銀魂連載 | ナノ
第八十八訓 昨日の敵は今日もなんやかんやで敵。でも身内は身内で敵のよう




「(なんか、門の方が騒がしいな...?)」


御膳を運びながら廊下を歩いていると、にわかに門の方が騒がしいのを感じた。


「...ま、小生には関係ないかな...(それより仕事仕事。彼ら遅れるとうるさいんだよね)」


そう思い、門のある方角から視線を逸らし、目の前に見える道場へと歩みを進めた。

――そして

ガラッ


「四天王さん達、食事の用意できたよ〜」


ゆるい感じで入れば、中には見慣れた濃いキャラの4人組が集まっていた。


「お、朔夜じゃねーかィ。久しぶりだな。今日仕事入ってたのか」

「久しぶりだね、粋。今日は午後いっぱい仕事だよ」


中に入って、座っている4人に近づけば、相変わらずプレイボーイっぽい

チャラチャラとした柳生四天王の一人、南戸粋に肩を抱かれ話しかけられた。


「そうかィ。時間があったら俺と二人で部屋で遊ばないかと誘ったんがねェ。また袖かよ」

「はいはい。ナンパならもっと綺麗な子ひっかけなさいな」

「...相変わらずツレない女だねェ」


肩をおとしたようにして、粋は小生から手を離した。

すると間を置かず、眼鏡をかけたインテリっぽい同じ四天王の北大路斎が話しかけてきた。


「...朔夜、南戸に触られた場所を消毒をしておけよ。お前が汚くなる」

「え?」

「どーいう意味だ北大路!!」

「そのままの意味だ」

「お前な!」

「あーもう、やめたやめた二人とも。折角ご飯持ってきたのに冷めちゃうよ」


持ってきた御膳をそれぞれの前に置きながら、砕けた口調でたしなめる。

するとがたいの良い体系の二人と同じ四天王、西野掴が、口を開いた。


「朔夜、南戸と北大路がまた迷惑をかけて悪いな」

「いや別にこれくらい平気だよ。慣れてるからさ」


笑ってそう返すと、この四天王を取りまとめている糸目の東城歩が声をかけてきた。


「朔夜殿...貴女は相変わらずくだけすぎですよ」

「今さらじゃないかい、歩。何度も言うけど小生は敬語嫌いなんだよ」

「はぁ...まぁいいですがね(悪い気がするわけでもなしですし)」

「ふふ。それじゃ、冷めてしまう前に召し上がれ」


そう言えば、4人は食事をしだした。小生は控えてそれを眺める。


***


――少しして、斎が口を開いた。


「そう言えばきいたか。若の連れてきたあの娘」

「(娘...?)」

「なんでも花嫁修業とかでオババにしごかれているとか」

「そりゃ逃げ出すのも時間の問題だねェ。残念、けっこう好みの女だったのに。

あのババアにいびられて泣かされた女中を何人慰めてやったかしれんよ、俺は...っていうか北大路、おめェケチャップかけすぎじゃね?」

「しらんのか。ケチャップは何にでも合うようにつくられているんだ)」

「胸クソ悪くなる。やめろ」

「(相変わらずケチャラー...トシと被るね)」


焼き魚に、目も当てられないほどの量のケチャップをかける斎に、トシを思い出す。


「(ほんと小生の周りは不摂生なのが多いね...)」


そんな事を考えながら、目の前のやりとりを見る。


「俺は貴様のその下卑た男性器のようなツラを見ている方が気分が悪くなる。朔夜の目にも毒だ」

「なんだと!!」

「やめろ北大路、南戸。まったくお前達は幼稚な」

「いい年こいてお子様ランチ食ってる奴に言われたくねーんだけど!!」

「(まぁ、偏食達より可愛らしいものだがね)」

「だまれェェェ!!顔面男性器がァァ!」

「だからどのへん?どのへん男性器?」

「(男性器って食事中に連呼しないどくれよ)」


止めに入ろうかと思った時、歩が声をかけた。


「やめなさい、食べ物位で浅ましい。それになんて言葉を女人の前で発しているんですか...しかし若に花嫁とは、三年に及ぶ武者修行の旅も、あのご病気を治すにはいたらなんだか」

「...(病気ねェ...)」


たまたま知ってしまった事情を思い出す。


「だが、若がどのような道を進もうと、我等は黙ってあの方についていくだけ。あの娘には気の毒ですが、若のために泣いてもらいましょう」

「...(無理矢理連れてきたのかな...?)」


超大盛りのご飯の上で生卵を割った歩の話の端々から推測をしていると、歩が急に黙り込み、ご飯の上で割れた黄身を凝視した。

「(やば!)あゆ――「チクショオ!!」


ガシャァン


「東城さん!?」

「オババの野郎ォォ!新鮮な卵仕入れとけっていっただろーがァァ!!また黄身が崩れたぞォォォ!!ちょっとスーパー行ってくる!!」


御膳を思い切りひっくり返し、いきり立って立ちあがった。

それを粋が後ろから羽交い絞めにして止めに入る。


「落ち着いてください東城さん、食べ物くらいで!!」

「うるせェェェ全身男性器!!」

「全身!?なんかどんどん侵食が進んでるんですけど!!」

「(なんだか粋が可哀想に見えてきた)」


意外と苦労するな、粋も

そう思いながら視線を御膳の飛んでいった法を見ると、そこにはよく見慣れた少女が、頭から卵かけご飯を被って立っていた。


「か、神楽!?」


そしてその棒立ちの神楽の後ろから、総悟君が現れた。


「オイ、チャイナ。股から卵たれてるぜィ。排卵日か?」


そのデリカシーゼロの台詞が神楽の癇にさわったらしく、総悟君は神楽に顔を鷲掴みにされ、此方の方に向かって投げ飛ばされた。

そしてその後から、更に銀時、トシ、新八君、近藤の旦那も入ってきた。


「今のは総悟が悪い...って朔夜っ!?」

「け、卿らなんで...」


チャキ


会話をしだそうとしたとき、すぐそばで、刀が構えられた音がし

見れば、こっちの方に投げ飛ばされ倒れた総悟君の後頭部に、歩を除いた3人の刀がつきつけられていた。


「!ちょ――」

「いやァ、よく来てくれましたね、道場破りさん」

「(道場破り!?なんで...ってまさかさっき騒がしいと思ったのは!!)」


原因はこいつらかい!


「天下の柳生流にたった六人で乗り込んでくるとは...いやはやたいした度胸。しかし快進撃もここまで。我等、柳生家の守護を司る――」

「北大路斎」

「南戸粋」

「西野掴」

「東城歩――柳生四天王と対峙したからには、朔夜殿のお知り合いといえど、ここから生きて出られると思いますな」


そう言いきった歩の言葉を全く意に介さず、気だるそうに返答する銀時。


「あん?てめーらみてーなモンに用はねーんだよ。大将出せコラ。なんだてめーら?どこの100%だ?何100%だ?柳生100%かコノヤロー。

しかも朔夜も何で、この100%気取りの奴らと仲良さげなんだよ」

「朔夜さん、敵も色で落とすとは流石悪女の異名を取るだけありまさァ」

「取ってないよ!?そんな異名!しかもここただバイト先ってだけだからね!?」


にしても悪女って失礼だね!!

あんまりの言葉に若干憤慨していると、総悟君の首筋に刀を当てている粋が銀時達に声をかけた。


「アンタらのようなザコ、若に会わせられるわけねーだろ。俺達が剣を合わせるまでもねェ、オラッ得物捨てな。人質が...」

「「「「「うおりゃあああああああ」」」」」


全員それぞれの得物を思い切り四天王のほうに投げつけてきた。

ズドドドド


「「「「「ぎゃああああ!!」」」」」

「(総悟君まで巻き込んでるけど!?)」

「ちょっ何してんの!?」

「捨てろっていうから。(朔夜も丁度良い場所に離れてたし)」

「どんな捨て方!?人質が見えねーのか!」


するとトシが言い切った。


「朔夜ならいざ知らず、残念ながらそいつに人質の価値はねェ」

「殺せヨ〜殺せヨ〜」

「てめーらあとで覚えてろィ」

「(当然の反応だろうよ...というかほんと協調性ないのに...なんでこの面子でいきなり道場破りなんか...)」


必ず何か理由があるんだろうが...なにが...


「...(妙ちゃんが嫁いだのって...まさかこの家?)」


推測でしかないが、そういうことなら話が繋がる...。

悶々と考えていると、斎が刀に再び手をかけた。


「東城殿。こ奴らの始末、俺に...」

「やめろ」

「「「「!」」」」

「(この声は...)」

「それは僕の妻の親族だ。手荒なマネはよせ...それにどうやら朔夜さんの知り合いでもあったようだしな」


制止の言葉とともに入ってきたのは、久しぶりに見る、この柳生家の次期当主の柳生九兵衛君が入ってきた。


「「「「若!!」」」」

「やっぱり九兵衛ちゃ...君かい(しかも妻の親族...推測あたってるみたいだね)」

「まァゾロゾロと。新八君、君の姉への執着がここまで強いとは思わなかった」

「今日は弟としてではない。恒道館の主として来た」


いつもと違った凛々しい雰囲気で新八君が話しだしたのを見守る。


「志村妙は、当道場の大切な門弟である。これをもらいたいのであれば、主である僕に話を通すのが筋」

「話?なんの話だ」


九兵衛君の問いに、それぞれが答える。


「同じく剣を学び、生きる身ならわかるだろう。侍は口で語るより、剣で語るが早い」

「剣に生き、剣に死ぬのが侍ってもんでさァ。ならば――」

「女も剣で奪ってけよ」

「私達と勝負しろコノヤロー!!」

「...ふふっ(なんて、皆らしいんだろう)」


小生の周りの侍ってのは、皆かっこいい生き方してるよ、ほんと。

優しい眼でそれを見ていると、九兵衛君が鼻で笑った。


「勝負?クク...我が柳生流と君達のオンボロ道場で勝負になると思っているのか?」

「なりますよ〜坊ちゃま。僕ら恒道館メンバーは、実は朔夜以外とはそれぞれとっても仲が悪くて

プライベートとか一切つき合いなくて、お互いのこと全然しらなくて

っていうかしりたくもねーし、死ねばいいと思ってるんですけどもね〜」

「ふふ――彼らはね、お互いが強いってことだけは知ってるんだよ、九兵衛君」


銀時の言葉につけたすようにいい、微笑んだ。


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