Cancer

優しい風が吹く大地で、甘い月と星の光を受けつつ

静かに花弁を散らす、儚く脆い花のような命の

生きる意味と美しさを、彼はいつか理解してくれるだろうか。


あれからも、変わらずに星の輝きに溢れた夜に訪れるカーズの横顔を、一抹の不安を抱きながら見上げる。

彼は少しの間待っててくれと告げてからも、必ず私に会いに来る。

会わない時間のことは知る由もない。

地底に会いに行くことはできるだろうが、それは何故か、足が動かなかった。


「…(私は…彼のなにが怖いのかしら…)」


私の頬を撫でる手は、抱き寄せてくれる手は、優しいのに。

名前を呼んでくれる声が、別れが怖くなるほど好きなのに。

星の語りすら聞こえないほどに、愛しているのに。

それなのに私は、彼の何を知るのが、怖いのだろう。


「…」

「…ミュール、どうしたのだ?」

「!…なんでもないわ、カーズ…大丈夫よ」

「…ならいいが」


向けたぎこちない微笑みの理由は、彼にばれているのだろうか。

追求するような瞳が怖くて、探られないように下を向く。


「…ミュール…私を見ろ」

「…」

「何を不安になる…大丈夫だ。私がお前を死に追いやりなどしない」

「!…カーズ…だから…それは、」

「心配するな。準備は進めている…。ただもう少し時間がかかる…待っていてくれ」


どうして、大切なところを聞いてくれないのかしら…。

やはり、私と彼では…価値観が違いすぎてしまうのかしら…。

私のつたない愛では、埋められないほどに。


「…カーズ…」

「ミュール…私を信じろ、ミュール」

「………愛してるわ。これは本当よ」


返答にはならない愛の言葉を紡いで、瞳を伏せた。


「(愛しているから、信じたいけれど……)」


どうしてなの、黄道十二宮の星々よ。

私は愛する人の血の通った手が、やはり怖くてたまらないのです。


to be continue…