Taurus

知識ある者と話すことは、意味がある。

とりわけ、自分とはまた違う知識を保有する者とは。

肉体が成長と維持のために養分を欲しがるように、脳もまた、養分を欲しがる。

だから、この女を、ミュールを食うことはやめた。

華奢な身体を食うよりも、生かして話をする方が価値があるからだ。


「誰もが運命の星を持っているの」

「守護星というやつか?」

「いいえ、それとはまた別……誰もが此処に白い糸で繋がる星があるの。生まれた時から」


星空を今日もまた飽きずに眺める横顔を見つめる。

人間の雌と同じような姿だというのに

地に流れ落ちる銀河を映す髪。

深い紫の石の中に、月の欠片を嵌めたような瞳。

人間のようで人間ではない色彩だ。

なんと、奇妙な生物だろうか。


「(しかし、美しい生物でもある…)」

「…例えば…見て。あのかすかに光る星が、私と繋がる星」


示された指先。

その先を視線でたどれば、確かに、かすかに月の隣で光る星がある。


「脆そうな星だ」

「ええ、とても脆いわ。年老いた星だもの。だからあまり喋ってくれないし、終わりも近いの」

「…運命の星とやらに終わりがきたら、どうなる」

「同じよ。その繋がる人も終わるわ」

「…淡々と話すのだな」

「…私達は運命を受け取り、示すだけで、変えられるわけではないから」


私達の命は儚い。

だから終わるまでに、なにができるのかが課題なの。


「貴方達は…やっぱり特殊みたいだけど」


瞳だけをこちらへ流して、細めて笑む姿は儚いだけでなく理知的で好ましい。


「それに、貴方は頭がいいのね。星がそう囁いているわ」

「お前も頭がいいな。星に聞かずともわかる」


やはり、人智を超えた賢者の言うことは面白い。


to be continue…