「ディオ坊っちゃまは覚えがお早いのですね」
「ミシェル先生の教え方がわかりやすいんですよ」
光に当てられると、ところどころが輝く不思議な髪をしたこの家庭教師、ミシェル・ブラウンは、
間の抜けた顔をした教師だと最初こそ舐めてかかっていたが、すぐに中々に知識が豊かな女だということを理解した。
ただのバカな貴族とは一線を画する様々な学問を取り入れた知識量は、少なからず尊敬に値する。
そしてなにより、俺を貧民だとあなどるようなことをしない。
「…先生のような教育者に教鞭をとっていただけて、僕は幸せものですね」
「…ふふ、ありがたいお言葉です。しかし…それが本心ならば、もう少し本当のあなたを見せていただきたいですね、坊っちゃま」
「!…」
「私の目は貴方より歳で、衰えてきておりますが…節穴ではございませんよ」
…やはり、馬鹿ではない。
変わらぬ穏やかな表情で教科書をめくっていく姿を見つめる。
「…どうしてわかったんです」
「わかりますわ。ジョジョ坊っちゃまと貴方の姿を見ていれば…教育者ですもの」
「…告げ口する気ですか?僕が性悪だと」
「そのようなことはいたしませんし、思っておりません。私にはジョジョ坊っちゃまも…ディオ坊っちゃま、貴方も、可愛い生徒ですから」
ゆったりと目を細めた笑みを浮かべた姿に、嘘のいやらしい匂いはしない。
むしろ、亡き母のような匂いと、甘酸っぱく喉奥に残るプラムのような匂い。
だからだ、少し気を緩めてしまったのは。
「…ふん、なら僕のこの性格については他言無用だぞ。これは言いつけだミシェル先生」
「ふふ、わかりましたわディオ坊っちゃま。言いつけの通りに」
to be continue…