One!




私は、特にとりとめるようなこともない一般家庭で育った。

まだ、それくらいの頃ね。

となりの家にやってきた家族がいて、1人の男の子と出逢った。

引っ越しっていうのがあの頃は珍しくて、窓ガラスから見ていたら、偶然彼と目があった。

それが彼、ドナテロ・ヴェルサスと私、キティ・ハローリオの、ファーストコンタクトだった。


***


隙間風の入る、立て付けの悪いドアがキィと音を立てて開いた。

彼が帰ってきたと憶測をつけて微笑み、振り返る。


「ヴェル、おかえりなさい」

「おう、ただいまキティ」


少しだけ疲れている様子に見える彼からのハグを受けとめ、尋ねる。


「今日はなにもなかった?」

「なにもおかしなことはなかった…ちょっとばかし、仕事で疲れただけだ」

「今回は肉体労働だものね…頑張って、ヴェル」

「お前もな…苦労かける」

「いいの、気にしないで。私は好きでヴェルと一緒にいるのよ」


それにスーパーのレジも悪くないと笑えば、彼は私の唇にキスしてくれた。

この時間だけで、私は幸せだから。

なにがあっても、私はヴェルの側にいられるわ。

どれほど不可思議で、不幸な運命を、ヴェルが背負っていたとしても。


to be continue…


 

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