Gemini

彼は星が綺麗な日には、いつも丘に現れた。

星の話だけでなく、私の話や、彼の話もするようになるのに時間はいらなくて

私は初めて友人というべきものを得た気がしていた。

いつの間にか、星を見るより彼と話すことが楽しくなっていて

星の語りを聞くのを、忘れることもあった。


「うふふ…貴方とお話するのは、とても楽しいわ」

「私もお前とこうして話すのが好きだ」

「嬉しいわ、カーズ…」

「話だけじゃない…お前自身も好ましい…」

「!…まあ…カーズ…でもそれはダメ…その先は言わないで」


頬を撫でてくれる手を、そっと押し返す。


「どうしてだ?ミュールよ。同種の中の女より、お前が好きだ。私に理解を示してくれるお前が…」

「ダメよ…私達は見た目こそ似ているけれど、全く別の生き物…つがいには、なれないわ」


私には角も、強さもない。

生活の時間帯や場所も違う。

なにより、寿命が違いすぎる。


「私は人間の半分ほどしか生きれない…貴方の側にいられるのは、ほんの一瞬でしかないわ」

「…」

「生きる年月の差を埋めることなんて…」

「それを、」

「?」

「…その全てを克服できたなら、このカーズのつがいになるか?」

「!」

「…愛おしい理解者のお前が側に欲しいのだ、私は」

「………カーズ…でも、私は」

「少しばかり時間をくれ、ミュール。きっと全ての障害を克服して、お前を星と繋ぐその白い糸、引きちぎってみせる」

「!ッカーズ!?」


最後の過激な発言に驚き、思わず名を呼びかけるも、彼は振り返らず背を向けて去っていた。


「…カーズ……(一緒にいれるものならいたいけれど…だけど、私は…)」


to be continue…