妄想世界事情 | ナノ


薔薇色Queenが笑う

ぱらぱらとした拍手を浴びる中、店内に目をやれば、モスグリーンの長い髪の女が目に付く。

酷い隈ね。化粧で薄くしてるけどすぐにわかるわ。

あの二人を罰したのに、まだ足りなかったようね。

暗殺チーム…いや、彼女の独断かしら?


「(底辺の居場所でも、大切に思うのねえ)」


復讐にでもきた?それともお金?

まあ、どちらにせよ、私たちを探るなんて愚かな行為だわ。

ステージから降りて、バーテンに目で指示を出す。

モスグリーンの暗殺チームの彼女、今の名前はストーリア、だったかしら。

うっとおしいほど質量がある長い髪の前に、カクテルが置かれたのを見て、歩み寄る。


「…私頼んでないわ」

「こちらの方からです」

「チャオ、初めてのお客様ね」

「!…(気配がなかった…やっぱりこの女なにかある…)」

「私を熱心に見つめる女客なんてそう居ないから、気になったのよ」

「…そう。悪いけど私に、その気はないわ。よく間違われるけど…」

「やだ、私も別にレズビアンじゃあないわ」


女なんて生き物が、男よりろくでもないのはよく知ってるから。

そう目を細めて笑えば、ストーリアは虚げにも見える隈の濃い目を細めて、その通りね、と短く答えてきた。

根暗そうで、腹立たしい女ね。


「…で、貴女はこんな辺鄙なバーにどうしてきたの?」

「…たまたま見つけたから立ち寄っただけよ…神曲の一節が、気になっただけ…もう帰るわ」

「ああ、扉のとこの地獄の門の一節ね……ということは貴女、入るときにちゃんと望みは捨ててきた?」


たち上がったストーリアに口角をゆったりとあげれば、彼女はゆるやかに、しかめていた目尻を下げて鼻で笑った。


「…逆よ。ここには希望と望みのものを求めに来たわ…だから、帰るの」


服を翻し、去るストーリアの背中から心臓めがけてダーツでも刺してやりたくなった。

でも、今はまだ機ではない。

こんなところでそれはできない。

私の正体がばれるし、スマートじゃない。


「(…ストーリアも処刑しなきゃ…確か悪趣味なゲス医者が緑の髪の女の死体を探してたわね…)」


ついでだわ。

あの根暗女でも、いいかしら?


to be continue

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