銀魂連載 | ナノ
第九十二訓 四人揃えば色んな知恵。でも4×0は0だからね




「はぁ...はぁ...(皆の事だから大丈夫だと思うけど...そういや銀時を見てないけど、どこまで行っちゃったんだろ...)」


神楽、総悟君、それに巨体の掴を抱えて空覇が小生の所にやってきた。

そして簡単に手当てを終えた後、斎も含めた4人の怪我人を、それぞれチームごとに別室に運ぶのを任せ、

小生は、そろそろ歩や九兵衛君、それに敏木斎様が動きだす頃と思い、心配になって他の面子を探しに向かうことにした。


「(変な事になってなきゃいいけど...)」


そう思いながら、手入れのされた庭の木々の間を走っていると――


「「「「誰かァァァ、紙くださァーい!!」」」」

「ふぇっ!?」


普段使われていないトイレの方から、聞きおぼえがありすぎる、4人の男の悲痛な叫びが聞こえてきた。


「.........(まさか...)」


嘘だろと、思いながら、鼻を押さえながら異臭のするトイレの中へと入った。




「...誰かいますかー...」

「!この声は...朔夜さんか!?これこそ天の助け!!」

「!朔夜!俺の声が聞こえたんだな!!紙くれ紙!!」

「なっ!朔夜殿!どちら側にもつかないという約束ですよ!そちら側に渡すのでしたらこちらにも!!」

「朔夜ちゃんか!来たならわしに早急に紙を!!」

「......さようなら(馬鹿な男の祭典なんだろうか。ここは)」


男子トイレに入ると、閉じられた4つの個室のドアがあり、半信半疑のまま声をかければ、探していた半数のメンバーの声がかえってきて

思わず、心配していた自分がバカらしくなって白け、その場から去ろうとした。

すると全員が焦って引き止めてきたので、仕方なく、去ろうとした足を止める。


「こんな極限状態の俺達を見捨ててくつもりかァァ!!」

「見捨てたくもなるよ。むしろ見捨てさせてくださいお願いします」

「敬語!?なんか距離を感じた!!」

「...はぁ...っていうか、何?紙なくなったの?」


諦めて扉の向こうの男どもに声をかける。


「そうなんだよ!だから紙を...お前いつもポケットティッシュもってたろ!」

「今はないよ。全部朝方、風邪気味だったバイト先の子にあげちゃって」

「なっ!じゃあなんか紙になりそうなもんわ!」

「ないよ...ていうか、もう行っていいかい?小生ここにいても...」


ものすごい出て行きたい。


「「「「いや精神を高潔に保つためにだけでも居てください!!」」」」

「精神を高潔にって...紙がなくて動けない大人4人に高潔さなんてあるの?ていうか、卿らは大人なの?」

「朔夜ちゃん、卑下するでない。こういう時ほど精神を高潔に保たねばならないのじゃ」

「人間どんなになっても品性だけは失ってはイカンよ」

「良い風に言ってるけどそれ言ってる奴も含め、4人全員同じ穴のムジナだからね」


やっぱりまとめて馬鹿なんだろう。

なんかこの戦いの不毛さが増した気がする...

頭痛がしてきて額を押さえていると、歩が落ち着かせるように口を開いた。


「まず状況を整理しましょう。今この厠にトレットペーパーはない。個室全て普段からあまり使われない厠ゆえ

朔夜殿以外の誰かが来る事も考えにくい。尻を拭いていない状態では袴すらはけない。これでは助けを呼びに行くのも難しい」

「......自分らで何とかするしかないってことか」

「とりあえず全員もってるもん全部出せ」

「うごォォォ」


ブリブリブリブリ


「誰がそんなもん出せっつったよ」

「...はぁ...(大分かかりそうだな...)」


とりあえずトイレの匂いが身体につかないようにと、火を入れた煙管をくわえ煙を纏いながら、静観する事にした。

するとその時、敏木斎様が声を上げたのが聞こえた。


「オイ、コレなんて使えんじゃねーかな」

「!」

「コレ、紙やすりがあったぞ」

「(紙やすりィィ!?いやダメだろ!というかなんでそんなの所持してるの!?)」


内心でつっこんでいると、銀時が冷たくつっこんだ。


「ふざけんなよクソジジー。そんなもんでケツ拭いたら、血だらけになんだろーが」


そしてその言葉に触発されたかのように、他二人も突っ込みだした。


「ふざけんなクソジジー、紙やすり!?テメーはまずそのやすりで脳をみがけ!」

「敏木斎様、私達の捜しているのは紙です。そんなものはクソの役にも立ちません。さっさと便所に流しなさい。そしてあなたも流れなさい」

「なんじゃー!!この状況で紙やすりはスコッティに匹敵する代物じゃろーが!なぁ朔夜ちゃん!!」

「スコッティ!?思い上がりもはなはだしいですよ。ですよね、朔夜殿」

「紙という言葉に惑わされるな。下にやすりってついてるだろーがクソジジイ!なぁ朔夜さん!」

「あの、無関係な小生にふらないで(この際、血だらけになろうがなんでもいいから早く終わらせてほしいんだけど)」


酷くなる頭痛に頭を押さえながら答えると、銀時が口を出した。


「オイオイ朔夜にふってもしゃーねーじゃねーか。それに言いすぎだろ、テメーら」

「!(おや...)」

「まァなんか使い道があるかもしれねェよ。ジーさんちょっと見せてみ」


まさかとは思ったけどツンデレ戦法かい、銀時。


「ええわい、もう」

「オイ、すねんなよ」


...なんだろうこの変な空気。


「(ここから離れていーかな...なんか大丈夫そうだし...)」


ぞりぞりという、おそらくフェイクで壁でも削っているんだろう音に、もはや心配など微塵も感じず、外へと歩き出した。

そしてトイレを出ようとした時、水を流す音と扉が勢いよく開く音がし、驚いて振りかえった。

すると、そこには木刀を手にした近藤の旦那と歩がいた。


「!(二人ともまさか本気でアレで拭いたのか!?銀時と敏木斎様のところからしか壁削る音は聞こえてこなかったのに...)」


そう思いながら見ていると、二人が地を蹴った。


「お妙さァァァァん!!」

「若ァァァァァ!!」


ガキィィィィン


「「申し訳ございませんん!!」」


二人の刀が交わり、場所が入れ替わった。

そして、九兵衛に何事かを謝罪をすると、その場に倒れた。


「歩...!(でもこれで、近藤の旦那が勝っ...)」

「...お妙さん。すいません...お妙さんの笑顔をこの目で見ようとここまで来ましたが、俺はここまでのようです」


ブシッ

旦那の尻から血が吹き出、その場に倒れた


「旦那ッ!(本当に拭いちゃったの!?)」

「俺って奴は...ホントにバ...カ...」


慌てて気絶したらしい旦那の方に駆け寄れば、その脇には、綺麗に微笑む妙ちゃんの写真が落ちていた。

その紙と言えるものを見て、小生はどんな葛藤があったのか悟った。


「...近藤の、旦那...(本当に妙ちゃんが好きなんだな...)」


ストーカー行為さえしなきゃ、卿はほんとに良い男だよ。

なんでこの人がモテないんだか...こんなに優しく愛されるなら、女なら嬉しいだろうに...

真摯な愛情を理解し、笑みが零れ、ぽんぽんと近藤の旦那の頭を撫でた。


「...さて、二人をとりあえず連れ出さなきゃね」


そして手当てをするために二人をトイレから足を掴んでずりずりと引きずりだすのだった。


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