第八十七訓 火曜七時は坂田家を食卓で。今はやってないからDVDでよろしくね!
トンテン カントン
「あー?」「え?」
「「姉貴/妙ちゃんが朝帰り?」」
万事屋に入った瓦葺きの仕事の最中に、新八君が酷く落ち込んだ様子で言ってきた言葉を、銀時と小生はオウム返しにした。
***
「ふぅん...そんなことがねェ(しかし...妙ちゃんはそういう爛れた関係になる子ではないだろうに......何かあったのかな?)」
詳しく話を聞けば、いつもより遅く帰ってきた上に、目も合わせずすぐ着替えて出て行ったらしい。
その話に答えつつ、釘を撃つ手を手を動かしていると銀時が口を開いた。
「新八、そういう時はなァ...黙って赤飯たいてやれ」
「やめてくんない!」
「邪推だよ銀時!」
「そうですよ!それに姉上は結婚するまでそーいうのはナイです!!しばき回しますよ!!」
銀時の直接的すぎる発言に新八君がいきり立つ。
「将来結婚すると決めた相手ならわかんねーだろ。しばき回しますよ」
「そんなもんいねーもん!!認めねーもん僕!」
「お、落ち着いて新八君」
「シスコンも大概にしなさいよ新八君。君と姉上は法律上結婚できないんだよ。
姉上も、ようやくお前と言う重い鎖をひきちぎって甘美な大人の世界に翔こうとしているんだよ」
「じゃあもし朔夜さんがアンタという重い鎖をひきちぎって甘美な大人の世界にいったらどうするんスか!?」
「俺らは法律上結婚するのになんの問題もねーし、朔夜と俺は好きでいつも一緒に行動してるんですー。
なので黙って離れたりしませんー。なぁ?」
「え?あ、うん...まぁ、そだね」
よくわからないが、とりあえず自分の意思で一緒に行動してるのは確かなので頷いておく。
「ほらな。じゃあ昼食にすんぞー」
そして豆パンのはいった紙袋をとりだし、新八君も拗ねたようにして、涙目で豆パンを食べだした。
「チクショー、誰だ...一体誰と...まさか......近藤さん?!まさかあのゴリラと!?」
「(いやそれはないよ)」
急に叫んだ新八君に、豆パンを同じくもぐもぐと食べながら、心の中でそう呟いた。
そしてその後、別のバイトがあり、その場をあとにした。
そのために、その日、泣きながら妙ちゃんが許嫁を名乗る少年の元に行ってしまった事も、
近藤さんが、同じ屋敷でゴリラの天人と見合いをしていた事も、翌日知ることとなったのだった。
***
――そして日がすぎていき...
「(妙ちゃん、どこに嫁いで行っちゃったんだか...しかも泣きながら...
近藤の旦那はゴリラと結婚なんて通常運転だけども...)」
しとしとと降る雨の中、バイト先の一つである『将軍家ご指南役』の『柳生家』にきている小生はいつものように働きながら、うす暗い曇天を見上げた。
「(許嫁の所らしいけど...いつも気丈に笑ってるあの子が泣くなんて...)」
「朔夜さん?どうかした?」
「あ、いや...なんでもないよ」
「そう?」
「あぁ...それより、仕事を手伝いに来てもらって悪いね」
今日は重たい荷物を運ぶ日だったため、空覇に応援を要請したのだ。
「ううん!朔夜さんの役に立てて嬉しいよ!」
「そうかい...じゃあ、その荷物を向こうの奥の物置まで運んでくれるかい?小生は配膳をしにいくからさ」
「わかったよ!」
そして空覇は重たい荷物を軽々と抱えて、屋敷の奥の方に消えた。
その背を見送ってから、小生は考えるのを一度止めて、キャラの濃い柳生四天王達のところに配膳に向かった。
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