所に移動させようとすると
今度は店長が、二人の身体から床に流れたローションに足を取られて頭を床に強打した。
「「「てっ...店長ォォォォォ!!」」」
「み...店を...頼む」
ガクッ
「「店長ォォォォォ!!」」
「――とりあえず片付けるぞ店長も」
「うん、目につかない隅に三人を運んどこう」
「早っ!!きりかえ早っ!!」
そして三人を素早く運び、戻ってくると丁度向こうから客の声が聞こえた。
「なんだァ?今日は店の娘少なくねーか?盛りあがらねーな、これじゃ」
「大丈夫ですよ。あちらにいけば一杯いますから。朔夜さんもいますし」
「「「(!!来た!!)」」」
焦ったように新八君が話しかけてくる。
「どーすんですか!?一杯いるとか言っちゃってますよ!早くしないと!」
「......やるしかねェな...新八行くぞ!」
二人が奥に走っていくのを見送り、戻ってくるのをハラハラしながら待つ。
そして戻ってきた姿を見て、激しく突っ込みたかったが、口を開く前に階段状に松平の旦那が現れたので、すぐに口を閉ざし営業スマイルに変えた。
「何やってんだ。オメーら早く来い」
「あ、ホラ松平さん。みんな待ってますよ」
「松平の旦那ァ、久しぶりだね」
「どーもパー子でーす」
「パチ恵でーす」
「「「「「.........」」」」」
ローションまみれのマットを持ち、ソープ嬢の恰好をした銀時と新八君を見て、あたりに沈黙が訪れる。
「(だからなんでソープ嬢ォォ!?お朔さんも止めてください!!)」
「「(着替える時間がなかったんじゃあああ!!)」」
「(すまない!まさかこんなんでくるとは思わなくて!!)」
笑顔を崩さず心の中で会話をしていると、別の知っている気がする男の声が聞こえ、視線をあげた。
「アレ、なんか今日初めて見る娘が多いな。朔夜さ・・・じゃなくて、お朔さん、その娘たち新人さん?」
「え...(VIPって...)」
「「(げェェェェェェェェ!!)」」
「(ウソでしょ!)」
視線をあげた先にいたのは、真選組の面々だった。
「(よりによって鉢合わせ...?!)」
小生はいいとしても、この二人ソープ嬢なんだけど!?
あまりの偶然に一瞬目眩がした。
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