Capricorn

朝日だというのを認識した私の体は弾かれたように、既に彼の元から逃げ出していた。

彼が私を追えないように、昇りだした陽の光が当たる場所を移動しながら。


「ミュールッ!!何故逃げるのだ!」

「カーズ…!ごめんなさい…私は貴方の手をとることはもうできない…!愛していても、できないわ…!!」


さようなら。

そうとだけ告げて、振り返らず陽光が照らし出した世界へ走る。

この土地にはもういられない。

逃げなければ。

カーズたちに二度と会わない場所を探しに行かなければ。

そして私だけでも種を残して、後世もこの星の助けになり続けるという目的を果たさねば。

それが、滅ぼされる要因を作ってしまった、私に残された責任でしょう。


「(あの人と私は、出会うべきではなかったのね)」


今更、全てを悔いて涙なんて流しても遅いのだろうけれど

それでも、泣かずにはいられない。


「(…悲しくてたまらないわ、カーズ)」


私達がわかり合うことが到底出来るはずもなかった事実が、なによりも悲しい。

愛で埋めることが出来ないほどに、遠い存在であった事実が。


「愛していたわ...カーズ......さようなら...」


せめて残る我が血が、2度と貴方という不死なる者に会うことがありませんように。

私のためにも、貴方のためにも。


***


そうして"星詠み"と呼ばれた人と同じ形をした生き物は、その土地から、数少ない古代を知る文献から、その後一切の、名を消した。

しかし不思議なことが、ひとつある。

星空のように煌めく髪を持つ人間が、その後の世、遥か海を越えた国にて、時折、限られた史書の中に仄めかすように出現するようになる。

時に宮廷の占星術師、時には学者、また時には街の医師であったり。

それは世界のステージがひとつ進む時、影のようにひっそりと名を見せる。

どのようにして彼らの種が大海を渡ったのかは謎に包まれたままであるが

彼らの元は、宇宙から飛来したとされる生物。

どのようなことができたとしても、不思議ではないだろう。


『とある歴史家の手記』より


to be continue...