時は移りゆき、道行く人は変わりゆき
かつての時代から49年が経った1938年ーー
なにひとつ姿が変わらない女性が、分厚い遮光カーテンに閉ざされた部屋の中で、
自分とは違い、すっかり老いた男に話しかける。
「もう行くのですか?」
「はい。先生はここにいてください…夜に合流しましょう」
「ええ…ストレイツォさんたちにお先によろしくお伝えしてね」
「ええ、勿論……ですが先生、ようやく貴女を人に戻せる手がかりを掴んだかもしれんのに…申し訳ない…じゃが、あれは危険すぎる…」
「…貴方は本当に、いつまでも優しい人ね…ロバート…いいのよ。きっとあの柱の中の存在を破壊しても、遺跡からなにかわかるかもしれないし、私のことは気にしないでくださいませ」
「…ミシェル先生…」
「それに貴方が危険と判断するなら、きっと間違いなどありませんわ、ロバート。
貴方の勘は、いつだって正しかったもの」
そうしてとがりきった犬歯を見せながらも、彼女、ミシェル・ブラウンは人間らしく笑った。
***
同年、ニューヨーク
二人の背が高い男が歩いていた。
一人は街並みに合ったラフな出で立ちで、一人はいかにも紳士だといわんばかりの出で立ちで。
なによりも通り過ぎる人の目を引くのは、星を散らした銀河のようにきらめく長い髪であった。
「おいミカエル!見ろよ見たことねー飲み物売ってるぜ!」
「やれやれ…ただのコーラですよジョセフ。私も見るのは初めてですが…あんまりお上りさん丸出しでふらふらしないでくださ…」
「二人で飲んでみようぜ!」
「…まったく、貴方という人は…」
片眼鏡を手のひらで押し上げて、紳士然とした男はため息をついたが、口元はわずかに緩めたまま、先に向かった、自分が今まで長い間見守ってきた青年を追いかけた。
この紳士は、とある英国の大学の名誉教授となったアルベルト・ブラウンの血を引き、彼の死後に家督を継いだブラウン家の、若き現当主。
そして、青年ジョセフ・ジョースターの幼馴染であり、兄のような存在でもある家庭教師である。
名は、ミカエル・ブラウンと言う。
「おおい!早く来いよミカエル!」
「はいはい、分かりましたよジョセフ」
to be continue…