Virgo
もし、今日あの場所にいなければ、これで3度目だ。
星が美しい晩がきても、ミュールが姿を現さなくなったのは。
まさかもう、寿命がきていたのか?
…いや、それはない。
そうだとしたらミュールは、あの晩に私に告げたはずだ。
だから寿命ではない。
ならば何故だろう。
1度だけ、私が焦りに追われて、行かなかったからだろうか?
今日、あの場所にいなければ探しに行くか…。
考えを巡らせながら、小高いあの丘に向えば、ミュールはいた。
光が溢れるように大粒の涙を流しながら、私を見て、立っていた。
「ミュール?どうし…」
「貴方は…貴方達は…なんて恐ろしいことをしているの…しようとしているの…?」
夜空に問いかけるべきではなかった。
どうしてなの。
と、ミュールは錯乱したように泣きながら一人呟いている。
なにを、と近づいて手を伸ばせば、泣きじゃくったまま、それ以上来ないでと拒絶の声。
「全ての在り方を壊してまで…究極の生命体になろうだなんて…何故なの…カーズ…!」
「!ミュール…私に関しての星見をしたのか…!」
「天を絶えず巡る12の星宮の目からは誰も逃げられない……貴方が、なにをしようとしてるのか…全て教えてくれたわ」
なんて酷い人体実験をしているのかも。
その言葉に、思わず折れそうな肩を掴む。
「それは太陽を克服するために…お前が寿命という限りを克服するために…私達の進化のために必要な犠牲なのだミュール!」
「それは地球の生態系すら壊しかねない進化よ…カーズ…!それに私は進化したいとは思わないわ…」
「何故だ!何故長い寿命の良さを、力あることの良さを理解しようとしない!」
「理解しても受け入れるのは別…それが価値観の違いなの…!」
目を伏せたまま悲しそうに首を振るミュールに唇を噛む。
「私を愛していないのかッ!」
「……愛しているわ…だから考えて、考えて……貴方の目の前に、また来たの」
そう言って濡れた瞳を上げ、いつもつけている赤い花を模した鉱石の髪飾りを、私に差し出した。
「…受け取って。貴方を信じたい私の答え」
to be continue…