「スピードワゴン様が...死んだ...!?」
信じられない、と言外に理解を拒み、目を見開く。
やってきたイタリアンレストランで、スモーキーを黒人差別した先客の胸糞の悪いチンピラをジョセフがのした後
そのチンピラのボスがお詫びにと語った、思わぬ情報に私はそう、愕然とし、思わず男の胸ぐらを掴んだ。
「ふざけるなよ...!なんだその情報は!」
「ミカエル!」
「アンタのその髪と目の色...ミシェルさんの縁者、ブラウン家のお坊っちゃんだろう?今語った通りですよ。
スピードワゴン様が殺され、ミシェルさんもホテルから姿を消したと...噂ではチベットからきた男が殺ったと」
チベット...その国で思い当たるのは1人しかいない。
しかし彼は、あの人は、私や、私の父にも我が力を教えてくれた人。
しかし、彼のあの力なら死ねないお祖母様も、確実に殺すことはできる。
もしこの話が本当だとしたら、スピードワゴン様やミシェルお祖母様は、まさか行方不明ではなく...しかし何故?
全てが信じられず、ふらりと足元がふらついた。
後ろから、ジョセフが私の肩を掴んで下がらせ、自分が前に出た。
「ジョセフ...!」
「ここは俺に任せろミカエル...!おいお前!スピードワゴンのじいさんとミシェル先生が死んだだと?
それも殺ったのはチベットから来た修行僧!ストレイツォのことか!」
「...」
ジョセフの問いかけのあと男は、メキシコ奥地の川でスピードワゴン一行のふたりのものらしい遺体を発見したと、肯定の言葉を吐き出した。
あまりの事実に動揺が隠せずにいると、エリナ奥様が震える声で、わかるような気がすると口にした。
「きっと...たぶん、スピードワゴンさんとミシェル先生がかつて話してくれた石仮面とディオ......それにまつわることのような気がする...」
「!エリナ奥様...お気を確かに...!!」
そっとエリナ奥様の肩を抱き、身体を支える。
そうだ、一番ショックを受けているのは、エリナ様だ。
私まで動揺してどうする...!
するとスモーキーが声を上げた。
「こ...怖いのを承知であえて言うぜ。この男はマフィアだぜ!こんなゴロツキのいうことを信用しちゃあいけねぇ!きっとたかろうとしているんだ!」
「...そう思うのは勝手よ...」
スモーキーの言葉に軽く返すと男はしれっとタバコを咥えライターを取り出した。
とんでもない発言をよこしておいて、この態度か。
動揺が、煮えるような怒りに変わっていくことを理解し、体内の波紋でタバコに顔面が焦げるほどの火をつけてやろうかと思った時
既にジョセフが男の胸ぐらを掴んでいた。
「スモーキー!忠告ありがてえが俺はこいつのいうことを信用する......こいつらはゼニ金でのみ動く連中...
俺達はスピードワゴンとミシェル先生といわば家族!そこんとこの利益を狙って教えてくれるマフィアの情報だけに、かえって増幅された真実味があるんだ!だが!」
そこまで言ってジョセフは思い切り男に拳を叩き込んだ。
男から呻き声にも似た悲鳴が上がり吹き飛ぶ。
「いくら真実とはいえ、そんな最悪の情報をエリナばあちゃんと、俺の兄貴同然のミカエルにいきなり聞かせたのは許せねえ!
怯えさせて悲しませちまったじゃあねーかこのバカたれが!」
「ジョセフ…」
「エリナばあちゃん、ミカエル…大丈夫かよ」
「…ありがとうジョセフ。私は大丈夫です。それよりエリナ奥様を」
そっとジョセフにエリナ奥様を渡し、震えが止まらない指を隠す。
「ご…50年前のことが…いまだに…続…いている…なんて……」
震えたエリナ奥様の声を聞きながら、私もまた血脈の運命から逃げられないことを悟ると同時に
もう私と血の繋がる人は、この世界のどこにもいなくなってしまったと、気づいてしまった。
to be continue...