1889年、ディオ坊っちゃまとの決戦の翌年。
「エリナお嬢様とジョジョ坊っちゃまが…!?」
エリナお嬢様がカナリア諸島沖で赤ん坊と救助されたジョジョ坊っちゃまが死亡したと報せを持ってロバートさんが現れたのは
お二人が婚姻を結び、ハネムーンに旅立った二日後のことだった。
私が、相変わらず人から血を飲む行為ができないながらも吸血鬼の自分にようやく慣れてきた頃でもある。
陽を浴びれない私は、結婚式に参列も、ハネムーンの見送りも叶いませんでしたが、お二人が私のもとに結婚衣装のまま来てくださり、
お二人の美しく幸せそうな姿に、情けないくらい泣いてしまったのを覚えております。
それがまさに先日のことなのに、こんな不幸がありましょうか。
あまりにもな出来事に床に倒れそうになったら、クリストフが支えてくれた。
「ミシェル先生!大丈夫ですかい!?」
「ミシェル、しっかり気を持つんだ」
「あなた…ごめんなさい…でも、どうして…何故…あの方たちの未来はこれからだったのに…」
ぐるぐるとまわる思考を抑えるように額を押さえ、1番気がかりな人のことを問う。
「エリナお嬢様…いえ、エリナ奥様は今どうしていらっしゃるんです?」
「エリナさんは病院にいますぜ…」
「なにか仰っておられましたか…?」
ハラハラとした胸中のまま尋ねれば、ロバートさんは少し言いあぐねるような顔をしたあと、口を開いた。
「…ディオがいたと…」
「!ディオ坊っちゃまが…!?」
「…彼は死んだのではなかったのかい?」
「そのはずですが…」
2人が話し合う中、私はありえない話ではないと考えていた。
不老不死の身体に、あの強さ。
そしてなによりも、執念とも言える意志の強さが、ディオ坊っちゃまにはあった。
なにか死ぬ前にして生き残っていたとしても不思議ではない。
「……でも、ディオ坊っちゃまはそうしたら船と共に…ジョナサン様と共に、今度こそ海に沈んで行かれたのですか…?」
「話によるとそうらしいですが…」
「そうですか……ならば、ジョジョ坊っちゃまが命を賭して守り通したものを、今度は私たちが守らねばなりませんね…」
誇りある行動を、命を、決して無駄にしないように。
泣いている場合ではない、すぐに行動しなければ。
星々が常に宇宙を廻り続けているように、運命はすでに私たちを置いて動きだしている…気がする。
「敬愛すべきジョースター家のために、私たちにできることは、残されたものを護ることだけです…私が命永らえる身体になったのも、きっと意味があるはず…」
「ミシェル先生…」
「それにジョースター家とともに私の運命はある気がしますの」
ジョースター家と共に始まった石仮面にまつわる運命ですもの。
ぐっと拳を握って笑うと、クリストフは深い息を一つ吐き出した。
「…ミシェル、正直私は君にジョースター家とはもう関わって欲しくはない…けれど君がそう言うならば、きっとそうなんだろう。
だから私も、君とジョースター家のために、全力を尽くしてサポートしよう。生涯をかけて」
そして、君はどうするとクリストフがロバートさんに声をかけた。
「…俺は…アメリカに渡ろうと思います」
「!アメリカに…?」
「はい。俺は先生たちのようになにかを持っているわけじゃあない…だから、俺がジョースター家の助けには今はなれやせん。だから、助けていくための道を探してェんです」
真摯な言葉に少しの寂しさを感じながら、なるほど、と頷く。
「ならば、微力ながら私たちは貴方のサポートをいたします、ロバートさん」
「そんな!迷惑かけるわけには…!」
「迷惑ではありません。これは、なにかを作ってくれるかもしれない若者への…未来への投資ですわ」
きっと貴方なら、なにか掴んでくれると期待している。
そう言うと、ロバートさんは太い眉を困惑したように照れたように少し下げた。
「かまいませんわよね?あなた」
「彼にならば構わないよ、ミシェル」
「というわけですので、ロバートさん。私たちブラウン家を、貴方のサポーターにしていただけませんか?」
勿論、余計なお世話ならば断っていただいてもかまわないと、手を差し出せば、彼は少し私を見つめた後、私の手を握った。
「…ミシェル先生、クリストフさん…このご恩、忘れやせん。きっと、あんた方の助けにもなりやす」
「ふふ、ならばアメリカに渡る前に、少しだけ、正しい敬語やマナーから身につけましょうね」
to be continue…