「ジョジョ坊っちゃま、本当に貴方だけでもご無事でよかった…」
「ミシェル先生…わざわざ帰ってきてくれたんだね。ありがとう」
「坊っちゃまの危機とあらば勿論にございます。エリナお嬢様もジョジョ坊っちゃまについててくださり、本当にありがとうございますわ…」
「そんな…頭をあげてくださいませ、ミシェル先生」
ようやくお目通りがかなったジョナサン様に深々と頭を下げながら、私は先日のロバートさんとの話を思い出していた。
私より先に逝ってしまう人がいるなんて、私は思わなかった。
特に坊っちゃまたちが私より早く死んでしまうなんて、想像したことすらありませんでしたわ。
けれど、嘘であってと願うような、そんな悲しいことが起こってしまったなんて…
***
「やはり坊っちゃまや旦那様はもういらっしゃらないのですね…」
「(この人はあのゾンビ共やゲロ以下のディオの真実を知らねーのか…確かに教えられるはずがねえ…あのディオを生徒の一人として大切に思っていたこの美しい心を持った教師に教えられるはずがねえ…!!)」
「……ありがとうございます、ロバートさん。貴方は親切でお優しい方ね。今日出会ったばかりの私にお話をしてくれて」
ジョジョ坊っちゃまはいいご友人を得たようで、私はとても嬉しいですわ、と笑いかければ、彼は目線を泳がせたあと帽子を目元までさげた。
照れているらしい仕草に、可愛らしいお若い殿方だと思い、状況にもかかわらず、少し心が癒された。
***
「(ロバートさんにもちゃんとお礼をしなくっちゃいけませんね)」
「あ、ところでミシェル先生、お子さんたちとクリストフさんはお元気ですか?」
「ああ、3人とも変わりなく元気ですよ。娘の方は相変わらず病弱で心配なのですが…」
「なら早く帰ったほうがいいんじゃ…」
ジョジョ坊っちゃまの心配そうな言葉に、考えを一旦外にやり、小さく微笑む。
「旦那が、僕が見ているからなにも心配しなくていいから安心するまでこちらにいなさいと手紙まで寄越してくれまして…こちらに長居せず帰ったら逆に怒られてしまいそうなんですわ」
「そうか…いい旦那さんだね」
「ええ、私には勿体無いくらいの…優しい方です」
きっとあの方と出会えたのはこれ以上ない私の幸運でしょう。
「勿体無いなんてないよ。先生とクリストフさんはお似合いの夫婦さ」
「ふふ、ありがとうございます。ジョジョ坊っちゃまとエリナお嬢様もきっとお似合いの夫婦になりますわ」
「!先生!!」
「まあ…!ミシェル先生ったら!」
「うふふ、年寄りのおせっかいでしたわね…それでは私は失礼いたします」
そそくさと会釈をして、病室を出る。
お二人の結婚が、きっと今の気持ちを晴れやかにして、未来をも照らすことでしょう。
to be continue…