Eight!




「キティ!キティ!!いねえのか!?」

「ヴェル?」

「キティ…ッ!」


一緒に暮らし出すようになって、彼の抱えた秘密を知った。

震える身体と、加減を忘れた腕の力の強さを覚えている。


「俺は…俺はどうなってんだ…!?どうかしちまったのか!?」

「ヴェル…どうしたの?落ちついて、大丈夫よ…ヴェルはヴェル…変わらないわ」


過呼吸になりそうなほど荒い息に、心配して背中を摩った。


「貴方は、私の知ってるドナテロ・ヴェルサスよ…」

「…何を聞いても、変だと思わねえか…?」

「思わないわ…私の真実は、貴方の言葉よ」


そうして聞いた彼の話は、にわかには信じがたいような話だったけれど、それでも私には信じられた。

だって、ヴェルがそんな嘘を言うはずがないから。

でも、世間が信じてくれないことを私たちはよく知っていたから、世間から隠れるように生きることにした。


***


「…ドナテロ……やだもう、まだ照れちゃうわ…」


にやけてしまいそうになる頬をもにもにと両手で揉んでしゃんとさせる。

でも、すぐにこの前のプロポーズを思い出して一人にやけてしまう。

仕事中なのにこんなんじゃダメだわ。


「でも…今回はなんの仕事に行ったのかしら…」


ちょっと今日は遅くなると言ってたけど…と、朝方出て行くときの姿を思い出す。

儲けがいい仕事を見つけたと言っていたし、大変な仕事なのかしらね。

なら、美味しいごはんを作らなくっちゃ。

小さく一人で笑ったときに、奥から名前を呼ばれた。


「ハローリオさん!病院から電話よ!」

「え、病院…?」


飛び込んできた縁も所縁もない単語に眉をひそめたけれど、押し付けられた受話器を取る。


「Hello?ハローリオですが」

『ドナテロ・ヴェルサスさんの縁者の方でいらっしゃいますね?』

「え、ええ…そうですが…」

『彼が先ほど警官に足を撃たれ、こちらに緊急搬送されてきまして…至急来ていただけますか?』

「え!?ど、どういうことですかッ!?」

『詳しくはこちらに来ていただいてからお話いたします』


一方的に用件を言って切れた電話を放り出し、手荷物を掴んで、周りの止める声も聞かずに店の前でタクシーを捕まえ、飛び乗る。


「救急病院までお願いします!とばして!!」



to be continue…


 

  back