Libra

「…どういう意味だ、これは」

「…この花飾りの意味は、まだ教えてなかったわね」


髪につけていた赤い大輪の花を模した鉱石をはずし、彼の前に差し出すと、彼は訝しげに花を見た。


「これは花を模して、エイジャという鉱石を削って作った…私の生命の在り方の象徴の花…」


私たちの一族は、皆銀河を身に宿した形をし、花を模した飾りをつけている。

それは、一季節の中でしか咲かない、花のような生物という象徴。

自らを焼き尽くして、光りながら消えていく星のような生物という象徴。

各々が、各々の運命や生きる意味を持ち、短く鮮やかに、そして子孫に繋げ生きている生物という象徴。

この3つを示している。


「象徴の花の色形、使う結晶は皆自分で、どんな風に生きたいのかで決めるわ。そして大切な人に、大切に身につけてきた装飾品を渡すのが……私たち種族の求愛…」

「!」

「死んでしまったあとも残るものがあれば…大切なものを渡し、渡された瞬間は…どちらかが死んでしまったあとでも鮮やかに思い出され

私たちの思いや、生きた証は子に語られていく…

私たちの一族は始祖が4万8千年前にこの星に降りた日から、それを尊いと、美しいと思う生き物なの」


永い命は、それはそれで素晴らしいのかもしれない。

愛する人のそばに永遠にいれることは、幸せなのかもしれない。

けれど、だとしても。

硬い花飾りを強く握りしめる。


「私は、貴方を好きになった時間も、過ごした時間も、全ての一瞬を大切にするために…短い命を選ぶわ」

「……」

「これを貴方に渡すのは、私は生涯をかけて貴方を愛しているという証で、信用していたいという気持ち…」


これは不純物混じりだけど、この鉱石に秘められている力に気づいても、貴方は悪用したりしないと、私はそう、まだ信じたいから。

口にはせず、受け取ってくれる?とだけ言えば、彼は少し考えたように黙り込んだあと、私の手から花飾りを受け取ってくれた。


「………お前の気持ちは分かった」


その言葉に少しほっとする。

まだ信じられる気がした。

一族に殺されかけて、友人と赤ん坊以外を殺してしまった人だけれど

それでも私には、愛しい人だから。

少しでも私の意志や生き方のことを考えてくれたらいいと

私は、ひとつの期待をかけた。


「…お前の気持ちは分かったが、それでも愛している」


だから、言葉の中身に気づかなかったのね。


to be continue…