Step.02

私はきっとこの病気には勝てない。

そう言ったらお母様は悲しげに眉を下げた。

沈黙は肯定だと、なにかの本に書いてあった気がする。

私の星は、きっと瞬きを失いかけているのね。

そっと、私よりずっと柔らかくすべすべになったお母様の手を握る。


「悲しまないで、お母様。アルベルトお兄様が、私の代わりにきっとやるべき沢山のことを成すわ」

「ミカ…運命は絶対ではありませんわ」

「でも限りなく感じるの、お母様。私は死ぬことこそが必然だと」


大丈夫、死ぬことは怖くない。

砕けても星はそこからまた生まれ、輝くのだから。


「でも…ひとつ悔いがあるとしたら、お母様は聞いてくれる?」

「勿論ですわ…言ってごらんなさい、ミカ」


握り返される、死んでいく人間以上に冷たい手に微笑む。


「…私ね、自分の死の意味を考えたの。どうして私は、ゆっくりと死んでいくのかと考えてたの」

「…それで?」

「それで、ひとつの答えに行き着いた…それはお母様、呪いに苦しむ貴女を少しでも救うためだわ」

「!ミカ…どうして貴女が知って…」

「娘ですもの…全てわかるわ」

「…ならば問いましょう、ミカ。全てわかっているというのなら、お腹を痛めて貴女を産んだ母に、なにを言っているかわかっているの…!?」

「…わかっています。でもお母様、今私が死に行くことに意味があるのなら、それしかありません」


無意味に死んでいくことはしたくない。

せっかくお母様とお父様に育んでいただいた命だもの。

なにかひとつでもいい。

自分の命を、未来につなげたい私の願い。


「絶望しているわけではありません。私はただ、未来への希望を信じているだけ。

だからどうか叶えて、お母様…私の血をどうか、飲み干して、理性を取り戻して」


隠していたフルーツ用のナイフを握る。

お母様なら、未来のために真に選ぶべき選択ができるはず。

私の、強く賢いお母様なら。


「ミカ!やめなさい!!」

「私が生き絶えるまでに飲み干してください、お母様」


to be continue…