Step.08

ミシェルお祖母様は優しかった。

呪われた姿でも、絶えず人間であろうとしたし、全ての起こった事象を愛していた。

終わるかわからない絶望の中でも、希望を捨ててなどいなかった。

それはお祖母様が人間としての誇り...否、誇りある命のあり方を忘れていなかったからだ。

だから孫である私も、最初は呪っていた自分の命の役目を果たした先にある短命を受け入れるに至ったし

老いの止まる、この人とは異なる姿も愛せたのだ。

不条理と不公平な運命を

輝きを放つ隣のこの星の背を押す運命に気付き、受け入れることができたのだ。

お祖母様...だけではないが、先立つ一族の教えと人生があってこそ、我々は、同じように受け入れる強さを手に入れられる。

だからこそ、先立つ者を愛し護ろうと、呪いから救おうとしてきたのに。


「...貴様は違ったのか、ストレイツォ...」


私はずっと思っていたのに。

貴様は...貴方は...お祖母様のことを...

零れそうになる目元の雫をぬぐい、空になった散弾銃を投げ捨てる。


「ストレイツォ...貴方は最早私と亡くなった父の師ではない...!ジョセフ、奴らの倒し方は覚えていますか?」

「おう!頭を一瞬のうちにブッ飛ばすか......!太陽の光か!"波紋"か!その三通りだったな!」


そして銃で破壊されたカフェの中に割れた窓から飛び込む。

殺人鬼だなんだとほかの客がうるさいが、今はそれどころではない。

本当の鬼に殺されるかどうかの瀬戸際なのだ。


「ミカエルさん!あんたもジョジョも、たたたた...大変なことを!!」

「スモーキー...そうですね。ジョセフ、機関銃はやはり街中でやり過ぎでしたね」

「ん...そ、そうだな...ちっと修理代がバカ高くつくなこれは」

「まあ今回は仕方ありません。我が家にお任せ下さい」

「ちがうーーッ!!」


スモーキーの大声に2人で振り返ると、スモーキーは顔を青ざめさせて震えていた。


「き......君たちは人を!なんてことを!君たちは人を撃ったッ!!」

「人?人だとよ兄弟!」

「ストレイツォが人ですか...あれは最早、人とは呼べませんよ、スモーキー」


その時、足でなにかを蹴った感覚に下を見れば、異様な形に凹んだ弾丸がいくつも転がっていた。

その弾丸にやはり、と嫌な汗が流れ、スモーキーの背中を押し、護身用に身につけている鞭を取り出した。


「スモーキー、早く外に避難を!」

「俺達はむしろヤツが人間であってほしいぜ!人間なら俺達2人が殺人罪でムショへ行きゃあすむこったからな!」


そして脅すようにして他の客にも早く外に出るように指示をジョセフと2人で飛ばし、硝煙の中で転がっているべき死体に目をやると

やはりと言うべきか、死体は立ち上がった。

話通り、いや、お祖母様とやはり同じ。

血溜りで、全身に弾丸を受けていながら、尚生きている。


「実際に損傷した姿を目にするのは初めてですが...信じられない生命力ですね......」

「な...なんてこった......これがミシェル先生がディオってやつにされたのと同じ吸血鬼なのか...そ、それにあんなに撃ち込んだのに、頭部に1発も弾丸が当たってねえのはいったいどういうことだ...?」


するとストレイツォは不敵に口角を上げた。


「ディオの失敗は!ディオの失敗は自分のこの能力を楽しんだことだった!ヤツは実験し、自分の能力の限界と

奴が敬愛したMs.ブラウン...いや、ミシェルの特異な体質と短命にも適応できるかを知りたがった...

そこにスキが生まれジョナサンに敗北し、敬愛した師を、かつての我が同志ローラ・ベルニに奪われ、共に連れていくこともできなかった!」

「!...ストレイツォ...貴様...」

「だがこのストレイツォはちがうッ!能力の限界もミシェル・ブラウンも今はどうでもいい!お前達を始末した後ゆっくりとやればいい!ストレイツォ、容赦せん!」


その言葉にジョセフは機関銃を向けたが機関銃は弾切れで、私が鞭を握り直しジョセフの前に躍り出た。

と、同時に奴の両目から高圧ので固められた体液が勢いよく発射され、ジョセフの額と、前に出た私のこめかみとを貫いた。

......なんて常識破りな力だ。

本当にそこにいたら、一瞬で天国にいただろう。

悪知恵が、こちらの方が上で助かった。


to be continue...