「なに?あんたら最近引っ越してきたばかりだって?」
「ジョセフ…他人に自分のことを話しすぎですよ」
フラットすぎるジョセフに、大げさに肩をすくめれば、口を尖らせたジョセフに肘で軽く小突かれた。
「いーじゃねーか。ミカエルは慎重すぎるぜ」
「まああんたら、なんにせよそれを飲むなら金を払いな。この国の掟は金だ!」
「掟は金…ね。わかりました、いくらでしょう?」
「いやいやミカエル、ここは俺が払うぜ兄弟。さっきホットドッグ分はお前が払ったしな」
「…そうですか。では、お願いします」
フェアな関係を望むジョセフを尊重して引き下がって財布をしまおうとした時、脇をすり抜けて走っていった少年に、私とジョセフの財布が奪われた。
「!」
「おや…」
「お、おい!あんたらの財布だろ!?おいかけなよ!」
「ああ…そうですね。財布はかまわなくても盗みはよくないのは確かだ…行きましょう、ジョセフ」
「あ、おう!そうだな」
そしてお互いにコーラ瓶を片手に走り出す。
どうにも、先ほど陰に見かけた人相が悪い警官二人組が、こそこそ彼に目をつけているようですし、心配ですね。
***
追いかけてきてみれば、心配は的中した。
「やれやれ…これだからアメリカは好きじゃないんです。警官まで…マナーがなっていないとは」
ジョセフがのしてしまった無様に悲鳴をあげる警官たちを見おろす。
「全く……ジョセフにあんな真似をしやがって。薄汚い豚共が」
「ミカエル!エリナ婆ちゃんには内緒な!!」
「ああ…まあ今日は内密にいたしましょう。私も腹が立ちましたから…ところでbad boy。大丈夫でしたか?」
手を掴んで立たせてやれば、殴られたらしい頭から血が流れていた。
「おや、これはいけませんね…少々ピリッとするかもしれませんが…すぐに治しましょう」
傷跡に沿わせるように指を当て、父やストレイツォにかつて習った波紋を流し、彼の傷跡を閉じていく。
「さて、終わりました」
「ヒュー!やっぱ細かい作業はお前だなミカエル」
「あ、あんた一体なにを…」
「別に…ちょっとしたテクニックですよ」
はぐらかすように首をすくめ、それよりこれ以上ここにいて見つかってはまずいと促して、私たちはその場を離れることにした。
to be continue…