Three!
子供の頃、私は家に不満なんてなかった。
父も母も、反抗はたまにしたけど、それでも特になにかある家庭じゃなかったわ。
ヴェルとも遊べたし、私は恵まれて充実していたんだと思う。
けどヴェルは違っていた。
だからあの日、2人で遊んだときにきっとあんなことを言い出したのね。
「キティ、」
「なあにヴェル、週末行くところ決まった?」
「違う」
「?」
「違うんだキティ…真剣な話だから聞いてくれるか?」
「…ええ、いいわ。わかった、話して?」
もたれるように寄り添った体を離して、ヴェルと向き合う。
少し真面目ぶった顔が珍しいなと思っていると、ヴェルが私の両肩を掴んで口を開いた。
「俺がしばらく…家出するって言ったらお前、どうする?」
***
「…あの質問が分岐点だったのかしら…」
「なにがだ、キティ」
「貴方が家出のことを言い出した日の夢を見たのよ」
うたた寝していたソファから体を起こしながら言えば、少し目を見開いて彼は言う。
「…なんで今更そんな夢見てんだよ」
「わからないわ。ただあのとき、一緒に行くって…どこまでもヴェルと一緒にいたいって答えて正解だったと思ったわ」
にっこりと微笑んで告げれば、ヴェルは少し黙ったあと不安を隠しきれていない目で私を見た。
「…そのせいで俺の不幸さに巻きこまれていたとしてもか」
「だとしてもよ。貴方のいない…愛する人のいない不幸を感じるより、ずっといいわ」
ヴェルに手を伸ばして頬を撫でる。
その手を掴まれ、離さないと言うように握られる。
その行動がどうしようもなく愛しく思えたから、やっぱり私は、かわり映えのしない生活よりヴェルを選んできっと正解だったの。
きっと。
to be continue…
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