私はきっとこの病気には勝てない。
そう言ったらお母様は悲しげに眉を下げた。
沈黙は肯定だと、なにかの本に書いてあった気がする。
私の星は、きっと瞬きを失いかけているのね。
そっと、私よりずっと柔らかくすべすべになったお母様の手を握る。
「悲しまないで、お母様。アルベルトお兄様が、私の代わりにきっとやるべき沢山のことを成すわ」
「ミカ…運命は絶対ではありませんわ」
「でも限りなく感じるの、お母様。私は死ぬことこそが必然だと」
大丈夫、死ぬことは怖くない。
砕けても星はそこからまた生まれ、輝くのだから。
「でも…ひとつ悔いがあるとしたら、お母様は聞いてくれる?」
「勿論ですわ…言ってごらんなさい、ミカ」
握り返される、死んでいく人間以上に冷たい手に微笑む。
「…私ね、自分の死の意味を考えたの。どうして私は、ゆっくりと死んでいくのかと考えてたの」
「…それで?」
「それで、ひとつの答えに行き着いた…それはお母様、呪いに苦しむ貴女を少しでも救うためだわ」
「!ミカ…どうして貴女が知って…」
「娘ですもの…全てわかるわ」
「…ならば問いましょう、ミカ。全てわかっているというのなら、お腹を痛めて貴女を産んだ母に、なにを言っているかわかっているの…!?」
「…わかっています。でもお母様、今私が死に行くことに意味があるのなら、それしかありません」
無意味に死んでいくことはしたくない。
せっかくお母様とお父様に育んでいただいた命だもの。
なにかひとつでもいい。
自分の命を、未来につなげたい私の願い。
「絶望しているわけではありません。私はただ、未来への希望を信じているだけ。
だからどうか叶えて、お母様…私の血をどうか、飲み干して、理性を取り戻して」
隠していたフルーツ用のナイフを握る。
お母様なら、未来のために真に選ぶべき選択ができるはず。
私の、強く賢いお母様なら。
「ミカ!やめなさい!!」
「私が生き絶えるまでに飲み干してください、お母様」
to be continue…