Action!




きらきらと右の薬指にさりげなく嵌めたリングを眺める。

まだ左にはしないわ。

籍を入れたら、左にするの。


「…これは私と、ドナテロのもの」


そう小声で唱えたら、ほんとにそんな気がする。

目の前を過ぎ去る誰一人も不審がりもしないし、私が隠し通せばドナテロの罪もなにも盗んでないということで軽くなるだろう。

口元を緩ませた時、影がかかった。

ふっと顔を上げると、そこには先ほどの神父様。


「やあ。君はヴェルサスの恋人…でよかったかね?」

「あ、はい…キティ・ハローリオと言います、神父様」

「私はプッチという者だ…失礼だが、その指輪は君の婚約指輪かい?」

「…ええ、そうですよ。私たち結婚を約束しているんです」


そう答えれば、プッチ神父様は少し考えた風な顔になった。


「君は……君の言葉には、"本当にそうだ"と思わせて、現実をねじ曲げるなにか強い力があるようだ…」

「?強い力…?なにを仰られるんですか…」

「ああ、まだそれは分からなくていい。それよりも…君は君の恋人が幸せに生きるためになにかできるならなんでもするかね?」

「!…どうしていきなりそんなことを…」

「その助けになれるかもしれない特別な力を君もまた持っているからだ」

「!……それは、本当の本当なんですか…!?」

「勿論だとも……君には彼を幸せに生きさせる助けをできる力がある」


私に、彼の不運を断ち切る助けができる?

神父様の思わぬ言葉に、目が丸くなったまま治らない。


「で、でも私に力なんて感じません…!どうしたらいいんですか…?!」

「Ms.ハローリオ…彼の幸せの力になるということは、私の言葉を聞き、私をある場所まで押し上げる協力をするということだが…できるかね?」

「…イマイチまだ、意味は分かってませんが……本当にヴェルサスが幸せになれるなら…私はいくらでも貴方に協力します」

「そうか…君は献身的で一途な女性だ。神も君の働きをきっと見ているだろう…これで長い君たちの苦しみも終わる」

「!…プッチ神父様…」

「さあ、話はまた後でしよう。今は中で彼が待っている」

「わかりました…ありがとうございます…」


能力も、なにをしたらいいのかも、まだ明白ではないけれど

それでもようやく、ヴェルサスの長い苦しみを救えるのなら、私はなんでもやってみせるわ。

心に決めて、私は彼の病室に明るい気持ちで走り戻った。

ドナテロ、きっと一緒に幸せになりましょうね。


end


 

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