Nine!




ーーしくじっちまった。

重い瞼を開けた先にいた、涙を溜めたキティを見てそう思う。

髪がボサボサだぞ、と撫でてやりたいが身体がだるくてやめた。


「…キティ、来たんだな」

「ドナテロ…起きたのね?よかった…」


俺の頬を撫でる手はいつもと変わらなかったが、それでも気落ちしているのは見てとれた。


「悪いなキティ…心配かけちまった」

「いいのよ、ドナテロ…いいの…貴方が無事ならそれで…」


涙を流して微笑むキティに、愛されている実感を覚える。

だから二人で幸せになりてえと思うし、なにかやってやりたかった。


「お前にな、」

「?」

「お前に、こういう指輪をやりたかったんだ」


唯一くすねられた安っぽいどこにでもある指輪を取り出して、キティの前に差し出す。


「!ドナテロ…貴方…」

「あと金をな…とれなかったなァ…撃たれたしよォ…しくじっちまった」


もう一度、悪いと言えば、キティは抱きついてしゃくりあげてきた。


「そんな危険なこと、しなくても…私は、貴方がいたらいいのよドナテロ…!」


でも気持ちは嬉しくてたまらないと泣きじゃくるキティの後頭部に手を添えた。


「盗品だがよ、あんなただのシルバーリングじゃ、まわりもわかんねえだろ…受けとってくれよ、キティ」

「…ええ、受け取るわ…ひとつくらい、許されるわよね」


涙を拭って指輪を片手に笑うキティに、今度買うのはちゃんとした奴にしてやろうと思った。

その時、扉が叩かれる音がしてキティがさっと指輪を隠して身体を離した。

同時に、見慣れない黒人の神父と二人の男が扉を開けた。


「先ほど撃たれて運び込まれたのは君だね?君に話があるんだが…そこの女性は君の恋人かい?」

「…ああ、そうだが…」

「彼女…少し席をはずしてくれるかね?」

「(警察関係者かしら…?)わかりました神父様。ドナテロ、私それじゃあちょっと外にいるわね」


額にキスをして、キティは盗品など知らないというように堂々と神父たちの横を通りすぎていった。

ただ甘いだけじゃない姿が、くらくらするほど鮮やかで、いい女だ。

きっと閉まった扉の向こうのソファで、指輪を密かにはめて、嬉しそうに笑っているんだろう。


「…なにを笑っているのだね?」

「いいや?…で、貴方はどちらさんですかね、神父さま」

「私はエンリコ・プッチ。君たちの父の血脈の引力に呼ばれた者だ、ドナテロ・ヴェルサス君…」


to be continue…


 

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