Seven!




両親が死んで近くの孤児院に送られたあとも、私はヴェルに手紙を書き続けた。

そしてある日、あのスニーカーの真犯人が口を割って、彼はようやく更生施設から出てきた。

ボロボロの疲れ切った姿に私が名前を呼んで抱きつくと、ヴェルは驚いた顔をしたあと、私を抱きしめ返してくれた。


「ヴェル…おかえりなさい」

「キティ…本当に俺を待ってたのかよ…」

「当たり前じゃない…数ヶ月が何年にも思えるくらい、私はヴェルが好きなんだもの」


一生貴方のそばに居たいわと囁けば、ヴェルはより強い力で私を抱きしめてくれた。


***


買い物に行く道すがら、教会の前を通る。

たまたま今日は結婚式だったみたい。

鉄柵越しに見える幸せそうな花嫁と花婿の姿に、思わず足を止める。


「(…世界で一番幸せみたいな顔して…)」


誰より幸せを求めても幸せになれない人間がいるなんて、きっと考えたこともないんだわ。

たやすく幸せになれるのが、すごくズルい。

ヴェルは、私たちは、抜け出せないのに。


「…不慮の事故でも起こればいい」


ぼそりと呟いた時、ぽんと肩を叩かれた。


「キティ」

「!ヴェル…!どうしたの?仕事は?」

「早めに終わったんだ…それより、結婚式なんてもんを見てたのか?」

「あ、あー…うん…」

「……式してぇのか?」

「ううん。ちょっと目にとまっただけよ。それより、早く終わったなら一緒に夕飯の買い物に行きましょうよ」


ヴェルの手を握り、教会から離れるように引っ張り歩き出す。


「…キティ」

「なあに、ヴェル」

「式を挙げる金はねえが…今度、籍だけでもいれにいくか」


後方で吐き出された言葉に、足が止まり、声が震える。


「!……いいの?私とで」

「なに言ってんだ。お前以外いねえのは、俺も同じなんだよ」


後ろから抱き締められた身体が熱くなる。


「ヴェル…私…」

「名前」

「え?」

「名前で呼べよ。籍いれたらお前もヴェルサスになるだろ」

「…ふふ、そうね…ドナテロ…」


回された手に手を重ねてヴェルに微笑む。

だからね、私たちの横を先ほどの教会の方に向かって救急車が走っていくのにも気づかなかったわ。


to be continue…


 

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