Sagittarius
愛と価値観は違う振り分けである。
私はそれをただ知っていただけで、本当の意味で理解していなかった。
違いすぎる価値観の前で、ただ愛しているから信じたいということは
非常に、とても、難しいことだと
私は完全には理解していなかったのだ。
「ミュール、そろそろ夜が明けてしまう。陽の当たらないところへ行こうじゃないか」
差し出された手に、後ずさる。
どうしてなの、信じていたのに。
愛していたのに、こんなにも恐ろしいなんて。
「…ミュール、何故私から…俺から離れていく」
「…それは貴方が、私の家族の血に濡れているから…どうして、私の一族を手にかけたの…!」
涙と一緒にとめどなく溢れる想いを込めて叫べば、当たり前のことをした、と言わんばかりの返事。
「お前は俺を愛していると言った。だが、種族のあり方がお前を縛っているんだろう?だから種族がなくなれば、種族的価値観なども無に帰るではないか」
「!」
「それに、お前が渡してくれた鉱石。あれにあのような力があったとはな…お前は、否定しながらも遠廻しに私にヒントをくれた。そうだろう?」
違う、と口にすることはできなかった。
本心は違えど、結果としてそういうことになってしまったのだから。
愛する人に一族を滅ぼされるなんて、悲劇を招いてしまったのは、私のせい。
私の中に、少なからず、理解し合えるなんて驕りがあったから。
それがカーズをこのような凶行に走らせ、一族を破滅の道に走らせてしまった。
そして気づかせてはいけない、エイジャという鉱石の存在に気づかせてしまった。
全て、私が愛に溺れて軽率になっていたせい。
「ミュール、さあ俺と共に来るのだ」
大きな手に掴まれそうになった時、ちかりと視界の端から刺すような光が差し込んだ。
刹那、カーズが驚いたように、私に差し出した手を引っ込め、木々と空の境目に視線をやった。
つられて、視線を同じ方向に。
「くそ…!朝日かッ…!!」
to be continue…