頂き物 | ナノ






今日はお店も休みで、特に予定もないため久しぶりの完全休日。新作メニューを考えようかな?それとも映画を観にいこうか。ああ、新しくできたカフェも気になるなあ。

カフェラテを入れながらぐるぐると思考を巡らせる。今日は一人でゆっくり過ごそう。絶対に一人で。例えいつもの金髪変態マスクマンが来ても追い返そうと胸に刻み、カフェラテを飲み終わりコップを洗おうとキッチンに向かう。


「さあ、まずは何をしようかなー」

「俺とセックスしよう!!ラウラ!!」

「きゃあああああああああ!!!?!!」

「咄嗟に包丁を突きつけるのはちょっとやめてほしいかな」

「あ、ごめん…。じゃなくて!!何でここにいるかなんてことは聞かないわ。メローネ、今日は私一人で過ごしたいの。明日なら付き合ってあげるから今日は帰って」

「明日はラウラ店があるじゃないか。せっかくの休日に恋人と過ごさないなんてあんまりだろ?」

「私はメローネの頭があんまりだと思う」


ああもう、今日だけは絶対に一人で過ごそうって決めたのに!!

ファンクーロ、と心のなかで悪態をつく。メローネ相変わらず無駄に綺麗な顔(顔だけは本当に綺麗。顔だけは)をにこにこさせながら私を見つめている。

メローネが来ても追い返そうと硬く決めた意志は脆くも崩れ去りそうで。ああ、誰でもいいからこの変態を追い出してくださいと祈っても効果などあるはずもなく、私の貴重な休日を潰されるんだろうなと諦めにため息をついた。


「…はあ。仕方ないから付き合ってあげる。ただし私の行きたいところに着いてきてね。文句は言わないこと。いい?」

「ラウラと過ごせるんだったら文句なんて言うはずないじゃないか。それにしても今日のラウラは女王様みたいだな…ハッもしかして夜はそういうプレイがしたいのかい!?!わかった今日一日俺はラウラの犬だ!奴隷だ!なんとでもしてくれ!」

「じゃあしばらく黙って」


放置プレイなんて最高じゃないか!と叫ぶメローネの言葉を無視し出掛けるための準備をする。

(なんだかんだいって、私はメローネに甘いなあ…)

本当に嫌なら警察に突き出すことだってできる。それをしないのは、絆されている以上の感情があるから…いや、ないかな。ない。いくら顔が綺麗でもあの変態は無理。そんなことを考えているとると、ラウラ、とさっきまでの興奮し叫んだ声色とは打って変わり、恋人のように甘くとろけるような優しい声で私を呼んだ。


「夜は君の手料理が食べたいな。どんな
最高級のフルコースだってラウラの料理には敵わないんだから」

「…うん。ありがとう」


メローネは時々(本当に時々だけど)こうやってかっこよくなるんだから、ずるい。

顔に熱を感じながら支度を終え、メローネと一緒に外へと出る。


「メローネ、夜はなにが食べたい?」

「んん…ラウラの料理は何でも美味しいから迷うな。お任せしていいかい、シェフ?」

「ふふ、了解。腕によりをかけて作るわ」


まだ出掛けたばかりだというのに何を作ろうか思案していると、メローネに「さすがはシェフだね」と笑われる。いいじゃないと口を尖らせればラウラのそういうところも好きだよと言われ、思わず頬を赤く染めてしまう。

誰かに自分の作った料理を食べてもらう嬉しさや、自分の隣でこうして歩いてくれる存在の幸福を、他でもないあなたがもたらしてくれたから、私はメローネを受け入れてしまうのだ。


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