「……どうしましょう」
あれから幾許か時間が経ち泣いても仕方ないと思い涙を拭い、しばし冷静に今後を考える。
この場所がどこかもわからない上、この吸血鬼になってしまったらしい体で不用意に外に出るのは危険すぎる。
吸血鬼に本当になっているのだとしたら、言い伝えなんかによれば日光に当たると灰になってしまうというし
時間帯すらわからない今、外に出た瞬間灰になる可能性もある。
絶望をしても、まだそんな風に死ぬわけにはいかない。
私には帰りを待つ優しい旦那やかわいい子供たち、私を家族のように思ってくれる坊っちゃまたちも…それから、親切な彼もいる。
それにもしかしたら、生きていれば、人間に戻る方法があるかもしれない。
そんな時、視界にちらつく髪の中に光る星々の一つが、ひときわ明るく光って、そのままふっと消えたのが見えた。
なにか失ったような喪失感は、父が死んだ日に星が一つ消えたのと似ていて、すぐに気づいた。
消えた星の下に生まれた誰かが死んだということに。
物悲しさに握る手に力を込めるも、今は自分を逃がすことを考えなければと握る拳を見る。
「……力も、変わったのかしら?」
手を開いたり握ったりを何回か繰り返してから、ものは試しかしらと握り直してみる。
あまり変わった感じはしないけれど、見た目がこれだけ若くなってしまったなら、期待する価値くらいはあるでしょう。
「えいっ!」
こつん、と拳を扉に当ててみたら、扉が木っ端微塵になって綺麗に吹き飛んだ。
期待以上の人間離れした力に目が丸くなる。
「あら、まあ……」
吸血鬼って力もこんなに強いのね、とまじまじと自分の拳を見たところで、感心している場合じゃないと思い出す。
「今のうちに逃げてジョジョ坊っちゃまのところに……彼ならディオ坊っちゃまを止めてくださるかもしれないわ…」
ドレスの前を持ち上げて、とととと走り出した。
このとき私は、肝心なことを忘れていた。
to be continue…